第2話
それは突然起こった。
何もない道でこけるかのように。
もっと大げさに言うならば、青天の霹靂というやつだ。
その例えどうりに、何もないところから、俺と光弥は吸い込まれた。
吸い込まれることに驚くヒマはなかった。
気づけば俺は一人で、暗闇にいた。
朝のホームルームが終わり、俺は今日から本格的に始まる授業の準備をしていた。
だが、教科書はあったものの資料が見つからなかった。
不味い、初めからこんなんでは先生に目をつけられてしまう、どうにかしなくては、と俺は焦りまくり光弥はそれをニヤニヤと眺めていた。
時間はあっという間に過ぎ、既に来ていた授業の先生はチャイムが鳴るのを待っている。
そして鳴るチャイム、終わったと絶望する俺、吹き出した光弥。
「始めまーす、日直号令を」
と、先生が指示を出したと同時にそれは起こった。
俺は見たのだ、丁度笑いを堪える光弥を小突こうと思って横を向いたから。
光弥も見たのだろう、俺の方を見ながら笑いを堪えていたから。
互いの背後に渦巻く、暗闇を。
こうして、俺が中学時代から密かに楽しみにしていた高校生活は、それどころか全ての日常が、俺の手から奪い去られていった。
これだけは言える。例え凄い能力が貰えたとて、心躍る世界であったとて、俺が心の底から異世界を望んだ事は一度も無かった。
だって俺は今の世界に満足してたんだから。
………光弥は、そうじゃなかったのかもしれない。口では俺と同じことを言っていたし、そのための行動をし続けた。
でもあいつは、自分から元の世界の話をすることは殆どなかった。