本当に正しいのは・・・・
昔あるところに二人の王様がいました。
それぞれが国を治め、国のために尽くしていました。
しかし、二人の王様には欠点がありました。
東の国を治める王様は、「極悪」と世間から呼ばれていました。
王様は幼いころから「自分の思いのままに動く」という認識で召使たちをこき使っていました。
そして、自分の気に入らないことがあるとすぐにその者を処刑してしまうのです。
それは、国民でも王室の者でも同じような処分でした。
国民は、王様のことを嫌っていました。
しかし、それを言葉に出すことはできません。
もし、言葉に出せばすぐに処刑されてしまうからです。
国民は王家の者に常に監視されていました。
国民はそれに怯え、恐怖の中で生きていました。
しかし、王様はこのことが他国に知られてはまずいと思い、ある法を定めました。
それは、「何事があっても笑いを絶やさないこと」という法でした。
笑っていなければならない。その一言で国民は縛られました。
悲しくても辛くても、笑っていなければならない。
表向きには平和な国。裏向きには暗黒の国となりました。
西の国を治める王様は、「心清き人」と世間から呼ばれていました。
幼いころから両親に「人を思いやる心を持ちなさい」と教わっていたからです。
国民の目線から物事を判断し、国民の悩みも熱心に聞いていました。
国民といつも共にあろうとする王様の気持ちを国民たちは素直に受け取っていました。
しかし、王様には欠点がありました。
それは、「清き心」を追求し過ぎた結果のことでした。
王様の優しさは、時には鋭い棘になって国民の心を貫きました。
「盗人をも許せ」「殺生者をも許せ」「嘘つきをも許せ」
王様が掲げたのは、「許し」という精神でした。
しかし、この精神に国民は疑問を覚えたのです。
「罪を犯した者を簡単に許していいものか」
国民の疑問は膨らみ、王様は「清き人」から「お人好し」と噂されるようになりました。
両国の王様は、頭を抱えました。
「このままではいけない」
分かってはいるのに踏み出せない。
そんな時、両国の王様の前に一人の少年が現れました。
その少年は、何者かも告げずに突然王様にこう言い放ちます。
『世界を見てみなさい。そこにあなたたちが求める答えがある』
少年はそう告げると姿を消してしまいました。
両国の王様は、その意味がなんとなく分かった気がしたのです。
その後、両国の王様は世界各国の王様と会談を重ねました。
そこで見た世界の姿に王様は感動しました。
自分がやってきたことは、ある意味では正しさになりある意味では間違いになるのだと。
それから国の進むべき道は明るいものになりました。
東の国の王様は、国民の声を心から聞くようになりました。
そして、国のために最善な方法で治めていくと誓ったのです。
一方、西の国の王様は「善は善」「悪は悪」というはっきりとした心を持てるようになりました。
しかし、ただ悪を悪だけにせずそれをこれから、どのように善に変えていくのかを考えるようになりました。
王様の瞳には、しっかりとした未来が映っています。
あなたならどちらの国を治めますか。
もし、あなたがこのような状況になったら正しい判断ができるでしょうか。
自分の心をもう一度見つめ直してみて。