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才能無のゴーレム使い  作者: クロ
一年春学期
3/37

第3話 学生寮の先輩

シモンと分かれた俺は、一本道を進んでいる。

しばらく道なりに進むと白い建物が見えてくる。


校舎だろうか?

建物は10階建てで白を基調に、横に200mはある。

また、同等の棟が4つほど立ち並んでいる。

造りは横長の長方形であるため、そこまで驚かないのだが、兎に角大きいのだ。


確か全校生徒は何人だったか・・・そうだ、1000人だ。

いけないいけない。学校の広さに思わず全校生徒の人数を数えてしまった。

他の生徒も同様で、校舎を見上げながらポカーンとしている。


しばらくして、正気を取り戻した生徒が次々に校舎を後にする。

今日は校舎に入る人はいない。

というか、入れない。

玄関口に”先生及び総合順位1桁以外は立ち入り禁止”と張り紙がされていたからだ。

不思議に思うこともあるが、何か特別なことでも行っているのだろうと考え直す。


ちなみに、総合順位は全校生徒内の順位であり、決め方としては筆記・実技・課外活動によって判定されている。

順位が高いほど、卒業後の進路が広がるのだそうだ。

前にアリアナおばさんが言っていた言葉を思い返すと、確かそんなことを言っていた気がする。


校舎を通り過ぎると、小高い山で上り坂になっていた。

傾斜を上っていくと、学生寮が見えてくる。

十階建ての建物が二つ並んでおり、五階と十階を渡り廊下で結んでいる。


俺は制服のポケットに詰めていた、紙を取り出す。

紙には大きく”S-601”と書かれている。

Sというのは、建物の番号だ。

北側にある建物がN。

南側の建物がSになっている。

俺は南側の建物に部屋があるようだ。


多くの学生が、自身の部屋番号が記載された紙を手に寮内に入っていく中で、不審な動きをする学生がいた。

この街では珍しく俺と同じ黒髪の男子生徒だ。背も他の学生と比べるとやや高い感じがしたが、いたって真面目そうな学生である。

その学生は寮の中に入らずに、キョロキョロと辺りを見渡しているのだ。初めは友達でも探しているのかとも思ったのだが、どうも違うようだ。


だって、女生徒が来る度に目が血走り、鼻の下を伸ばしていたからだ。

普通にしていればいいものを・・・もはや変態である。

案の定、女生徒が視線に気付き、男から一定距離を取りつつ寮内に駆け込んでしまう。


うん、あれ(男子生徒)には関わりたくない。

視界に入れないように玄関に入るべく、変態君の隣を通り過ぎた。


玄関に入ると、大きなロビーが目に入った。ソファーや机、舞台にグランドピアノまで置いてあった。

この場所は、全校生徒の休憩スペースになるのだろう。

何か、寮内で祭りとかあるのだろうか?


視線を右にずらすと、エレベータが五個設置されていた。

その横には階段も備え付けられているのだが、さすがに十階まで上るのは疲れるのだろう。


俺も六階まで上るのは辛いので、エレベーターに乗ることにした。

十人程度並んでいたため、少しの間エレベーターを待つ。

チン

音が鳴った場所にエレベーターが着いたため、乗り込んだ。


エレベーターで六階に止まるようにボタンを押す。

ボタンを押す際に確認したところ、屋上や地下三階まで階があった。

地下には何があるのだろう?

などと考えている間に六階に到着した。


一階以降の階では両開きで扉が開閉しているので、前方の扉から降りる。

部屋番号は601。

エレベーターを出て一番最初の部屋が615となっていた。

振り返るとエレベーター横に構内図が張ってあった。

確認したところ、エレベーターを挟み601~610番の筋と611~620の筋で分かれてることが分かった。

なので、エレベーターを降りる際に逆方向に出てしまったらしい。

時間もあるため、六階を一通り眺めながら歩くことにした。

入寮日ということもあり、各部屋から談笑する声が聞こえてきた。


フロアの端には長方形のテーブルを挟む形で、二人掛けのソファーが向かい合って置かれている。

このスペースも休憩所として利用できるのだろうが、今は誰もいなかった。


休憩スペースを過ぎると、

”S-601”と書かれた部屋を見つける。

今日からの学院生活で拠点となる部屋だ。

相部屋であるため少し緊張するが、今から気にしても仕方がない。

扉の取っ手に手をかける。


「よしっ!」

気合いを入れ直し、勢いよく扉を引いた。


・・・あれ?

2、3回引っ張ってみたが開かなかった。

たまたま、隣から出てきた学生に不信がられた。


あっ、引くんじゃなくて、押すやつね。

先ほどの気合いが消え去り、ただただ恥ずかしさがこみ上げてくる。

引いてみると、すんなりと扉が開く。

鍵はかけていなかったようだ。


「こんにちは!今日からお世話になるアルベルトです。」

挨拶を行いつつ、部屋の中に入る。

部屋には自炊ができるように、キッチンが備え付けられていた。

キッチンを過ぎると、寝室兼リビングがあり、二段ベッドが置かれていた。

奥にはベランダがあり、校舎を眺めることができた。


部屋は綺麗でいい感じだが、肝心の同居人がいない。

トイレにでもいるのかと確かめたのだが、いなかった。

どこかに出かけているのだろうか?


先に挨拶をしたかったのだが仕方ない。

ベッドの一角に段ボールが積まれていたため、先に荷ほどきを済ませる。

といっても、着替えや生活用品、学院の授業で必要になるものしか持ってきていないので、1時間程で終わってしまった。


ベッドに向かいあう状態で、二つの勉強机が並んでいる。

片方は俺の机に当たるだろう、荷物が整理されている。

もう一つの机には教科書と写真立てが置かれていた。

その写真には男の人の髪を豪快にかき回す赤髪の女性が写っている。

写真に写る女性は俺がよく知っている人物だった。


「リーナ姉ちゃん?」


アリアナおばさんの長女で、俺の両親が亡くなってから実の弟のように可愛がってくれた人物である。

今は学院を卒業し、国の組織であるゴーレム魔術団に入隊している。

何故姉ちゃんが一緒に写っているのだろうか?


そういえばこれまで、姉ちゃんから学院の話を聞いたことがない。

もしかしたら、俺に教えたくない存在だったとか?

例えば恋人?


・・・・・うん、ないな。


冷静に考えると写真の組み合わせはあり得ない。

だって、写真で姉ちゃんにいじられている男子生徒は先ほど寮前に立っていた変態君だからだ。

恐らく姉ちゃんのおもちゃ代わりに利用されているのだろう。

かわいそうに。


少し、写真の人物に同情を覚えていると、


ギーーー


扉が開く音が聞こえてきた。

音の方向に視線を向けると案の定写真の人物である変態君、もとい寮の同居人が立っていた。


「黒髪、黒目。この街では珍しい特徴だな。君がアルベルトか。」


変態君は俺の外観を見て、判断を下したようだ。

確かに、この街では黒髪黒目はめったに見ない。そんため、昔から周囲の子供達からいじめられたっけ。


「はい、僕がアルベルトです。クレス先輩。」

この部屋で二年間一緒に過ごすことになる同居人に挨拶を行った。



ゴーレム育成学校に建設されている寮には一つのルールが決められている。

一年生は三年生と、二年生は四年生と同じ部屋で暮らす制度。通称”見習い制度”が設けられている。

何故、このような制度があるのか。

理由はいくつか挙げられるが、学院生活で後輩は先輩の活躍に触発されやすい環境を造ることで、向上心を促すことを目的にしているそうだ。

逆に先輩は後輩にみっともない姿を見せないように普段から公私において正しい生活を行うことを心がけるようになるそうだ。


「リーナさんの弟だと聞いていたからどれだけおそ、活発な人物が来るのか気にしていたけど、なんて言うか普通だな」

お互いに自己紹介を済ませ、他愛もない話をしている。

今は、共通の話題であるリーナ姉ちゃんに関することで盛り上がっていた。


というより、恐ろしいって言い掛けていなかったか?

まぁ、姉ちゃんの性格を知っている身としては反論できないのだが。


「姉ちゃんが特別なだけです。僕はあの人ほど活発にはなれないですよ。」

「確かにリーナさんだからな~」

先輩の顔が少し青ざめている気がする。足もガクガク震えているが見なかったことにしよう。


ちょうどいい機会だし、聞いてみてもいいかな。

「先輩。姉ちゃんは学院ではどんな生徒だったのですか?」

姉ちゃんは学院での話を家では全くしなかった。そのため、俺は学院での姉ちゃんを知らない。


「え?リーナさんか。そうだな。全て話すのは疲れるから、一つだけ。彼女は学院で”狂戦士”という二つ名を付けられていた。」

リーナ本人に関してはもう少し話が進んでからの登場を考えています。

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