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才能無のゴーレム使い  作者: クロ
一年夏学期
36/37

第36話 レム平原④

今回はレム平原➂の続きです。

そしてクレサ視点です。

熊の魔獣に腕を振り下ろされる瞬間、

「危ない」

言葉と共に、私の体は横からの力によって吹き飛ばされました。

その後、すぐに轟音が鳴り響きました。


何が起きたのか考えたくなかったけど、私はゆっくりと吹き飛ばされる前まで自分が立っていた場所に視線を向けました。

「あぁ」

惨状を確認した私はかなり動揺してしまいました。

だって

「グリル・・・君」

さっきまで私と元気に話していたグリル君が頭から血を流して倒れていたのだから。

そして、その光景が()()()の光景とひどく酷似していたのも一つの原因だったのかもしれません。


(落ち着け、落ち着け。私。今ならまだ助かる。あの時と同じことをしてはいけないんです)

気持ちを落ち着け、慌てて、彼に駆け寄ろうとするも、

「GuOooon」

熊の魔獣が私とグリル君の間に入り、近づくことができません。

それに魔獣の次の標的に私に狙いを定めたみたいです。

獰猛な瞳からは、”逃がさない”という意思が見て取れます。

その瞳に恐怖を感じ、後ずさってしまいました。


グリル君の様子を見る限り意識を失っているように見えます。それにあの出血はすぐに手当てをしないと間に合わなくなります。

先生なら何とかしてくれるのでは?

離れた場所にいるラウン先生に僅か目を向けます。

まだ、複数の魔獣と交戦中で、こちらに向かうのはきつそうです。


やっぱり、自分で対応しないといけないみたいです。

敵の標的は私に来ています。なら、私がするべきことは。


瞬時にこれからのプランをまとめ、行動に移すことにしました。

服のポケットから小瓶を一つ取り出します。

まさか、あの変態な先輩のプレゼントを使うことになるとは思いませんでした。

小瓶に入っているのは”迷い花”。人族以外の生物を花びらをすり潰した場所から半径3m程度入れなくする代物です。

魔獣に効果があるのかは甚だ疑問だけど、迷い花の花びらをちぎり、指ですり潰します。

お願いします。効果が出てください。

祈る様に私は花びらをすり潰しました。

すると、効果が出たのか、魔獣は私達がいる空間から徐々に出て行ってくれました。

そして、3m程離れた場所で、キョロキョロと辺りを見渡しています。


どうやらあの魔物が立っている場所までが効果範囲見たいです。

効果範囲を確認した私は急いでグリル君に近づきます。

早く治療をしないと。

急いでリュックから傷薬と包帯を取り出します。

そして、傷口に薬を塗り込んでいき、包帯でしっかりと固定していきます。

どの程度、時間が立ったのか。初期治療が間に合い、グリル君の寝息が安定してきました。

「あぁ、そこ。そこがいいぃ!!!!!」

寝言で可笑しなことを言っていて、もう少し、魔獣に痛めつけられてもいいのではないかと考えてしまったのは内緒の話です。

後は安静にしていれば大丈夫。

グリル君の様子をしっかりと確認した後、ゆっくりと立ち上がります。


よし、これで、私のプランの半分が完了しました。

次は・・・


「こ、こっち、です!」

足元に転がる石を手早く拾い上げ、魔獣に投げつけます。

「GYAO?」

いきなり現れたこちらの行動が理解できなかったように素っ頓狂な声を上げる魔獣。

しかし、獲物の存在である者に石を投げ付けられたことにプライドを気付つけられた魔獣は怒りの咆哮を上げ、こちらに向かってきました。

魔獣の行動を確認した私は、急いで後ろに向き直り、その場から駆け出します。


私が考えたプランは簡単で、グリル君から一度、魔獣を引き離し、魔獣を巻いた後に再度彼の元に戻る。

たったこれだけの内容です。

迷い花の効果がいつまで持つのか分かりませんが、長時間効果が持続するとは思えません。そのため、効果が切れた時に、グリル君が犠牲になるのは辛いです。だからこうして私が彼から魔獣を引き離します。

これが現状できる精一杯。正直、体力に自信のない私がこのプランを成功させるのはほぼ不可能だと思います。

でも、ラウン先生が戦っている場所までたどり着ければ勝算はかなり上がります。


先生のいる場所まで、坂道を下ってざっと、200mです。

後ろから、地響きが聞こえてきました。


恐らく私を叩き潰そうとしたのでしょう。


走りながら、後ろの現状を推測します。魔獣も攻撃を行ったので、一瞬だけでも反動で動けなくなっていることでしょう。これで、少し時間が稼げます。

後ろを振り返り確認できればいいのですが、振り返るだけでも、時間のロスに繋がります。なので、私は前を向いて走り続けなければなりません。


「はぁっ、はぁっ」

それから、私は必死に走り続けました。

先生の戦う場所へ向かうため、グリル君を救うために。

僅か200m走り切るだけなのに、とても長い距離を走っている気がします。

息は切れ切れ、脚はとても重たい。

魔獣は今、どの辺りに立っているのでしょうか。ちゃんと付いてきているのでしょうか。

後ろを振り返れないのがとてももどかしいです。


僅か数メートル先で、土煙が立ち上がるのが見え、そこに一人の亜人が複数の魔獣と戦っている所を捉えることができました。

(ここまでくれば、私の声が届きます)


「ラウン、先生。助け、て!!!」

力の限り叫びました。恐らくこれまで出したどの声よりも大きいものだったかもしれません。

声に気付いてくれたのか、先生はこちらに向き直り、そして、目を大きく見開いたような気がしました。

「早くその場から逃げろ!」

私の数倍もの音量で先生の焦ったような声が聞こえてきました。

そして、後ろに何かが来ているのを知らしめるように、私の方向に指を向けています。

もしかして、あいつはもう私の後ろに来ている・・・


後ろを振り返った私の目の前には血走った眼の魔獣がすごい勢いで、こちらに突進してきています。

あぁ、これはさすがに避けれないです。

身体能力どうこうよりも、体力がもう持ちません。

腰が抜け、その場で崩れ落ちてしまいました。

私もおばあちゃんのように死んでしまうんですね。残念です。本当はもっとおばあちゃんのように多くの人を助けられるようになりたかったのに。

「たくさんの友達を作りなさい。そしていっぱい遊んで、学びなさい」

おばあちゃんが死ぬ間際で伝えてくれた言葉。

言葉の通り、ゴーレム育成学院に入学ました。けれど、周りとうまく話せずに浮きましたし、良いことは一つもありませんでした。

友達と呼べる人も一人も、できませんでしたし。

でも、何故か。”友達”と考えた時、一人の男の子の顔が浮かびました。

私と同じように、周りから浮いてて、ゴーレム育成学院に入ったにも関わらず、ゴーレム召喚ができない男の子。普段私達とは別の場所で勉学を行っている彼は知っているのか分かりませんが、他の生徒から彼は”才能なしのゴーレム使い”と呼ばれています。

ゴーレムを扱えない無能、この学園の汚点といった話をよく耳にします。

それでも彼は、その呼び名とは裏腹に。今でも、ゴーレムさんを召喚できるようにとても危険な訓練をしているみたいです。

健気に、そして前向きに。

私には分かりませんが、何かの目標に向かって一生懸命に生きていることだけは分かります。

そういえば、土産話を持って帰るんでしたっけ?

私、頑張ったんですよ。負傷者の手当てや、魔獣から逃げ回ったり。

今回の校外学習は色んなことがありましたよって。

あぁ、彼のことを考えているともっと話してみたかった、そう思わずにはいられません。

「アルベルト、君にも、う一度会、いたい、です」

目の前の死を最後まで見ることが出来ず、目を瞑ってしまいました。


ドゴーン


暗くなった視界の後から、凄まじい効果音が流れてきたので、思わず目を開けてしまいました。

すると、目の前にいるはずだった魔獣が姿を消し、私が、今最も会いたかった人物が立っていました。

安心すると、目の前の景色がグニャリと歪んできました。

「えっ!何で泣いているの。クレサさん?」

「い、いきなり。アル、ベルト、君が現れ、るからで、すよ」

「えぇ~」


すごい、微妙そうな顔の彼。

本来ここにいない彼が現れたこと。そして、その彼が、颯爽と私の危機から救い出してくれたこと。

私は限界だったんでしょう。彼にしがみつき思いっきり泣いてしまいました。



「ちょっ、クレサさん。まだ、魔獣は倒しきれてないんだけどーー!」

彼の声が聞こえましたが、もう何が起きたのか、私には一切分かりませんでした。

グリル完全に放置プレイ。

クレサたちがいる場面外で、隠れて楽しんでいる模様・・・

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