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才能無のゴーレム使い  作者: クロ
一年夏学期
33/37

第33話 恐怖心

ぷっつん

俺の中で切れてはいけない何かが切れた。

意識はある。でも、身体が勝手に動く、そんな感覚が全身を支配する。


魔鎧、魔脚を発動。

全身に魔力を巡らし、物理的攻撃を緩和するように体をコーティングする。また、速度を上げるべく脚に魔力を込める。


男はまた両親の墓に置く足に力を入れている。

俺は迷わず男の頭に飛び蹴りを入れる。

ガン!

僅かな間、墓を見ていた男は見事に俺の蹴りをもらい、姿勢がよろける。

今がチャンス

すぐさま、男の背後に着地し、回し蹴りを行った。

が、攻撃が通ることは無かった。

男の左手できっちりと掴まれていたからだ。


振り返った男は顔をニターと歪ませ、俺のことを見下し、両親の墓を壊す力を緩めることが無かった。

まるで俺が攻撃するように仕向けるように誘導するように。



「殺してやる」

普段では絶対に出すことが無い言葉。しかし、この瞬間だけはこのセリフが自然に出てきた。

身体は勝手に動く。男も墓から足を上げ、気味の悪い笑みを浮かべていた。

そこから先は、俺も男も殴りあいだった。

男が一撃を加えるなら、俺も一撃を繰り出す。

そんな現状が数分近く続いた。


身体に意識が追い付いてきた頃。

「だっは~!」

男の声だ。実に楽しそうに笑ってやがる。

「ここまで打ち合ったのは久しぶりだ。これなら俺の本気を少し見せてやってもいいな。来いっ、カラス」

一羽の真っ黒いカラスが男の肩にとまる。

「坊主。いいものを見せてやるよ。ゴーレム使いの本気ってやつを。「恩恵発動、気配遮断」」

肩のカラスが、衣類に溶け込んだ。

(何をしたんだ?)

恩恵を発動したであろう男は俺の前で構えて一向に動こうとしない。

静かにその場で構えている、いや・・・それどころか目まで瞑っている。

これまで見たことがある恩恵は学院の模擬戦でディアス先輩が発動したアクセルだけだったけど、あの圧倒的な移動速度は驚異的だった。

今回、男が発動した恩恵・・・気配遮断は意味だけを考えると俺が、相手の存在を認識しずらくなるってことか。

(考えても仕方ないか)


まずは一撃。話はそれからだ。

防御は無視だ。速さ優先、魔鎧の魔力を魔脚に移す。

「魔脚発動、40%」

現段階で身体の一ヶ所にため込んでおける魔力量の限界一歩手前まで魔力を流し込む。

よし、行くぞ!

地面を蹴り、男との距離を詰める。

速さだけで言うと、ディアス先輩の”アクセル”よりも遅いが、それでも人族が反応できる速度じゃない。

拳を握り、相手に殴りかかるが男は目を瞑ったまま、俺の攻撃を待ち受けている。

気味の悪さは感じるが、今更攻撃を止めることは出来ない。

俺はそのまま、拳を振りぬいた。


・・・がはっ!

次の瞬間

地面を仰ぎ見ていたのは俺だった。

「何が起きた?」

顔面に猛烈な痛みが走る。

何で殴った俺が地面に倒れているんだ。それに顔面に走る痛さ。

そうだ、やつは!

男が立っていた場所に視線を移すと、姿が完全に消えていた。

戦闘中に敵を見失うなんて、一番やってはいけないことだ。

あいつはどこに行った?

その場から急いで立ち上がり、周囲を見渡すが男の姿を完全見失ってしまった。


「違うんだな~」

「ぐふっ」

背後から男の声が聞こえ、振り返ると鳩尾に衝撃が走る。思わずえずいてしまう。

更に背中に一撃を許してしまった。

俺は背後に向け、一撃を放つ。

結果は空振り。相手が見えなければ当たり前だが。

「はい、残念。俺っちを見つけるのは不可能だぜ」

「がはっ」

今度は顔面を殴られる。

おかしい、背後なら分かるが目の前の攻撃に対処できないのはどういうことだ。

気配が分からなくなるだけでこれほど、差が出るものなのか。

分からない。攻撃が当たる気がしない。

考えている間にも、男の攻撃は続く。

俺は強烈な一撃をもらわないため、身体を丸め、顔を腕でガードする。

急所には魔鎧を纏わす。

「もっとだ、もっと俺っちを楽しませろよ!」

見えないところからの攻撃がこれほど辛いとは思わなかった。

くそ、意識が飛びそうだ。

さっきから男の声だけはどこからともなく聞こえてくる。

胸糞悪い声だ。

・・・声?

何で声が聞こえるんだ?

もしかして

丸まった体を戻し、目を閉じ自然体で相手の動きを待つ。

「どうした~、もしかして、諦めちまったか?」

男は心底がっかりした声音で俺に話しかけてくる。

「それなら残念だ」

男の声音が明らかに変わった。次の一撃は確実に殺しに来る。

「な・・・に」

俺は自身の核心を元にして、背後に向かい拳を叩きつけた。

グニッという感触と共に男の驚愕に満ちた声が聞こえてきた。

そして、俺は男の姿をはっきりとこの目で確認することができるようになった。


「俺っちの姿は見えなかったはず。なのに何故攻撃を当てることが出来たんだ?姿が見えていたとかか」

俺と少し距離を取った男が疑問を投げかけてくる。

(何で、攻撃を食らってあんなに平気そうな表情なんだよ。もっと苦しめよ)

男に対して、かなり不満はあるか割りきることにした。

攻撃を当てられた理由に関しては、正直応える必要は無いと考えたが、体力を回復させるために少しでも時間が欲しいため、答えてやるか。減るもんじゃないし。


「姿は見えていなかった。正直対処の使用が無いとさえ思えたよ。でも、戦闘中にお前が一方的に声を掛けてくれたおかげで分かったんだ」

「ほぅ、何が分かったんだ」

「お前の恩恵”気配遮断”は嘘だ。本当の恩恵は俺の意識から己を隠すことができるものだろう?」

腕を組み俺の考えを楽しそうに聞く男は正解だとばかりに拍手を送ってくる。


「いいな~坊主、正解だ。俺っちの恩恵は”認識阻害”。その場所には存在するが相手からは認識されない。だから、今の攻撃が当てられたのは正直驚いている」

きゃははと笑う男に対し、じゃあ、認識を阻害するために不必要になる会話を何故行ったのかを尋ねると、そっちの方がスリルがあるからと真面目に返されてしまった。


「しかし、まぁ、なんだ。残念だが遊びは終わりだ。俺っちの恩恵を見破ってしまったのなら殺さないといけない。今からは本気でお前を殺しに行くからそのつもりでな」

その言葉を最後に男の姿は完全に消えてしまった。さっきまでのように会話を行わず周囲に完全に溶け込みやがった。

でも、男の殺気が周囲に満ちている。確実に人を殺す・・・そんなプレッシャーが体中を深く縛り付けてくる。

こんな感情知らない。怖い。

魔獣の死闘の時でもこんな感情を持ったことはないのに。

思考が混乱してきた。しばらく正常には戻らないだろう。

そんな状態でも男は待ってくれない。腹部、後頭部、顔面、背中とそれぞれに重い一撃を繰り出してきている。

ヤバいかも、段々意識が遠のいていく感覚が分かる。

情けない、親の墓を荒らされ、頭に血が上って相手に攻撃を行ったはずが、逆に俺が殺されそうになっている。

戦闘経験が圧倒的に違いすぎる。

こいつには喧嘩を売ってはいけなかったんだ。

後悔

そして、何より死にたくないという思いがだんだんと込みあがってくる。

心が折れそうだ。

せっかく仲良くできる友達と会えたのに。せっかく母さんの育った学院に入れたのに。なにより、母さん達を殺したあの悲劇の魔獣を探さないといけないのに。

全てが台無しになってしまった。

男の姿は見えないが、俺の命はもう直ぐ刈り取られるだろう・・・

俺は恐怖心なのか、はたまた、後悔からなのか。涙を流し、一言。

「誰か助けて」

この一言しか、言葉を出すことしかできなかった。

「残念だがその願いは叶えられない。ばいばい」

男の声が聞こえ、僅かに相手の攻撃音が聞こえてきた。その声は魂を狩る死神のように。


死にたくない

俺は恐怖で目を瞑ることが出来ず、ただただスローモーションになっている光景を見ることしかできなかった。だが見えているのに反応ができない。

これが走馬灯ってやつなのかな?

全てを諦めた時、

「その声を待っていました」

女性の声が耳に届いたのは。

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