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そんな装備で大丈夫か?

 暑い。暑すぎる。


 サラマンダーでも暴れているのだろうか。トムエ火山の火口を思い出すな。

 あの時は氷結魔法を常に展開させ涼を取っていた。

 今もそうしたいところだが、黄金水晶は俺の魔力を全部吸い上げてしまった。魔力回復を待たなければならないが、それまで体力が持つのだろうか? 命の危険を感じるほどに暑い。

 周囲の人々は薄着だが、それでも汗びっしょりだ。厚着の俺はたまらない。


 「レインさん、さすがに暑そうだね。本当にレイヤーさんの根性はすごいよね。特に特撮組なんて今年は死人が出るんじゃないかな。って、レインさん荷物は? まさか手ぶら?」


 アンナ達の襲撃から逃れるのに必死だったし、バックパックはラヴィに取り上げられてしまった。

 俺の所持品は肌身離さずにつけていた貴重品と、握りしめていた黄金水晶だけである。

 

 「む……そうだ。置いてきてしまったのだ」


 「ええ? 駅のロッカーに置いてきてゃったって事? 取りに戻る……のは無理だよなあ。もう設営しないと時間がない」


 「心配しなくても大丈夫だ。修羅場には慣れている」


 俺はSランクの冒険者だぞ。天変のアレインが近付いてきたと知ったオーク達は集落を投げ出して引っ越す程だ。確かに目眩がするほどに暑いが、弱音を吐いていられない。それに、魔力さえ回復すればどうとでもなる。


 「慣れるもんじゃないでしょ。本当にそんな装備で大丈夫?」


 そんな装備で大丈夫かだと?

 黒龍の革で作ったこのローブは全ての属性攻撃を遮断するし、左腕に嵌めた賢者の腕輪は魔法の詠唱を省略する。

 Sランク冒険者に相応しい装備だ。もし売ったら小国の国家予算程の価値があるだろう。


 「大丈夫だ、問題ない」


 「コミケをなめるなぁぁぁぁぁああっ!」


 突然タマは激昂した。


 「C84の惨劇を知らないのか? 何人も救急車で搬送され、救護室は熱中症患者で溢れかえっていた。会場内の温度は46℃を超えるんだぞ! 倒れてスタッフに迷惑をかけるのか? 本当に死んでしまうぞ!」


 タマは背負った大きいバックパックを地面に下ろすと、透明な容器に入った白濁色の液体を差し出した。半分凍っているようだ。冷たさが気持ちいい。飲め、と促されたが蓋の開け方がわからず容器を振ったりしていると、見かねたタマが青色の蓋を回して開けてくれた。なるほど、ネジのようになっているのか。素晴らしい容器だ。乱暴に扱っても漏れないし壊れない。なんと言っても軽い。

 口をつけ、容器を傾けて中身を喉に流し込んだ。

 

 「う、美味い! なんだこの甘さは! キンキンに冷えていて、火照った体に染み渡るっ!」


 「飲み物も持ってないとか正気? 沢山用意してあるから遠慮なく飲んでよ。なくなったらすぐ言って」


 何だと! こんな美味いものが何本もあるのか? しかもいくらでもくれるだと? 異世界の文化レベルはそれほど高いと言うのか?


 「あとは……はい。これ」


 続いてタマが取り出したのは白と青の板。

 なんだこれは?


 「これはね、こうやって、叩くんだよ!」


 板の中心をその手で叩くと、パキッと心地よい音を立てた。そしてそれを俺に手渡す。

 おおっ! 冷たい! 

 その板はとてもひんやりとしていた。氷結魔法が付与されているのか?


 「それを脇の間に挟むといいよ。とにかく、夏のコミケは地獄だよ。油断したら死ぬ。無理は絶対にしないこと。いいね?」


 「ああ、わかった。肝に命じておく」


 すごいぞ異世界。この建物の中にも驚く事が沢山あるに違いない。

 さっきまでの襲われていた事など忘れ、俺の胸はワクワクと高鳴っていた。

 


 


 【今回の教訓】


 マジで夏のコミケをなめてはいけない。

 半袖の人も多いが、日光が厳しいので薄い長袖をお薦めする。

 待機列は人が密着する為温度以上に暑い。体に異変を感じたら休憩をとるなり、無理はしないでほしい。

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