1-3 砧公園の決闘
俺の聖獣-たぬき-の能力は武器を想像したものに変身できる
『武器創造』
一見強そうに見えなくもない能力であったが、
先程戦闘した男の分身能力をみた感じかなりハズレの能力らしい……
「強そうな能力だと思ったんだけどなあ。」
少し落ち込む義勝だったが気持ちを切り替えてとりあえず移動することにした。
今はたまたま町中で敵と遭遇したもののこんなところにいても仕方ないと判断し
人の集まりそうな広い公園に移動することにした。
現代と街を見比べながら歩く知っているようで知らない道はとても不思議で面白く
飽きることなく歩いているとあっという間に目的の場所にたどり着く。
やっぱりあった。
道路に囲まれた広大な敷地。
大蔵運動場の隣に堂々と広がる自然豊かなこの公園こそが
義勝の目指した目的地『砧公園』であった。
「来てみたはいいけど、ここ結構広いしほんとに他に有権者なんて見つかるのか?」
一人ぶつぶつとつぶやいていると前方から大きな声で誰かが叫ぶ。
「見つけたぜ有権者!俺と戦えぇぇえ!!!!!!」
バカ正直に決闘を挑んできた男が嬉しそうにこちらに走ってくる。
まじかよ……
こういうのって不意打ちで攻撃を仕掛けてくるのがセオリーじゃなかったのか?
「――来い、たぬき。」
聖獣を呼び出し武器を構える義勝をみてその男は少し距離を置き元気に自己紹介を始める
「俺は武田 豊19歳の大学生で馬事公苑の近くに住んでたんだ!お前はなんって言うんだ?」
調子を狂わせるその行動に義勝は警戒しながら答える
「うるせぇ馬鹿!罠かもしれないのに誰が答えるか!それがお前の能力かもしれないだろ!」
「馬鹿とは失礼だろ?それに俺の能力はそんなんじゃねえよ!
見せてやるぜ俺の能力を――来い、馬!」
続けて叫ぶ
「『怪力解放』!これが俺の能力だ!」
豊が地面を殴るとともに大地が揺れ
そこには大きなクレーターが出来上がっていた……
「……。」
目を丸くして黙り込む義勝をみて豊が笑う
「ガハハハッ!すげえだろ!で、お前の名前は?」
豊の能力に嘘がないと判断した義勝はとりあえず名乗る
「吉良義勝だ、砧出身18歳で大学生。能力は――」
言葉の途中で豊に飛びかかる義勝
「『武器創造』」
義勝は武器を剣に変身させ斬りかかる
それを豊が両腕をクロスし受け止めガードすると
キイーンッ‼と鈍い音を響かせお互いが衝撃で数歩後ろに弾かれる
「武器を変身させることだ。お前の能力は身体強化か?」
「カッコイイ能力じゃねえか!俺のは体が丈夫になるだけなんだよなぁ。」
「剣の攻撃を弾いたり地面殴ってクレーター作ったりできるのにだけってなんだよ?なに?自慢?カッコイイ能力ってバカにしてる?」
「……ごめん。そんなつもりじゃなかったんだけど。それに俺だって弾いただけで腕はちゃんと怪我してるんだけど。めっちゃ痛い。」
……どうやら豊はいいやつのようだ。
だけど負けるわけにはいかない、俺には区長にならなきゃいけない理由があるんだ。
豊の強力な一撃を躱しながら隙きをみては攻撃をいれる。
実力は互角、お互いが消耗する中で二人の間には不思議な絆が生まれ始めた――。
一進一退の攻防の中で最初に豊が口を開いた
「お前なんで区長になりたいんだ……?」
その問いに関して義勝は過去を語った。
語り終えた後、豊を見るとその目には涙が滲んでいるようにみえる
……こいつ泣いてるのか?
すると豊は距離をとり戦闘を中断して泣きながら言った
「お前は大変だったんだな。俺にはなにもなかった、区長を目指す理由なんて……」
そして豊は号泣しながら義勝に頼んだ
「俺にお前の夢の手伝いをさせてくれ!俺の夢は警察官だ、沢山の人を守るためお前と一緒し新しい区を創りたい!」
断る理由なんてどこにもなかった
「こちらこそよろしく頼むぜ、相棒!」
2人は熱い友情の握手を交わすと
同じ未来を目指して砧公園を後にするのだった。
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おまけ
武田豊
聖獣:馬 武器:身体強化 能力:怪力 出身:上用賀 年齢:19
父親は警察騎馬隊。父の影響で幼い頃から馬術を習っている。
男同士の決闘の末に生まれる友情
始めてできる仲間と言ったらこれにつきますね!
次回はヒロインを登場回です。