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才能無のゴーレム使い  作者: クロ
一年春学期
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第2話 噴水広場にて

家を出ると、春のさわやかな風が頬をなでる。

ついこの前まで、肌寒さを感じていたが、今では気持ちのいい気温になっている。

油断すると寝てしまいそうだ。


サルバトリ王国の最南端に位置する都市ラシオン。

都市の中は大きく4つの区画に分かれており、学院は住宅地区に建てられている。

そのため、家から徒歩10分で学院に到着する。


学院前には多くの生徒が集まっていた。

新入生らしき人がお互い挨拶を行っていたり、両親と話し込んでいる。

俺は、両親とは家で分かれてきたため、集団には入っていかず、学院に向かう。

内部に入る前に赤茶色の煉瓦づくりであるアーチ型の門を通り抜ける。

新入生を迎えるかのように、校舎に延びる桜並木がとても印象的だった。

一本道を歩いていると、途中で噴水広場も設けられていた。

なんとも金のかかった作りをしている。

噴水広場には、噴水を中心にいくつかベンチが設置されているのだが、その内の一つに学生服に身を包んだ、男子生徒が横たわっていた。きれいな金髪が少し乱れているように感じる。


新入生かな?気分でも悪いのだろうか。


俺は心配になり、男子生徒に近寄った。

「大丈夫ですか?」

目上の生徒である場合も考慮して敬語で話しかけるが、反応はなかった。

もう一度、今度は肩を揺すりながら声をかけてみる。

もし、体調不良で寝込んでいるなら、学院の保健室に連れて行くなり誰か人を連れてくるなりしないといけないと考えたためだ。


「んーー?」

しばらく揺すっていると、男子生徒が僅かに反応を示す。

「気分が悪いんですか、誰か呼んできましょうか?」

さらに返事が返ってくることを期待して、呼びかけだけは行っておこう。

「ムニャムニャ。うるさい、もう少しだけ寝させて」

心配して声をかけていたはずが、何故か怒られてしまった。

様子を見る限り、体調が悪いというよりも、昼寝をしていただけのようだ。


気持ちは分からなくもないが、こんな場所で寝るのはいかがなものだろうか。

まぁ、これは放置でいいか。

風邪を引いたところで、この生徒の責任である。俺の知ったことではない。


男子生徒を距離を取るため、後退する。

したのだが・・・

服を掴まれているため、離れることができなかった。

人の服を掴むなよ。

呆れながら、掴んでいる指を剥がすべく、行動する。

必死に剥がしているのだが、指の力が強すぎて離れない。

結局、あきらめた俺はそのまま、男子生徒が目覚めるまで待つことにした。


本当、どうしてこうなった。

風とともに桜が舞う様子を眺めながら今の現状を嘆くのだった。


・・・

30分は経過しただろうか。

先ほどから、新入生が通り過ぎていくのだが、ほとんどの学生に笑われるか、冷たい目で見つめられた。

もうやだ、こんな状況。

俺はこの生徒とは一切関係ないんです。

肝心の男子生徒はというと、

まだ昼寝を貪っている。

夢でも見ているのか、口から涎を垂らしながら幸せそうな顔をしている。


「いい加減に起きろ」

そろそろ寮の部屋に顔を出したいため、呼びかけてみる。

男子生徒は

「エヘへ~」と言っていた。


その一言に対し少しイラッとしたので、頬を捻る。

痛そうにしているが、まだ起きない。

さらに力を込める。

この際、型が残るまで引っ張ることにした。


「いふぁい!?」

しばらく続けていると、我慢の限界にきたのか涙目になりながら、飛び起きてきた。

今の状況があまり分かってないのか、きょとんとしている。


「ここは?」

「学院にある噴水広場。お前はその広場のベンチで寝ていたんだ」

目の前に座っている俺に対し、疑問を投げかけてきたので、現状の説明をする。

「そっか!学院の中なのか。いやーよかった。」

男子生徒も現状を理解したようだ。自身の膝を叩いて「あはは」と笑っている。

それにしても、何が良かったのか?聞いてみたいような気もするが、あまり関わりたくなかったため適当に聞き流すことにした。


「ここで、寝るのは構わないけど風邪は引かないようにな」

これ以上関わることがないだろうと思いながら、ベンチから腰を上げ学生寮の方角に歩き出す。

「ちょっ!君が起こしてくれたの?」

慌てたように、男子生徒に呼び止められる。

「そうだけど、それがどうかした?」

「ありがとう。僕はシモン、新入生。君は?」

後ろを振り返り男子生徒を見ると満面の笑みでお礼を返してくる。


やっぱり新入生か。これで、敬語はいらないな。まぁ途中から敬語ではなくなっていたけど。

「俺はアルベルト。シモンと同じ新入生だ。これから、顔を合わすことがあると思うけど、その時はよろしく」

「こちらこそ」

「俺はこの後人に会う予定があるから先に行くな」

笑顔を絶やさず、手を降り続けるシモンを置いて、俺はこの場所を去った。


それにしても、シモンか。初めはイラッとしたけど、それほど悪い奴じゃなさそうだな。


これからの学生生活に少し希望を持ちながら、目的地である学生寮に向かった。

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