表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/37

ひとりぼっち、ふたりぼっち(2)

 自室に戻ったハルカは一人、ベッドに寝そべりながら埋め込み式の照明のまぶしさに目を細めている。空腹は満たされたが、もっと腹の底の方にある別の何かを呼び起こしてしまったような気分だ。


『捨てられてしまったって、思ってるんだろう?』


 トールのあの言葉が、ずっと鼓膜に焼き付いて消えないでいる。


 それは、思っていることを言い当てられた悔しさのせいだろうか。それとも、自分ではできない直接的な形容に「なるほど」と納得しているのか。ハルカにはよくわからなかった。しかし今にも喉の奥からせりだしそうになっているこのむかつきは、控えめにに言っても気持ちのいいものではない。


 腹の底でぐるぐる渦巻いている感情の正体は、今のハルカにも覚えがあった。そう、これは嫉妬だ。みすぼらしくみじめったらしい、ねたみそねみの固まった醜い(おり)


 成績優秀で、将来有望なプログラマでもあるトールは、ハルカの欲しいものを生まれながらにすべて持ち合わせていた。恵まれた体格、抜群の運動神経、多くの友人。


 父も、母も、そしてこの世の中の大抵のひとは、自分とトールが並んでいたら、何の臆面もなく「彼の方が優れているよ」と言うだろう。


 ハルカは自分の左手を持ち上げて、そっと眺める。長いばかりで力のない指は、何を作り出すこともできない。


 右手の中に長いこと握りこんでいた小さな包みは、体温のせいか少し柔らかくなっていた。指先でつまんで光にかざしてみれば、きらきらとまばゆい金色に輝く。しかしそれは未来を照らす希望ではないし、ましてハルカの愛する美しい星の光でもない。


 ハルカはわかっていた。最初にけんかを売るような口をきいたのは自分の方だ。距離を縮めることを拒むのは、いつだって臆病で意地っ張りな自分で、だから今もこうして用意された形に合わせることができず、一人でみっともなくもがいている。


 ハルカは、周囲の環境を受け入れられないのではない。いびつで矮小(わいしょう)な、ひどいひねくれ者の自分を拒絶しているのだ。




 ――教えてやろうか、ハルカ。お前は誰よりも劣っているよ。


 黒い悪魔がそうささやいて、かろうじて保っていた意識を薄暗い眠りの世界へ誘う。


 手の中にあった包みをサイドテーブルに置くと、ハルカは布団をかぶって目を閉じた。ぬかるみに沈み込むような感覚とともに、意識はゆっくりと現実から逃れていく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ