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コミケとは邪教徒の集会の事です

 暑い。暑いにも程がある。


 これだけ暑いのに、じっと並んでいる異世界人の精神力はすごいな。全員が魔法使いだというのも納得出来る。

 

 「タマ殿、俺はこんなに多くの人間がいるのを見た事がない」


 「まあそうだろうね。ネズミーリゾートよりも人が来るってんだから、もはや狂気の沙汰だよね」


 「狂気……? 狂信者の集まりなのか!」


 なるほど。邪教の儀式だったのか。これだけの魔法使いが集まるのだ、邪神召喚でもするのかもしれない。


 「ハハハッ! そうそう、狂信者だよ。僕も含めてさ。君もじきにそうなるよレインさん」


 快活に笑った。その笑顔は人が良さそうで、とても邪教の関係者には見えない。


 「し、しかしタマ殿。我々は並ばなくてもいいのか?」


 タマは躊躇いなくずんずんと進んでいく。

 並んでいる人々の羨ましそうな、恨めしそうな視線が突き刺さり、なんともいたたまれない。


 「え? ああ、システムをよくわかってないんだね。あの人達は一般参加の列だよ。僕達はサークル側だから早く中に入れるんだ。準備しなくちゃいけないからね」


 なんと、タマは主催する側、つまり邪教の幹部だったのだ。高名な魔導士なのだろうか? 見たところ魔力など微塵も感じないが、タマ自身も言っていた。油断すると死ぬと。

 可愛らしい見た目でも凶悪な魔物など腐るほどいるからな、今一度気を引き締めておく。


 「毎回サークル抽選が当たるとは限らないし、説明しておこうか。西館と東館で待機列がわかれているから、もし一般参加する時は間違えないようにね」


 進む先には確かに建物が二つある。我々は片方の東館に行くようだ。


 「東館はサークル、西館は企業のブースって具合にわかれてるから」


 ふむふむ。詳しく聞いてみると、ここで行われているのは書物の即売会らしい。

 東館ではパーティー単位、西館ではギルド単位でそれぞれ怪しげな教典を売って信者を獲得する、という催しのようだ。


「特に西館の巨大コンテンツのブースは、始発で並んでも買えないなんてざらだ。欲しいものがあるなら事前に調べておかないと買えないよ。こんな感じで」


 そう言ってタマはカラフルな紙を何枚か取り出して見せた。


 「僕も、こんな感じで事前に欲しいものリストを作って、興味のあるサークルはマップにわかりやすく目印をつけてある。ウェブカタログは本当に便利だよね。使いたい所だけ印刷して自分なりにカスタマイズできるからさ」


 タマは自分で描いた本を売りつつ、他のパーティーの本も購入するようだ。

 どんな本だろうか? なんせ異世界の本だ、大変に興味がある。

 既に業者から自分のスペースに届いているという。

 高鳴る胸を抑えて東館に入った。


 【今回の教訓】


 徹夜で並ぶのは禁止。ダメ、ゼッタイ。


 事前の調査が明暗を分ける。

 調べておかないと先ず目当ての物は買えない。

カタログで各サークル、企業ブースをチェックしておこう。

 カタログは三種類。

 冊子(分厚くて人も殺せる)

 ウェブカタログ(課金すれば見放題)

 DVD-ROM


 冊子を持ち運ぶのは辛い。

 かといって会場内はスマホ回線が無茶苦茶重く、現地でウェブカタログを見ようとしても見えない事が多い。

 前もってスクリーンショットで撮っておいて、行きたいサークルにはマーキングしておこう。


 コミケは準備が90%!

 

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