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あまのじゃく

作者: 来留美

「好きだよ」



その言葉は私の口から全然出ない。


何故なら私は天の邪鬼。



私の天の邪鬼は彼の前だけ。


彼の前では私は可愛げがない女の子。


彼の目に映るのは天の邪鬼な私。






「お前って何で俺といるときだけつまらなそうにするわけ?」



ある日、彼に言われた。


彼にはそんな風に見えていたんだと気付いた。


好きなのに。


彼には絶対嫌われている。



私は彼の問いかけに答えられなかった。



彼は傷ついた顔を一瞬見せて話題を変えた。


彼を傷つけた。


天の邪鬼な私なんて大嫌い。


違う。


天の邪鬼は関係ない。


私は私が嫌い。




「好きだよ」


その言葉を言えないまま時間だけは過ぎていく。


私は彼を傷つけたのに

彼は私に対する態度は変わらなかった。




私は彼とは違う男の子と話していた。



「ちょっと来て」



私は話の途中で彼に腕を捕まれ引っ張っられた。


彼は人気(ひとけ)がない場所まで私を引っ張った。



「何?」


「ムカつくから」


「えっ!」


「俺の前だと笑顔だって見せないのにあいつの前では笑顔ばかり。」


「何を言ってるの?」


「俺の前にいるときだけお前は表情がなくなるんだ」


「それは……」


「それは?」



私の頭はフル回転で理由を探す。



「あなたの話が面白くないからよ」



私は言ってはいけない言葉を口にしてしまった。


可愛げがない天の邪鬼の私は彼をまた傷つけた。


違うって言いたいのに言葉は出ない。



「あっそ」



彼はそう言って私に背を向けて歩き出した。


彼の背中は悲しげで小さく見えた。



それから彼と話すことはなくなった。


あの日、彼がなぜ私にムカついていたのかよく分からないまま。




今日は彼が私意外の女の子と楽しそうに話していた。


私はその場面を見て気付いた。


彼が私意外の女の子と話しているのを見たのは今日が初めて。


彼って私とだけ話してたの?


何で?


彼と女の子の楽しそうに会話しているのを見て、

私はイライラとしてきた。


私意外の女の子と話さないで。


あなたはそんな笑顔も見せるんだ。




あれ?


この気持ちってこの前の彼と同じ?


そう思ったら私は彼の腕を掴んでこの前の場所まで引っ張っていた。




「何?」


「ムカついたから」


「その言葉、この前お前に言った言葉と同じなんだけど」


「うん」


「俺があの言葉を何で言ったか分かって言ってんの?」


「うん」


「じゃあ何で俺があの言葉を言ったか教えて」


「…………」


「そう。分かった」


彼はそう言ってまた私に背を向けて歩きだした。


この前のように。




このままじゃこの前と同じになる。


私は彼にちゃんと伝えたいの。


彼の気持ちが私と同じなのか。


答え合わせがしたいの。





「私は……」



私の言葉に彼は振り向いた。


彼はまた傷ついた顔をしている。


彼にはそんな顔をしてほしくないのに。


私の天の邪鬼。


消えてなくなっちゃえ。



「私はあなたのことが……」


「好きだ」


「えっ!」



彼が私が言う前に好きだと言った。



「何で?」


「お前より先に言いたかった」


「何それ」


「俺のほうがお前より何倍も好きだから」



彼は笑顔で嬉しそうに言った。



「私はあなたの何百倍も好きだよ」



私は彼に向かって笑顔で言った。


彼は“やっと俺に向けての笑顔が見れた”と

嬉しそうに笑って言った。




「好きだよ」


その言葉はもう言える。


私は天の邪鬼でもない。


私は思ったことを口に出せる。


彼の笑顔が見れるなら私は何度でも言える。




「大好きだよ」

読んでいただきありがとうございます。


自分の気持ちに嘘をついて出てしまう言葉ってありますよね。


天の邪鬼から卒業したい気持ちを書きました。

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