1-2 -開戦-
戦闘シーンあります。
唐突に始まった選挙戦によって義勝は見知らぬ住宅街に飛ばされていた。
「区長を目指すにしたのはいいものの、選挙戦について把握している情報が少なすぎるな。社会の授業で習ったことが正しければここは過去の12区のはずだし少し探索してみるか!」
しばらく歩くと見慣れた景色が目に映る
「これって三峯神社だよな。」
住宅街の一角に馴染むその小さな社は間違いなく小さい頃からよく目にしていた近所の神社そのものであった。
そして、それが意味することは一つだけ……
「めちゃくちゃうちの近所じゃん!」
周りを見渡すと建物や雰囲気は全然違うもの道は今とほぼ同じ、
紛れもなくここは過去の12区で義勝が今いる場所は実家のある砧であった。
見知った神社に興味を惹かれ境内に入ろうとしたその時、背後に迫る殺気に気づいた。
焦って振り返ると鎌を持った男が飛びかかってくるまさにその瞬間だった。
間一髪。自分目掛けて振り降ろされたその鎌を躱した義勝は相手を睨みつける。
「先手必勝。やったと思ったんだけどな~」
地面に刺さった鎌を抜きながら男はこちらを見る。
この瞬間頭の中に情報が流れ込む。その情報はまるで最初から知ってたかのように体に溶け込んでいく。
その一瞬で義勝は戦い方をすべて理解しそれを呼んだ。
「――来い、たぬき。」
義勝の呼び出しに応じ現れたたぬきの精霊はそのまま義勝の手の中で鉄の棒に変化した。
それを見て鎌を持った男は警戒しながら距離を置く。
「流石にそんな簡単に狩りとらせてはもらえないよね。でもね?ここからが本番ってもんだよね。みせてあげるよ僕の聖獣-いぬ-の恐ろしさを!」
次の瞬間鎌を持った3人に分身し一斉に飛びかかってくる。
分身できるという自分と比べて圧倒的に強力な相手の能力に対して
義勝は困った。とても困った。本当に困った。そしてつぶやくのだった。
「分身能力っていきなり強すぎんだろ……」
能力がバレた時点で負けが確定すると思いひとまず鉄の棒と天性の運動能力だけで3人相手に防戦していると相手は語りかけてくる。
「僕らの猛攻をここまで防ぎ切るなんて、それがお前の能力か!でもいつまで持つかな?」
――勝ち筋が生まれた。
義勝はチャンスを逃すまいとブラフをかます
「俺の防御の能力を見破るなんてなかなかやるな!これこそが聖獣-たぬき-の能力超防戦だ!防戦という項目において俺は最強!並の攻撃が何回こようが一撃も受けないってわけさ!」
鎌の男はニヤリと笑う。そして勝ち誇ったようにいった
「並の攻撃なら受けないねぇ……じゃあ貫通するほどの大きな一撃ならどうかな?『地獄の番犬』!」
鎌の男とその分身は少し離れたところに3人集まったと思うと
3体の分身は残像のように重なり合った。
その姿はまるで地獄の番犬の如く、勢いよく飛びかかってくる
3本の鎌が受けを構える鉄の棒たった一点を目掛けて。
――かかったな!
義勝はその好機を見逃さなかった。
「『武器創造』」
次の瞬間、義勝持つ鉄の棒は分厚い盾に変身する。
カッキッーン、と甲高い音を響かせ鎌が吹き飛ぶ
状況を理解できてない男に義勝はすかさず次の攻撃を入れる。
「『武器創造』!」
右下に構えていた義勝の盾がハンマーに変身する
「ぶっとべ犬野郎!!!」
義勝の叫びとともに重複した3体の男の体をハンマー一振りで思いっきり吹き飛ばす。
「ぐはぁ」
男の体はそのまま数メートル飛ばされた後壁にぶつかりそのまま消滅した。
――勝ったのか?
立ち尽くす義勝の前に聖獣-たぬき-が現れ腹をみせてきた
なにかと思い腹をみるとそこには2票という文字が浮かんで見えた。
「勝ったっぽいな!」
こうして、義勝は選挙戦初めての戦闘を無事勝利し票を獲得するのだった。
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おまけ
灰田 滾
聖獣:犬 武器:鎌 能力:分身 出身:大蔵 年齢:20
近所の大蔵運動場の昔の姿と公園の機関車に感動した。
選挙戦と聞いてどんな頭脳戦なんのかと思った人もいるかも知れませんが
肉弾戦です。