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才能無のゴーレム使い  作者: クロ
一年春学期
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第6話 亜人族の先生

今、体育館で教員紹介が行われている。

新入生に関係する教員は6名。クラスは3組あるため、それぞれの教員が二人ずつ担当に付くらしい。

男女比は3:3だった。ほとんどの教員は特徴らしいものが見受けられなかったので割愛。

その中で一際目立つ人物がいた。

名前は”ラウン”。

自己紹介を聞く限り、気さくな人物に感じた。

しかし、彼には大きな特徴が確認できた。頭の上には2つの耳が生え、体は筋肉質。極めつけは、腰辺りから白地に黒色の水玉模様が特徴的なしっぽが生えていることだった。

彼のような外見を持つ者を亜人族と呼び、この国では忌み嫌われている種族だ。本来なら見つけ次第国の騎士団に引き渡し、奴隷又は処刑が行われることになっている。

亜人族はそういった処罰に値する位危険な存在、って聞いたことがある。

それが、何故学院にいて教鞭を振るうことができるのか。

そう言った疑問が思い浮かぶのは理解できる。

できるのだが・・・どうしてこうなった!


「ドラッシャー」

壇上では亜人族であるラウンのかけ声とともに、新入生が次々と投げ飛ばされている。落ちる角度も計算されているのか、怪我人は今のところ見受けられない。

笑顔な先生に対し、生徒は恐怖で震え上がっている。

”ギャー”とか”許してー”とか”もう一本お願いします!”等

壇上からは今も悲鳴が聞こえてくる。地獄絵図と化していた。

最後の一人は悲鳴ではなかった気がするが気にしない。

というより、新入生の中で確実に変な生徒が混ざっている気がする。


目の前で繰り広げられる光景に正直うんざりしていた。


◇◇◇

話は少し遡り、クラス分け戦終了ラスト5秒前。

シルビアのコード1番と呼ばれるゴーレムを相手に”魔拳≪まけん≫”を繰り出し、相手を吹き飛ばすことに成功した。

相手の油断によるところが大きかったが、なんとかなって良かった。

この段階で制限時間は残り5秒となっていた。


残るは召喚者であるシルビアのみ。


そう確信し、ゴーレムから意識を外した直後。

急な寒気に襲われ、臨戦態勢に戻る。

吹き飛ばしたはずのゴーレムが俺の後ろに回り込んでいたのだ。

5mは吹き飛ばしたはずが、気を緩めた一瞬で背後に回るとか反則だろ!

反射的に裏拳を決めようと攻撃を行うが、体に激痛が走り、視界が暗くなった。

どうやら俺は気絶させられたらしい。


・・・


目を開けると席に座っていた。それも一番前の席である。場所は体育館だ。

今はどんな状況なのだろうか。周りの学生が何やら騒がしくしているところを見ると、休憩時間かそれに準ずる時間のようだ。

学院側の生徒は慌ただしく走り回っていた。


何かあったのだろうか?


状況が整理できないため、横に座っている生徒に聞こう。

横に顔を向けると見知った人物が船を漕いでいた。


「少しいい?」

「ん?あっ!やっと目が覚めたんだ。良かった」

昨日噴水広場で会った金髪が特徴の少年、シモンが伸びをしながら楽しそうに話しかけてくる。


”昨日はあれから寮に戻れたのか”とか、”クラス分け戦はどうだった”等の雑談を交えつつ、話を進める。

「それにしても、君がゴーレムに運ばれてきたときは驚いたよ」

「ゴーレムに運ばれてきた?そう言えば座っている場所が違っているけど、どんな基準で並び換えしているんだ?」

よくよく考えてみれば、同じ最前列でも始めに座っていた場所が左端だったのに対し、今は右端に近い位置に座っている。


「ほら、学院長が言ってたでしょ?クラス分け戦だって。今はクラス単位で座っているんだ。僕とアルベルトは一緒のクラスで2組だよ」

「へー。クラスってどうやって分けられたんだ?」

周囲に目を向けるとクラス単位で椅子が区切られているようだが、1クラス辺りの人数がバラバラみたいだ。

5人~200人ほどのクラスで分けられている。


明らかにおかしいだろ!


「んー。学院長が言うにはバッジの個数で分けているらしいよ」

思い出す仕草をするシモン。

クラス分けには、大きく分けて自身のバッジを守れた生徒と守れなかった生徒で区切ったらしい。

守れなかった生徒は総勢180人の大所帯となっていた。


というより、入学生のほとんどが一クラスに集約されていることがかなり異常だと思う。

次いで、自身のバッジを守り抜いた生徒ーこの教室には俺も含まれているようだーで計10名、残り5名は大量にバッジを奪い取ったもの達で構成されているようだ。


余談だけど、この休憩時間は一部の生徒がクラス分け戦の時に大規模な破壊行為を行ったため、その修復を行うための時間となっているそうだ。


「それにしても、俺はゴーレムに意識を刈り取られたはずだけどバッジは奪われてなかったんだな」

クラス分け戦を思い出しながら、独り言に近い感じで呟いたのだけど、シモンにも聞こえたらしく、話したそうにこちらを見ている。

「その件だけど、ゴーレムにも限界が来ていたらしくて、そのまま行動不能になったらしいよ。運が良かったね」


親指を立ててこちらに向けてくるシモン。

相変わらず元気だな。

更に会話を続けようと思った矢先、壇上に6人の教員が立つのが見えたのでそちらに視線を向ける。


「長らくお待たせしました。これより教員紹介を行いたいと思います」


何故か一人だけフードを被っており、顔だけが分かる状態の人物がいた。

その男性が他の教員より一歩前に出る。

辺りを見渡した教員がおもむろにフードを脱いだ。

脱いだということは隠された頭の部分が見えるわけなのだが・・・。


明らかに人族のそれとは異なっている。

頭の天辺に二つの物体がついている。変わった出来物だと現実逃避していた学生もいるようだが、紛れもなく耳である。


「あー、俺の名前はラウン。見た目通り亜人族だ。おまえ達の体育の時間で希望者に対し、指導を行っている。また、2組の担当でもあるのでよろしく」

フレンドリーに話を進めるラウン先生ではあるのだが、明らかに生徒達からは軽蔑の視線を向けられている。

いつ罵声が飛んできてもおかしくない状態だ。


「俺は人殺しの亜人族なぞに教えられたくないぞ」

思ったそばから、一部の男子生徒より批判的な意見が飛び出す。

その言葉をかわぎりに、不安の空気が会場を支配する。

「わ、私もあなたのような存在に教わりたくないですわ」

「お呼びじゃないんだ。亜人風情が!」

等数々の批判が出てくる。


気持ちは分からなくもないが、いくら何でもひどい話だと感じてしまう。

過去に多くの人族が亜人族に殺された歴史は、小さい頃から物語等で聞かされてきたが、それは過去の出来事だ。俺が生まれてから亜人族が人を殺したという話は一度も聞いたことがない。

等と考えていると、教壇から笑い声が響きわたる。

視線を向けるとラウン先生が腹を抱えて笑っていた。


「お前らの言い分は分かった。ならこうしよう、不満がある者は今すぐ前に出てこい。俺が相手になってやる。一人で挑んでもいいし、複数で挑んできてもいいぞ」

陽気に笑う先生に対し、新入学生の半数近くが前に出てくる。

数が多ければ勝てると踏んだのだろう。

中には野次馬根性やノリで乗り込んだ生徒もいるようだ。


もちろん、俺は参加していない。隣にはシモンも座っていることから参加しないのようだ。


その後、俺は地獄絵図を目の当たりにする。


◇◇◇

「フン!」

10分が経過した頃、総勢180名が床に転がされていた。起きあがる生徒はいないようだ。

ラウン先生が生徒を投げ飛ばす間に司会役の女性が他の教員紹介を行っていたが、周りが五月蠅すぎて聞き取れなかった。


最初にインパクトのある教員を持ってきたばかりに・・・ドンマイ他の教員達よ。


心の中でお悔やみを申し上げている間に、入学式が終わったようだ。これから各クラス毎に分かれて教室に向かうらしい。

「おらー二組。今から教室に向かうからはぐれないようにしろよ」

いつの間にか、列の一番後ろに立っていたラウン先生が俺達に声をかける。どうやら最初に俺達が出発するようだ。

隣に目を向けるとシモンが爆睡していた。


こいつはどんな状態でも寝ることが出きるのではなかろうか?


体育館の喧噪とした雰囲気で眠れていることに、思わず感心してしまう。

起こしてやろうと肩を叩いたのだが、反応がなかった。唯一反応したのが、”おんぶー”という寝言だったのは少し笑えた。


置いていくのも可哀想だったため、お望み通り背負って移動することにした。

周りからは奇異の目で見られたが、昨日で少し慣れた。


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