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才能無のゴーレム使い  作者: クロ
一年夏学期
24/37

第24話 学院の保険室にて

目が覚め、最初に目に入ったのは白い天井だった。

(どこだ、ここは?)

自室の天井でないのはすぐに分かった。そして、顔だけを動かして部屋の様子を見てすぐに理解する。

ベッドが5つ並んでおり、そのうちの一つを俺が利用している。壁際にはガラス窓を利用した棚が置かれており、多くの小瓶が並べられていた。入り口は一つだけで、その近くに常駐している者が座ることができる机と椅子が置かれていた。

「そうか、学院の保健室か」

俺は学院に帰ってこれたみたいだ。意識を失っていたため、他の誰かがここまで運んでくれたのだろう。

俺がこの場所にいる。つまり、他の奴らも無事に学院に戻ってこれたみたいだな。

「痛っ!」

身体を起こそうと力を入れると全身に激痛が襲い掛かる。

その痛みを無視して、身体を起こす。どうしても確認したいことがあったためだ。

被っていた布団を横にずらし、それを確認する。

昨日無理な状態のまま、長時間魔脚を酷使していた足には何十にも包帯が巻き付けられている。白い包帯の所々が青紫に滲んでいることから相当ひどい状態だったことを伺わせる。

(やっぱり師匠の言いつけは守るべきだったな)

昨日の戦闘を思い出し、自身の命があったことが未だに信じられなでいる。まぁ、助かったのは喜ばしいことだけども。

信じられないことと言えば、ソニアさんの件だ。あの人が誰なのか、また、あの人が貸してくれた力は何だったのか。分からないことだらけだ。

それに・・・

「狼型の魔獣が使っていた技と同じものだったよな」

脳内で浮かんだ”ブレス発動”というメッセージ。あれは何だったのだろうか。

分からない問いに対し、もちろん誰一人応えるものはいなかった。

うっぷ。

メッセージ直後に起きた気持ち悪さを思い出し、吐き気がしてきた。

ガラガラガラ

解消されない悩みごとと吐き気を催していると扉から一人の人物が入ってきた。


「なんじゃ。思いのほか元気にしとるではないか」

「えぇ、おかげさまで」

入って来た人物に対し、軽く挨拶を交わしておく。

「なんじゃ、そっけない対応じゃの~」

「それは学院長が、何かを企んでいる声を出しているからじゃないですか」

声の主である学院長ことロンドベルは白髭を擦りながらホッホッホッと笑っている。

「それで何しに来たんですか?」

どうせ何かを言われるのなら、早く済ませておきたい。

「なんじゃ、学院長が傷ついた生徒の様子を見に来ただけなんじゃがな。お主は儂が何かを調べに来たと思っておるのか?」

「ええ、もちろん」

当たり前だろ。このじいさんが見舞いだけで終わるはずがない。

「そこまで信頼してもらえるとは嬉しいの~」

(何でそんなに嬉しそうなんだよ)

じいさんは部屋に置かれてある丸椅子に腰かける。

「お主が。アルのケガの様子が気がかりじゃったのはもちろんあるが、立場上その話よりも確認しないといけない件があるんじゃ」

悔しそうな表情を浮かべたじいさんが、気を引き締め、真剣な声音を見せる。

「儂が聞きたいのは、魔獣についてじゃ」

やはり来たか。魔獣が滅多に出てこないベーマの森で魔獣が出たんだ。国を守るゴーレムマイスターであるじいさんにすれば聞いておかないといけないことだろう。

「シルビア等から、話はある程度聞いておるが、実際戦闘を行ったお主から話を聞きたいと思っての」

「グリル!グリルは無事でしたか!」

シルビアの名前が出た辺りで、一番気にしていた人物達の名前が上がったため、思わずベッドから立ち上がり、じいさんに詰め寄るところだった。

「お、おぅ。無事じゃったぞ。グリルも意識を失っていただけで直ぐに目を覚ましよったわ。さすがに痛みで苦しんで・・・いや、悶えておったぞ。全員お主のことが心配で保健室に残ると言っておったが、儂が無理やり授業を受けてさせておる」

良かった。全員無事なんだな。

グリルが悶えていた辺りが、変態のあいつらしいと思ってしまったのは内緒だ。

持ち上げた腰をベッドに戻し安堵の息を漏らす。

「お主が他人の心配をするとは珍しいの~」

何やらよくない顔になるじいさんに面倒だなと思いつつ話を元に戻す。

「それについてはどうでもいいでしょう。それよりも魔獣についてでしたね。」

俺が真顔で話を戻すとつまらなさそうに話を聞く体制を取り始めるじいさん。

自分が聞いてきた話なんだから真面目に聞いてほしい。

「僕が確認したのは狼の姿をした魔獣が3匹です。特徴的だったのは、口から何か分からないですが、圧縮した塊を吐き出す攻撃が厄介でした。それと、奴らは暴走状態になり共食いを行っていました」

”暴走状態”と”共食い”の辺りで、一瞬顔をしかめたじいさんだが、すぐに真顔に戻る。

「ふむ。お主が戦った魔獣はウルフルズと呼ばれるやつじゃな。国が定める驚異度ランクは・・・Bランクだな。暴走状態を視野に入れたとして、B+がせいぜいになるの」

驚異度ランクは国が定める基準で、値が高いほど、国に与える被害が大きくなるものだったはず。順番はF~A、Sだったから、B+だとそれなりに驚異になっていたんだな。

「今回のB+じゃと、ゴーレムと契約を結び恩恵を持ったゴーレム使いが数人がかりでやっと倒すことができる強さになるの」

それほどのレベルだったんだ。まぁ、巨石を一撃で破壊する攻撃があるんだから納得か。

「聞きたかったのはそれぐらいじゃな」

真剣な話はこれで終わりといった感じで、普段の笑みを浮かべるじいさん。

「それにしてもよく生き残ってくれたの。こんな所でくたばっていれば儂がお主の師匠とリーナに殺されるところじゃったわい」

ワッハッハと大声を出して笑うじいさん。視線を下に向けるとガクガクと足が震えていたからきっと笑って現実逃避をしているんだろうな。

そして、大事なことを忘れていた!みたいに掌を合わせていた。

「そうじゃ、アルに伝えないといけないことがあるんじゃった」

「アルも気付いているかもしれんが、今回の戦闘で余程無理をしたんじゃろう。身体のいたる箇所で無視できない怪我が見て取れる。特に、脚。無理に魔力を集めたつけが来ているのか内部の体組織がグチャグチャになっておる。医療班によると回復魔法で一気に治せないレベルまで至っているそうじゃ。時間をかけて魔法をかけていくことになっておる。なのでしばらくは魔拳など、魔力を利用した技は控えるようにしなさい。使えるようになっても、絶対に許容範囲を超えないように」

じいさんらしからぬ優しい声音で諭してくる。最後に”しばらくは車椅子生活じゃの”と言っていた。

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