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マミヤ様がみてる


 【アンナ視点】



 涼しい。涼しいぞ。


 西館の建物内はひんやりと涼しかった。

 ホッと一息つく。

 そして私達の目に飛び込んできたのは魔導硝子から流れる美麗な映像。更に甲高くて甘ったるい女の声が耳を刺激する。


 「賑やかだな」


 「でしょう? 東館は混沌としていますが、西館は企業ブースがメインだから華やかですよ!」


 「そうだな、女性も多い」


 「ええ! 企業ブースといえばやはりコンパニオンさんのコスプレでしょう。我が社もそうですが、皆さんやはり力を入れていますね」


 カラフルな衣装に身を包んだ美しい女性達。

 おっ? エルフがいるのか? 耳の尖った金髪の女性がいる。


 「あれはエルフか?」


 「『ええっ!? エルフ様!?』のシルフィエールですね。ほ~、よく出来てますねあの耳。ほら、ピョコンピョコンと動いてる」


 「作り物か?」


 「最近は特殊メイクも身近になりましたからねぇ」


 ふむ、エルフではないようだ。確かに外でも亜人の姿は見なかった。異世界では人間しかいないのかもしれない。


 「おお……、すごい格好だな」


 赤いリボンを体に巻き付けただけのような女性がいる。肌色の下着をつけてはいるが、遠目だとかなり際どい格好に見える。くっ、殺せ!


 「おほっ! あれ『あさるとがーるず』のクリスマス限定スキン、『七星こねこ あたしをあ・げ・るバージョン』じゃないですか! 10万課金したのに出なかったんだよなぁあれ。うわっ! あっちには『茶器っ娘パラダイス』の利休七茶碗の長女、大黒が! 褐色むちむちたまらんすなあ……」


 マミヤはデレデレとだらしなく鼻の下を伸ばして彼女達を見ている。異世界ではあのような女性達が人気という事か。


 「ごほん、マミヤ殿」


 「ハッ! 失礼しました。つい私の中の熱盛が出てしまいました。いやあ、でもお二人が一番ですよ! アニメからそのまま出てきたみたいですもん! ほら、うちのブースのモニタ、丁度『おまひろ』のアニメ流れてますよ」


 マミヤの指差す先、頭上の高い位置に置かれた魔導硝子を見る。そこでは鮮やかな絵が動いていた。あれがアニメというものだろうか。


 「おねえさま、あれ私達?」


 そう、そこには私とラヴィ、そしてアレインが画面狭しと暴れていたのだ。


 「『おまひろ』も今では深川文庫のトップ作品ですからね! 担当として本当にうれしいですよ!」


 作品? 物語という事か? それにしては私達に似すぎている。


 「担当?」


 「ええ! 原作の高坂先生は私の担当でしてね。デビューの時から一緒に頑張っ……あの、ラヴィーンさん。帽子取ってもらっていいですか?」


 「ぼうし?」


 言われるがままにラヴィは猫耳のついた黒いニットの帽子を脱いだ。青い髪がさらりとなびく。


 「やっぱりそっくりだ! ラヴィーンさん高坂先生に瓜二つですよ! いや、ちょっと若いか。まだ高校生だった時の高坂先生を見てるみたいだ! いやあ懐かしいなあ、初めて会った時の事を思い出しますね」


 原作、という事は物語を最初に作った人間、という事だな? それが、ラヴィに瓜二つだと?


 「その人はどこにいる? 会わなければならん」


 なるほど、合点がいった。

 アレインに加えて探し人が増えたようだ。


 「高坂先生のファンなんですか? 先生なら東館の方でサークル出展しているはずですよ。完売次第こちらに挨拶に来るとは思いますが……」


 「ここにいれば会えるという事か?」


 「はい。『肥溜め』は人気サークルですから、昼前には完売するでしょう。二時間ほどで来るんじゃないですかね」


 二時間か、自分から行っても迷うのがオチだろう。待ってた方がいいな。幸いここは涼しくて待つのには最適だ。


 「了解した。マミヤ殿、すまないが水を貰えるだろうか?」


 「ラヴィも喉カラカラ~!」


 「はい。すぐに用意しましょう」


 うかつに動いても危険だと判断し、とりあえずここに腰を据える事にした。


 


 【今回の教訓】


 C94から東館でも企業ブースが出展されているようだ。

 常にコミケは変化し続けている。

 最新情報を細かくチェックし後悔のないように準備しよう。


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