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捧げた―! っていう自己満足


 【アンナ視点】 



 開場が告げられた。

 向こうに感じるのはおびただしい数の気配。

 何千、いや何万か。

 それがゆっくりと近付いてくる。

 

 「おねーさま」


 緊迫した雰囲気に怖くなったのか、ラヴィが私の服の裾を掴む。その小さい手にそっと手を重ねた。


 「大丈夫だ、確かにとんでもない数だが統制が取れている。危ない事にはなるまいよ」


 皆、緊張こそしているがピリピリしているのは一部のスタッフだけだ。

 コンパニオンとはブースを彩る花だ。そして、どんな時でも咲き誇っていなければならない。華やかな衣装に身を包んだ女性達は、衣装に負けないくらいの華やかな笑顔を決して崩さなかった。


 大したものだ。


 プロ根性というものはどの職種でも素晴らしいな。たかが娯楽と馬鹿にするのは容易いが、ここまで本気になれる物を馬鹿にする人間なんて人生を損しているに違いない。

 さあ、私も負けないように不機嫌そうな顔で迎えようか。くっ、殺せ!


 やがて開け放たれた大扉から、ゆっくりと、列を保ったままぞろぞろと歩いてくる客達の姿が見えた。

 スタッフが全力で叫びながら列を維持している。


 「素晴らしいな。誰一人隊列を崩そうとせん」


 「ええ。何年か前には我先にと押し寄せてきて事故もあったらしいですが、事故が繰り返されてはコミケ自体がなくなってしまいますからね。今は列管理も徹底されています。スタッフさんの努力には頭が下がりますね」


 てっきり開場と共に雪崩の様に流れ込んで来ると思っていた。

 しかしそれで怪我人が出ては多方面に迷惑がかかる。

 このような欲望の場においても他者を尊重する。

 やはりオタクというのは誇り高き戦士なのだ。


 「でも始発ダッシュは今も凄まじいですけどね。あそこだけは今でも危険だと思います。さあ来ますよ! 頑張りましょう!」



 大した混乱もなく、即売会は始まった。

 もっとパニックになるかと身構えていたのだが拍子抜けだな。誰もが順番を守り、スタッフの案内に従っていた。

 一人目の客がブースに到着。迷わずに全種類の商品を購入した。


 なっ? いきなり抱き枕カバーが売れるだと? しかも私とラヴィーンのそれぞれ一つずつだ!

 というか、全商品購入?

 決して安いものではないと聞いたぞっ?


 「抱き枕カバーお買い上げありがとうございます! さあディアンナ! この卑しいお客様を踏んであげてください!」

 

 マミヤの言葉に客達はどよめいた。


 「踏んで頂けるのかっ?」

 「ざわ……ざわざわ……」

 「み な ぎっ て き た!」

 

 「お、お願いします」


 少し緊張した面持ちで四つん這いになる客。

 躊躇っているとマミヤが耳打ちをしてきた。


 (アンナさん、遠慮なく尻の辺りを踏んでください。彼はレインです。あの身勝手でメチャクチャでいつもディアンナを振り回すレインです)


 なるほど。アレインと思えばいいのだな。アレインならよく踏んでいるからな。

 ん? 何故そういうプレイを私達がしているのを知っているのだ?

 まさか、あのお方はそんなとこまで覗いているのか……? くっ、殺せ!


 「この薄汚い豚野郎がッ!」


 ズンッ! っと一思いに踏んでやる。客は恍惚な表情を浮かべ鳴いた。


 「ありがとうございますっ!」


 (ほら、ラヴィさん。さっき教えたとおりに!)


 (うんっ!)


 マミヤに促されたラヴィは地面に這いつくばる客に近づくと、優しく頭を撫でた。

 ナデナデ。ナデナデ。


 「大丈夫? 痛いの痛いのとんでけ~」


 ――――!!!


 客は更にどよめいた。


 「何だって! ディアンナ様とラヴィーンちゃんのコンボ技だとぉ?」

 「買う! 俺も全部買うぞ!」

 「ラヴィーンちゃん超カワイイ! というかあの子未成年じゃないのか? 大丈夫か?」


 マミヤにも確認されたのだが、ラヴィは少女のようにしか見えないがあれでも22歳だからな。問題ない。

 

 「大丈夫、彼女は成人されてますから」


 「うおぉぉおっ! 合法ロリ最高!」


 抱き枕カバーだけでもこのサービスはついたのだが、最初の客が全商品を買ったので勘違いしたのだろう。

 この後の客も踏みつけとナデナデを目当てに全商品を購入。

 瞬く間に完売となった。くっ、殺せ!

 




 【今回の教訓】


 過去には事故も起きている。

 開場したからといって、

 走らない

 押さない

 を徹底して欲しい。



 あとこの話はフィクションだからな。全部買っても踏んでくれるサービスなんてねえからな!!


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