第二十話
エルフの体内に流れる血液。
その中に含まれる血液細胞は、多くの魔力を含んでいた。
魔力を含んだ血液細胞は、それそのものがごく小さな「魔石」のような働きをする。
魔石には「周囲に弱い魔力波動を放ち続ける」という特徴があり、これはエルフの血液細胞にも同じことが言えた。
放たれた弱い魔力波動により、血液細胞は互いに干渉し合い、ネットワークを形成。
血液を持つ本人のものとは別に、意思のようなものを作りだす。
一種の「魔力生命体」だ。
この魔力生命体は、「本体」であるエルフが「強く意識」することによって、より強固なネットワークを形成する。
つまり、より強固な意志を持つようになるのだ。
そしてある程度まで「育った」魔力生命体は、自分の本体であるエルフを守ろうとするようになる。
あるいは本体であるエルフの意思に従って、戦うようになっていく。
魔力生命体はその特性上、素晴らしく魔法の扱いに長けている。
本体であるエルフ以上に繊細に、精密に魔法を使うことが出来るのだ。
しかもその魔法に使う魔力の供給源は、本体であるエルフではない。
魔力に親和性が高い魔力生命体の特性を生かし、「自然界に存在する魔力」をかき集め、魔法に利用するのである。
本体のエルフとは別の意思を持ち、別の魔力源を利用し、精密に魔法を操る存在。
「それが、エルフの精霊魔法。守護精霊って呼ぶ人もいるの」
母親からの説明を聞いたエインは、少なからず驚いていた。
それが、エインの知識とほとんど変わらない内容だったからである。
「そう言った知識は、どこから得たものなのですかのぉ?」
「ママの実家では、有名な話なの。ずーっと昔から受け継いできた、伝承みたいね。古代魔法文明の頃から伝わってるそうよ?」
恐らく、「エインが生まれ変わる前の時代」から伝わってきたものなのだろう。
かなり正確な内容であるところを見るに、それだけエルフ達が「精霊魔法」、あるいは「守護精霊」と呼ばれるものに強い興味関心を持っているのであろうことがうかがえる。
まあ、自分達の体の事なのだ。
ある種当然と言えるだろう。
「ましてエルフは寿命が長いからのぉ。知識の伝承に費やせる時間も長いわけじゃ」
ちなみに、エインが普段使っている「外部記憶」は、このエルフの「精霊魔法」を手本に作り上げた技術であった。
体の周りを覆っている魔力に干渉し、特異点のようなものを何千個と作る。
それらの間に魔力的つながりを作り出し、記憶媒体として利用。
膨大な情報の記録に成功したのだ。
有難いことに、転生後のエインが纏っていた魔力には、この「外部記憶」が完全な形で残っていたのである。
転生の際にこう言った物は消えてなくなるのでは、と思っていたのだが。
恐らく、エインを転生させた装置が「外部記憶」も「記憶」として勘定してくれたのだろう。
有利な事しかないし、特に掘り下げる必要性も感じないので、エインは「ラッキー」で済ませてしまっている。
ともかく。
「精霊魔法はね、血液細胞同士のつながりを強くしていくことが必要なの。まずは体の中に有るもう一つの意思、“精霊”をしっかりと感じ取って、育てていくわけね」
「ふむふむ。なるほど、早速やってみますかのぉ」
「はじめて“精霊”を感じるのは、なかなか難しいの」
そんな話は、知人から聞いていた。
確か、エインが転生する前は、年単位での修業が必要、と言った話だったはずだ。
「精霊を感じるというのには、どのぐらいかかるものなのですかのぉ?」
「んー、皆大体七日位で分かるようになるかしら」
「はやっ!!」
「ママは大体、二日ぐらいかかったかしら?」
「流石、わしの母上。天才の血は恐ろしいのぉ」
「案外そういう子も多いのよ? 体の中に有る違和感とか、そういうのを感じ取るだけだから。エインちゃんなら、すぐできるんじゃないかしら」
「はっはっは! まぁ、わしですからのぉ! すぐにモノにして見せる。と言うより、もうわかりましたわい」
ずっと「外部記憶」を使ってきた経験があったからだろう。
体の中に有る「精霊」は、あっという間に見つけることが出来た。
さして集中する必要すらなかった。
「今まで特に意識していなかった、ずっとそこにあったモノ」に、言われて初めて気が付いた、と言った感じだ。
「しかし、これは参ったのぉ」
やはり「外部記憶」の使用経験が効いているのだろう。
一度認識してしまえば、全体の把握は一瞬だった。
ただ、「精霊」はどうやら休眠状態にあるらしい。
まるで眠っているかのように、動かずにいる。
恐らくエインが刺激してやれば、「目を覚ます」だろう。
なので、エインが「参った」と言ったのは、そこではなかった。
問題なのは、「精霊」それそのものである。
「これかなり育っとるぞ」
エインの中にいた「精霊」は、思いのほか育っていたのである。
理由は、ある程度見当が付く。
「外部記憶」の存在だ。
恐らく、すぐ近くにある自分と似た存在、「外部記憶」からの魔力的影響を受けたのだろう。
エインの「外部記憶」は、生まれ変わる前の記憶を取り戻す以前から存在していた。
同じく生まれたときから体内に存在していた「精霊」が影響を受けたとしても、不思議はない。
さて。
精霊を確認できたわけだから、後はどうやって使えばいいのか、である。
「母上。精霊魔法を使うというのは、どうすればいいのですかのぉ?」
正直、ある程度知識がある。
研究論文などを読んで、「外部記憶」の手本にしたぐらいだ。
しかし、文章と生の声では、得るものが違ってくる。
ましてエインが知っているのは、数百年、下手をすると千年単位で昔の情報だ。
その間に、何かしらの大きな変化があったかもしれない。
現に「精霊」を感じ取れるまでにかかる修業期間は、エインが知るソレよりもはるかに短くなっている。
「精霊は確かにエインちゃんの中にいるけど、別個の魔力生命体なの。独自の思考を持っているのよ。だから、使うというより、お願いして何かをしてもらう。って感じなの」
「ふむふむ。なるほどですのぉ。やはり、独自に魔法を使用可能な補佐人工知能、と言う感じなんじゃなぁ」
この辺りは、エインの記憶と同じである。
「では、使用できる魔法に制約があるのでしょうのぉ」
「そうねぇ。精霊は、同系統の魔法を使い続ける傾向があるの」
精霊は、一種の「魔力生命体」である。
魔法を使うというのは自身の体を動かすようなものであり、お手の物と言えた。
ただ、「自身の体を動かす」に等しいがゆえの不自由さがある。
同じような魔法であればすこぶるうまく使えるのだが。
逆に、普段使っているのとは違う系統の魔法の扱いに関しては、すこぶる苦手、どころか、全く使えなくなってしまうのだ。
「格闘家が、剣士のように動けない。弓使いが、重い拳を振るえない。みたいなものかしらねぇ。精霊にとって魔法は体みたいなものだからこそ、偏りが出ちゃうみたいなの」
これも、エインの記憶と同一であった。
不便なようなこの「偏り」だが、同時に精霊の持つ素晴らしい強みでもある。
専門的に特化するがゆえに、精霊は人間では考えられないほど高度かつ超精密な魔法を扱うことが出来るのだ。
エインが転生する以前の技術ですら再現不可能、というような魔法を扱う精霊も、珍しくはなかった。
「ちなみに、ママの精霊はこんなの。おいで、ティアドロップ」
母親が腕を振るうと、それを追うように白い煙のようなものが発生し始める。
霧状のそれは見る見る広がっていき、デフォルメされた人の上半身のような形状を取った。
ただの霧ではない。
透けて見える体の内部に、いくつもの小さな紫電が瞬いている。
雷雲が人の形をとっている、とでもいえばいいのだろうか。
それは、どこか女性的な姿を持つ、母親の「守護精霊」であった。
「この子はティアドロップっていう名前なの。雷系統の魔法が得意な守護精霊なの」
「雷が。それは恐ろしいですのぉ」
エルフは、人間より優れた魔力量と身体能力を持っている。
それだけでも強力な戦力たり得るのだが、そこに「精霊」まで加わるとなると、厄介なことこの上ない。
生前、エルフから命を狙われたことが何度かあったエインだが、どれも生きた心地がしなかった。
実に嫌な思い出である。
「ママはね、昔から雷の日が好きだったの。だから、この子は雷の魔法を選んだんだ、と思うの」
精霊は、エルフ自身の趣味趣向に引かれた形で魔法を使うようになる。
エインが知るのと同じであった。
ただ、一つ驚いたことがある。
「その、ディアドロップと言いましたのぉ。精霊と言うのは、姿形を取るものなので?」
「ええ、そういう子が多いわね。やっぱり、意思があるからじゃないかしら」
これは、エインのいた時代には無かった「守護精霊」の特徴だ。
エインが知る限り、「守護精霊」がエルフの体外に何かしらの姿を投影するという記録はない。
「でも、守護精霊がこういう姿を取るようになったのは、最近みたいなの。ママが生まれるちょっと前ね。ある人が、姿が見えた方がいいな、って思ったそうなの。そうしたら、守護精霊が姿を持ったんですって」
「なんと。そんなことが」
「一度そんなことができるってわかったら、皆の意識が変わったんでしょうねぇ。今では守護精霊と言えば、こうやって姿を作るのが当たり前になったのよ」
エインの見立てでは、母親はおそらく100歳前後。
となると、100年以上前に起きた変化、と言うことになる。
「一種のパラダイムシフトじゃなぁ」
「でね? こうやって守護精霊が姿を作るようになって、すごいことが起こったの。意識がしやすくなったからなのか、それまでよりもずっと精霊が強くなったんですって」
エルフの心は、その体の中に住まう「守護精霊」に大きな影響を与える。
姿が見えるようになれば今までよりずっと近しく感じられるようになり、その能力もイメージしやすくなるのだろう。
「そうそう、エインちゃん。精霊はね、名前にも大きく左右されるの。私達の心が影響するかららしいんだけど、名前のイメージに近しい魔法を使うようになるみたいなの」
「名前ですか。しかし、母上の精霊の名と能力は、いささか不似合いに思えますがのぉ?」
ティアドロップ、落涙の事である。
雷のイメージとは、エインの中ではいささかつながらなかった。
「子供の頃のママにはね、雷はお空の涙に見えたの」
「なかなかアグレッシブな涙ですのぉ」
まあ、モノに対するイメージと言うのは、人それぞれである。
「名前のぉ。となると、慎重に考えねばならん訳じゃ」
エインの中の精霊は、恐らくエイン自身が「名前を呼ぶ」ことで「目を覚ます」。
いつの間にか、エインの中にそんな「確信」が生まれていた。
ただそう思った、と言うだけなのだが、事「精霊」に関しては、それが重要なはずだ。
「ねぇーねぇー、にーちゃーん」
それまでずっと黙っていたキールが、エインの脇腹を突っついた。
「もし、ぼくにもしゅごせーれーができたらさぁーあー。ゴーレムになるかなぁー?」
「お主は本当にブレんのぉ」
キラキラと目を輝かせるキールを見て、エインは感心したような呆れたようなため息を吐いた。
鉄のモンスターを捕獲する準備を進めながらも、草縄衆は本来の仕事もこなし続けていた。
冒険者として、ギルドにモンスター素材を卸すというものだ。
狩りの主軸になっているのは、内魔法術使いのチュアランと、魔法道具使いのメリエリである。
チュアランは少数精鋭を率いて、単体で動く強力なモンスターを狙い。
メリエリは自らゴーレムにのり込み、大掛かりな狩りを行っていた。
収入は上々で、既にある程度の貯えも出来ている。
本来、冒険者はその稼ぎの多くを、装備の充実に費やす。
しかし、エインに率いられた「草縄衆」は、そういった事に金を使う必要が無かった。
なにしろ、装備の類はすべてエインがタダで用意してくれるのだ。
必要経費が少ない分、儲けは大きくなる。
「うーむ。貯まり過ぎじゃなぁ」
積み上がった現金を見て、エインは悩まし気に呻いた。
「貯まり過ぎ、ですか?」
エインの言葉に、ミーリスが首を傾げた。
ほかの面々、コンランツをはじめとした草縄衆の班長達とキールも、不思議そうな顔をしている。
彼らが居るのは、草縄村にある建物。
エインが草縄衆に作らせた、専用の執務室である。
様々な種類仕事や魔法道具や魔法設計のほか、おやつなどもここで食べていた。
「そう、貯まり過ぎじゃ。そもそもわしは、研究やなんかに使いたくて金を稼ごうとして居るんじゃぞ。貯まって居るということは、それが出来て居らんと言う証拠じゃろうが」
エインは、稼ぎたくて稼いでいる訳では無い。
使いたいから稼いでいるのだ。
思った以上に金が溜まっているということは、思った以上に使っていない。
つまり「目的を果たせていない」ということなのである。
「なんとか時間のやりくりをして、金を使う算段をせねばのぉ。これでは本末転倒じゃわい」
真剣な様子で唸るエインを見て、草縄衆の表情が引き締まる。
草縄衆にとっての最大優先事項は、エインの意に沿うことであった。
正直、金が貯まって悪いことがあるのか、という気持ちはあるが。
そんな個人的な感想など、どうでもよいのだ。
エインが「貯まり過ぎだ」と言うのであればそれは貯まり過ぎであり、早々にどうにかしなければならない問題なのである。
「なんにせ、時間じゃ。自由になる時間が無ければ何にも出来ん。とはいえ、キールやチャムの勉強に、家の手伝いじゃからなぁ。どう考えても削れん仕事じゃて」
今も昔もエインにとっての最優先事項は、自分の利益である。
つまり、自分にとって大切な家族の事に使う時間は、どうやっても動かせないものなのだ。
「ええい、そうなると此処で考えてもしょうがないわい。後でどうにかする。チュアラン!」
「はっ!」
エインの声に、チュアランは背筋を伸ばして答える。
「なんぞ、ギルドの件で報告があると聞いたが、詳しくはお主から直接聞こうと詳細は何も聞いて居らん。説明を頼めるかのぉ」
「もちろんです。ただ、そう長い話ではありません」
チュアランの話は、確かにそう長いものではなかった。
昨日、ギルドに行ったときの事。
いつものように換金を終えたチュアランに、ギルド職員がこんなことを言ったのだという。
エルドメイ家の領地にギルド支部が有ったら、便利だと思いませんか?
恐らく、草縄衆が狩ってくるモンスター素材を見て、支部を作る条件に足るのでは、と考えたのだろう。
単に聞いてみただけだ、という話だったが、将来を見据えての質問である事は簡単に予想できる。
今のエインからして見れば、あまりうれしくない話だ。
領地内にギルドが出来ること自体は、喜ばしいことと言えるだろう。
素材の買取にも手間がかからなくなるし、冒険者の流入も期待できる。
そうなれば、領地の活性化につながる。
だが。
「エルドメイ発動機やらゴーレム作りやらを立ち上げたばっかりじゃからなぁ。領地の外に出したくない物が一杯なんじゃ、今は」
かなり好き勝手やっているエインだが、一応気を付けていることがあった。
外にエインの持つ技術が漏れること、である。
別に、技術を盗まれることを危惧しているわけでは無い。
技術研究が進むのであれば、積極的に外に出していくべき。
どちらかと言うと、エインはそういった考え方の持ち主であった。
だが、今は不味い。
「わしが高度な技術や知識を持って居る大天才じゃとバレてしまえば、王都やらなんやらに呼び付けられるかもしれん。そうなったら、やりたくもない仕事をやらされるに決まって居る。絶対にご免じゃわい」
自分の好きな事であれば、どんな労力も厭わない。
しかし、やらされる仕事からは全力で逃げる。
それがエインのスタンスであった。
「せめてもう少し隠ぺいの準備。あるいは、ここに来たギルド支部を抱き込んで口を噤ませる程度の準備が出来るまでは、ギルド支部なんぞ出来て貰ったら面倒なのじゃが」
経済力か、あるいは政治力か、暴力か。
今、エインが用意できる程度の力では、ギルド支部を丸ごと黙らせることは難しいだろう。
それなりの力を得るには、もう少し時間が必要だ。
「ミーリス。方法は問わん。ギルドが本気でこの領地に支部を作る心算なのか調べるんじゃ。そして、必要ならば妨害工作を仕掛けるんじゃ。将来的にはうちにも支部を作って貰いたいから、程よくのぉ」
「はい。がんばります」
「まあ、出来るだけで良いわい。難しい事を言ってる訳じゃからな」
こんな指示を出しはしたが、正直エインはあまり期待はしてなかった。
ミーリスの今後の成長のため、場数を踏ませるつもり程度でしかなかったのだ。
もちろん、ミーリス自身は命に代えても「命令」を実行するつもりなわけだが。
「コンランツ。鉄のモンスター討伐を急ぐ。なるだけ早く、最初の一匹を狩る準備を整えるんじゃ。それが終わり次第、すぐに動く。ただ、他部署の動きに支障が無いようにのぉ」
「はっ。手配いたします」
「兄上が来る前に、鉄のモンスターの大規模討伐準備を進め。その合間を縫って、ギルドの動きを探り、牽制。金やら政治力やら暴力やらを準備するためにも、技術力向上の予定を止めるわけにもいかん」
やらなければならないことを指折り数え、エインは思わず顔をしかめる。
「エルドメイ発動機や領民兵の面倒も見なければならん。キールの勉強やチャムの世話、畑や家の手伝いは絶対に手を抜く訳にはいかんし。精霊魔法の研究もあるんじゃった」
何故こんなに忙しいのか。
ただ、好き勝手したいだけだというのに。
本気で悩むエインだったが、まぁ、好き勝手をする代償である。
「むっ、そうじゃ。もう一つやらねばならぬ事があったのじゃった。メリエリ、材料の準備は出来て居るじゃろうな」
「はっ! すべて取り揃えております!」
エインは満足そうに頷くと、椅子から立ち上がった。
それを見て、キールが不思議そうに首をかしげる。
「にーちゃん、なんかするのー?」
「うむ。砂糖が手に入ったというのでのぉ。お菓子でも作ろうと思うたんじゃよ」
モンスター素材の換金に向かった草縄衆が、たまたま見つけて手に入れてきたものであった。
こんな辺境では、砂糖は貴重品。
なので、エインは自らの手でお菓子作りをすることにしたのだ。
生まれ変わる前からずっと独り身だったこともあり、意外にもエインは料理やお菓子作りが出来る方であった。
「お主の分もあるぞ。もちろん、父上や母上にも召し上がって頂かなくてはのぉ」
「そっかぁー。ぼくもてつだう!」
「そうかそうか。では、手伝って貰おうかのぉ」
色々と片付けなければならないことは多いのだが、一先ず後回しである。
鉄のモンスター討伐準備、ギルド対策、エルドメイ発動機や草縄衆の技術力向上、領地繫栄のための準備、などなど。
やらなければならないことは、相当な数あった。
だが、今のエインにとって、家族のためのお菓子作りは、それらと同じか、それ以上に重要なことなのであった。