第34話 ソニア
もうすぐ1月も終わりますが、今更ながら
あけましておめでとうございます!
最近は仕事の関係上、投稿がすっっごく遅くなっていますが、まだまだ話は進めていきますので、
読者の皆様
今年もよろしくお願いいたします
全てを諦めた時、
「その声を待っていました」
女性の声が耳に届いたのは。
男と俺の間に突如として現れた女性。
後ろ姿でしか確認できないがこれまで二度に渡り出会った女性に似ているような気がした。
「誰だ、俺っちの行動を邪魔する奴は」
いきなり現れた女性の姿に呆気を取られていると、男の至って冷静な声音が耳に届いた。
女性の出現でこれまで余裕を伺えていた男が警戒心を露わにしたようだ。
「誰と言われましても・・・。そうですね、少なくとも現状はあなたの敵でしょうか」
俺自身、何が起こっているのか分かっておらず、どこか第三者的にこの場を眺めてしまっている。
(女性の姿、それに声。やっぱり俺はこの人を知っている・・・)
「ほぉ、敵か。俺っちも捨てたもんじゃないな。こんな美人な女性に告白をされるなんて」
きゃはは。と笑い声をあげている。
だけど、目が笑っていない。今も油断なく実力が分からない女性を値踏みしているようだった。
「だけどな~、その坊主を始末してからでいいか?仕事柄、俺っちの恩恵を見たものは始末しているんだ」
その後で、お前も始末するから待っててくれ
と女性に告げている。
「ダ、ダメだ、逃げて」
もちろん恐怖で声がしっかりと出ていない。
男の言葉を聞いた瞬間、これまで第三者的に眺めていたが一気に現実に引き戻される。それと同時に、先ほどまで消えていた恐怖心があふれ出してきた。やばい、涙も出てきて視界が歪んできた。
嫌だ、死にたくない!・・・でも俺が逃げればこの女性はどうなる。
分からない、どうすればいい。どうすれば・・・
「アルベルト、あなたは本当に泣き虫ですね。一人で抱え込み、何でも解決しようとする。恐らく過去に色々あったのでしょう」
こんがらがった思考、それに涙で前がほとんど見えないけど、女性の優しくどこか嬉しそうな声ははっきりと聞こえた。
「でも、あなたは優しい。とても優しく、まっすぐに育ってくれました。そのことを私は嬉しく思います。でも、今は頼ってくれてもいいのですよ」
いつの間にかこちらに振り向いていた女性が俺の涙を拭きとってくれる。一瞬だけど、視界がクリアになり辺りが見渡せるようになった時、一番最初に視界に入ったのは女性の優しい笑顔だった。
直ぐに涙が込み上げて、前が見えなくなってしまったけれども。
「俺っちのことを忘れるんじゃねぇ」
恐怖感が薄れかけた時、男の怒号が響き渡る。
蚊帳の外だったのが、気に食わなかったらしい。視界が悪いため、男の行動は分からないが、何かしらの攻撃を仕掛けてきているようだ。
「やばい、ソニアさん早く逃げて!」
俺は素早く避難を促すと、女性は僅かに息をのんだような気がした。
そして、一瞬の間があり
「外野は引っ込んでなさい!”アイギス”」
ぐはっ!近くで男のうめき声が聞こえた。
「アルベルト。もう一度さっきの言葉を言ってください」
「今はそんなことを言っている場合じゃないよ」
え?男が攻撃にきているはずなんだけど・・・
俺は慌てて、涙を拭きとり男を見つける。
まるでそこに壁でもあるかのように男が拳を空気を叩きつけるという異様な光景が目に入った。
(あの人何をしているんだろうか)
これが第一の感想だった。
「さぁ~」
そして第二の感想が目の前の女性だ。
ぱぁ~と花開くような笑みを浮かべて俺の肩を掴んできている。
(少し怖いんだけど・・・。え~と、)
「早く逃げて?」
「違います!そんなお約束はいりません。もうひとつ前に言ったでしょう。ほら、思い出してください」
涙目の女性が肩を浮かんだ状態で前後に思いっきり揺らされる。
うっぷ、気持ち悪くなってきた。
「落ち着いてください、ソニアさん!」
ピタッと揺れが収まると、今度は女性がプルプルと震え出した。
目からも大粒の涙を浮かべている。
「お、覚えて下さっていたのですね」
涙を拭き取りながら、凄く嬉しそうにしている。
やっぱりソニアで間違ってなかったんだ。
というより揺らされたせいで少し気持ち悪い。
「当たり前です。俺、いや自分が魔獣に殺されそうになった際に助けて下さった人を忘れるわけないじゃないですか。それに、」
森でウルフルズと戦った時に渡してくれた力。あれは何だったんだろうか?
問いを投げ掛けようとした時、
パリーンという音が辺りに響き渡った。
「はぁ~。やはり、あの程度の防御壁だとすぐに破られてしまいますね」
ソニアも涙を引っ込めて、冷静に男を眺めていた。
「俺っちをあんな場所に閉じ込めるとはいい度胸だな、おい」
男は完全に怒っているみたいなんだけど。
「アルベルト。あなたが私に聞きたいことは多々あると思いますが、少しお待ちください。あの騒いでいる男を始末して来ますので」
にっこりと微笑み、ソニアは男に近付いて行った。
まるでこれから買い物に出かけるような軽い雰囲気を醸し出して。
えっ?
会話についていけなかったんだけど、始末してくるって言ってなかったか?
今、俺達を殺そうとしている男が近くにいることを感じさせない雰囲気だったから、反応が遅れてしまった。
というより、ゴーレムの恩恵を持った人間相手に丸腰は危険だ。引き留めないと!
「ソニアさん逃げて。人族だと今のあいつには勝てない」
俺は慌てて、ソニアを追いかけた。




