博物館『再現展』
客「たまの休日だから近所の博物館に来たんだけど、なんだここ。『再現展』?」
館長「こんにちは。私館長のアンノジョウと申します」
客「え? 案の定?」
館長「いえ、庵に野原の野、譲ると書いて、庵野譲です」
客「珍しいですね、その名前」
館長「よく言われます。あなたの反応も案の定と言ったところです」
客「やかましいわ。ところでこの『再現展』ってのはなんですか?」
館長「その文字通り再現するんですよ」
客「何を? VTRですか?」
館長「言葉です」
客「言葉?」
館長「例えばこの卵割ってみてください」
客「割るんですか?」
パカッ
小説家「異世界、チート、転生、追放、……ありきたりすぎるぅぅう!」
館長「小説家の卵です」
客「そういうことじゃねえよ! 何言葉の再現って慣用句とかの言葉遊びってことですか?」
館長「そういうことです」
客「まじか……面白そうじゃねえの!」
館長「では次はこれをお持ちください」
客「何このハート型でピンクのぶにぶにしたやつ」
館長「舌ベラです」
客「きったね! デロデロしたのがついてると思ったよ」
館長「これを叩いてみてください」
客「やだよ! ローションまみれみたいなこれを叩くの?」
館長「いいから叩いてみてください。独特な音が出ますよ」
客「わ、わかりました。じゃあ叩きますね」
ポン!
客「……」
館長「……」
ポン!
客「……これは」
館長「舌鼓です」
客「ですよね! よーお! って言いそうになりましたもん。へぇー……これもしかして、人間の……」
館長「次はですねー」
客「おおい!」
館長「こちら」
客「誰ですかこの男の人。なんか時計気にしてイライラしてそうですけど、誰か待ってるんですかね」
館長「よく見ててください。そろそろですよ」
男の目「ブオォォォオオ!」
客「うわっ。男性の目から逆立ちしたマッコウクジラが現れた!」
館長「こちらが目くじらを立てるです!」
客「くじらってそういう意味じゃなかった気が……って、このくじら潮吹いて来ましたよ!」
館長「早く逃げて逃げて!」
客「うわぁ! 後ろから溢れた水が津波のように押し寄せてくる!」
館長「これが所謂、背水の陣ですー」
客「言ってる場合か!」
二人「はぁはぁはぁ」
客「何とか逃げきれましたね」
館長「申し訳ございません。まさかあれほど怒ってたとは……」
客「怒ってる度合いで、潮の量が変わるんですね」
館長「では最後の部屋に参りましょう。最後は本展示会のメイン作品!」
客「おお! いわゆる目玉商品ですね!」
館長「……」
客「……え? なんでムスッとしてるんですか?」
館長「んんーっ!」
客「もしかして、本当に、目玉の商品が……」
館長 布を取り上げ、いくつもの目玉が入ったケースを見せる。
客「あ、当たっちゃった……」
館長「なぁんで当てちゃうんだ! ここまでいい流れであなたの期待を裏切れていたというのに! 最後、「本物の目玉かい!」っていうツッコミの前に、振りを殺してしまってどうしてくれるんだ! 恥ずかしくて顔から火が出てしまったじゃないか! あんたのせいで、この展示会はおしまいだ! 代金払ってさっさと帰ってくれ!」
客「こりゃとんだ大目玉を食った」