オイオイオイ、死ぬわアツイ
東館担当→アレイン
西館担当→アンナ
というわけで【アンナ視点】
暑い。暑すぎる。
温度だけで言えばケトル砂漠の方が高いかもしれないが、不快感はここの方が圧倒的に勝る。
湿気がじめじめと肌にまとわりついて気持ち悪い事この上ない。くっ、いっそ殺せ。
ここはどこだ?
黄金の地下迷宮にいたはずだ。
最深部に辿り着いて、奴等に従う振りをしてアレインに斬りかかった。勿論本気じゃなかったからアレインは簡単に避けたさ。そして混乱に乗じて奴等を斬りつけてやったんだ。
でも仕留めきれなかった。
殺せなかった。あれでは魔法で回復されてしまう。
そう、最大のチャンスを逃してしまったんだ! くっ、殺せ!
「おねえさま?」
「ラヴィ、無事か? 怪我は無いか?」
「うん。ここはどこ?」
「恐らく異世界だろう。アレインの持っていた黄金水晶が輝いていたからな」
幸運だったのは咄嗟にラヴィを抱き寄せられた事だ。ラヴィと離れ離れでは厄介だったからな。一緒に転移出来て良かった。
しかし、血族でもないのに黄金水晶を発動させるとは、相変わらずアレインは無茶苦茶だ。アイツの魔法適正は全適正マックスなんだ、それが伝説の血界魔法だろうがお構いなしに! くっ、殺せ!
「アンナ? 大丈夫?」
「ああ、心配いらない。ラヴィは私が守るから」
「ううん、おねえさまが大丈夫かなって。無理しちゃダメだよ」
なんと! 私の心配をしてくれているのか! ラヴィはなんて可愛いんだ、くっ、殺せ!
「わかってる。アレインを探そう。しかし、人が多いな」
視界を埋め尽くさんばかりの人、人、人。
帝国の開戦前の決起集会でもこれほどではないぞ。
周りの馬鹿デカイ建物を見るに、文明レベルも私達の世界より遥かに高いようだ。遠目に見える三角のついた変な門は、帝国の凱旋門より二回りも大きい。用心しなければならないだろう。
それにしても暑い。何故この暑さで異世界人はじっと待っていられるのだ。奴等は訓練された戦士とでも言うのか。見たところ貧弱そうな人間ばかりに見えるが。
「暑いな。アレインを探す前に飲み物を探さねばまずいな」
「んー、アレイン持ってないかなあ?」
ラヴィがアレインのバックパックを掴んでいたようだ。開けて中を探してみるが、ぬるい水の入った水筒しかなかった。量も足りない。くっ、殺せ!
「危険ではあるが、現地人に接触してみるか……」
まさか翻訳の指輪がこんな形で役に立つとは思わなかった。ふむ、これは素晴らしいな、文字も読めるのか。目をこらし、試しに門に書いてある字を読んでみる。
「トーキョー、ビッグサイト?」
聞いた事がない単語という事は、異世界の施設の名前か地名なのだろう。○○城のように、トーキョーという土地にあるビッグサイトという施設、という事かもしれない。
「お、いたいた! コンパニオンさーん!」
一人の男が手を振りながら近付いてきた。
ハンカチで額の汗を拭いながら胡散臭そうな笑顔をこちらに向ける。
「はじめまして。深川文庫の間宮です。本日はよろしくお願いします。衣裳は自前との事でしたが素晴らしいですね! どこからどう見てもディアンナにラヴィーンだ、それに二人ともとてもお美しい!」
「ディアンナ? 何を言っているんだ? それにそんなに誉めるな! くっ、殺せ!」
「おおっ! 役作りも完璧とはさすがにプロの方だ。さ、時間もありません、こちらへ!」
マミヤと名乗った男は有無を言わさず私の手を引っ張る。
「おい! 私達は飲み水を探さねばならないのだ!」
「大丈夫ですよ! ブースにいくらでも用意してありますから!」
水をくれるようだ。しかもいくらでもあるだと? くっ、殺せ!
なに、いざとなったら暴れてやればどうにかなるだろう。とりあえずマミヤという男についていく事にした。
【今回の教訓】
ペットボトル一本で足りる訳ねーだろ!
三リットルだ三リットル!




