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才能無のゴーレム使い  作者: クロ
一年春学期
17/37

第17話 特訓開始

緊張で歩き方が少しおかしい、ロゼ先生に連れてこられた場所は、”闘技場α”と呼ばれる施設だった。見た感じ建物の構築するほとんどの要素が石造りだ。


闘技場と言われるだけあって、一階部分には石を敷き詰めて造ったステージが。二階にはステージを見やすくするため、ステージを中心に階段状にイスが設置されている。

そんな闘技場のステージには俺とロゼ先生の二人で使用している。

この場所に来るまでは、フラフラと前方を歩いていた先生だったけど、今は違和感なく俺と向き合っている。

「アルベルト君にはこれから、私の召喚したゴーレムに上書きを行ってもらうわ。もちろん上書きと言っても、これから行うのは練習みたいなものだから緊張しなくても大丈夫」

少し待ってて。と告げ、先生はポケットから水の入った小瓶と、一枚の紙を取り出した。

紙には二重の円が書かれており、円に接する形で星マークが描かれている。

先生は石畳の上に紙、その上に水の入った小瓶を置く。


「我が呼び出すは意識ある人形。いでよゴーレム」

小瓶が光り出し、中の水が瓶の外に溢れてくる。

瓶から出た水はウニョウニョと動きだし、小さな球にまとまった。

小さな球はロゼ先生の前まで飛んでいく。


「これが今回私が召喚したゴーレムよ。どう、かわいいでしょ?名前はそうね・・・すいちゃんでいいかしら」

すいちゃん《小さな球》と呼ばれる水のゴーレムが先生の前をフワフワ漂う。

かわいい、のか?普通に不気味な感じなんだけど・・・


「先生、これが本当にゴーレムなのですか?シルビアさんが使っていたゴーレムは手足もあり、かなり人型に近かった気がするのですが・・・」

クラス分け戦で戦ったシルビアのゴーレムの方が人型で強そうな雰囲気を持っていた。けど、先生のゴーレムにはそんな雰囲気は感じられない。

「あれ?まだ教えてなかったっけ。ゴーレムは性能が上がっていくと、次第に人型に近づいてくるっていうことが分かっているの。今回私が召喚したゴーレムはかなり低ランクのゴーレムだから、人型とは程遠いわ。逆に人型に近い、シルビアさんのゴーレムはかなり高ランクの性能を持っていると言うことね。まぁ、その辺りの説明は後日行うとして、そろそろ本題に移りましょうか」


ロゼ先生は雑談ムードだった雰囲気を一変させて、真剣な表情に変わる。

「これからあなたに行ってもらうことは、上書きの基本。ゴーレムの中にある魔力の流れを読みとることよ」


魔力の流れ?それって俺がいつもやっている魔力トレーニングと一緒な気がするんだけど。


「本来、ゴーレム使いにはこの特訓を行う人はいないわ。私だってそうだし、ゴーレムマイスターの方々もやっていない。でも、あなたは違う」


魔力には血液と同じで個人差があり、波長や色、濃さ等様々な要素で同じ人はいない。それは家族でも同じなのだそうだ。

上書きではゴーレムに流れる召喚者の魔力と同じ要素を含む魔力を流さないといけないとのことだった。


「魔力を感じるには、ゴーレムに直接触れる必要があるから、まずは、すいちゃんに触れてみて。そして感じ取るの、魔力を」

俺はロゼ先生に言われるままにゴーレム《すいちゃん》に右手を近づける。

召喚素材が水と言うこともあり、しっとりとしたさわり心地の中に僅かな冷たさが感じられた。

水で出来ているため、体部分をすり抜けるのかと思ったんだけど、そういった様子は無いんだな。どういう構造をしているんだろうか。


感じ取れって言われてもな。

とりあえずいつも通り、目を閉じ心を静めることにする。

おぉ!これは凄いな。

いつもは俺の魔力の流れしか感じ取っていなかったけど、今は右手の先から青色に光る異物を感じ取れた。

異物はユラユラと漂っている。これがロゼ先生が言うゴーレムに流れる魔力なのか。

しばらく観察していると異物《魔力》は俺の右手から次第に腕にまで伸びてくる。

動きはゆっくりしているが、確実に俺に巻き付いているのが分かる。


何だろう、この感じは。

魔力が巻き付いてくる毎に、身体中がポカポカと暖まってくる。

凄く安心できる感じだ。

このまま、この魔力に身を包んでもいいかも知れない。

このまま、身を・・・


「・・・ベルト、アルベルト!」

意識が途切れそうになった時に、ロゼ先生の声で現実に引き戻された。

「っは!どうしたんですか?」

急に意識を戻されたこともあり、一瞬息が詰まりそうになった。

何故、俺の意識を引き戻したのだろうか?

しかも、その顔。どうかしたのだろうか。


「今何が起きていたのか説明してもらっていい?」

「え、あの、どうかしたんですか?」

「いいから!」

先生の気迫に負け、すいちゃんに触れてからの出来事を話すことになった。今までも似たようなトレーニングを行っていたこと。その時に見られなかった相手の魔力。そして、相手の魔力が俺に取り付いてくる度に安心感や幸福感等、この感覚に身を委ねたくなってしまったこと。

全てが今までに感じたことがなかったものだった。

俺が話し終えると、先生は何かを考える仕草をとっている。


「そう、分かったわ。私からも説明するわね。私が気付いたのはゴーレムの異変よ。あなたが集中を始めてからすいちゃんの形が変化してきたの。球体だった体の至る所から次々とトゲを張り出して。今までに見たことが無い現象だったから慌ててあなたに声をかけたのよ」

先生に言われて空気中に漂うすいちゃんに目を向ける。

形は・・・球体だな。特に変化は見られないけど、先生が言うなら間違いないだろう。


「なるほど。まさか、アルベルト君が魔力を確認できるとは思わなかった。で、あなたが感じた感覚は、ゴーレムに流れる私の魔力に取り込まれそうになっていたと言った感じかもしれないわ」

「それって何か問題ありますか?」

あの感覚は気持ちがいいものだったから、もう一度位は味わってみたい。のだけど、険しい表情をする先生を見ていると、どうにもやめておいた方がいいらしい。


「その感覚は危険よ。他人の魔力に干渉するということは、異物が混入するのと同じ。だから、体に拒否反応が起きるの。今回のあなたの状態は拒否反応が起きる前兆。あれ以上続けると体中から血を流して亡くなっていたわよ。だから、今のと同じ感覚になったら直ぐに意識を戻しなさい」


やっぱり、危険な状態だったのか。

良かった、意識を戻してくれて。

「ありがとうございました」

なので俺は、先生に向けて素直に頭を下げると、頭に僅かな重みが乗っかるのが分かった。

顔を上げると、少し涙目な先生がいた。

「次は気をつけてね」


初日の授業は先生の優しさを感じる出来事を得て、終了した。


◇◇◇◇◇

2限目

1限目と場所は同じく、闘技場αで授業が行っている。

一緒にいるのはラウン先生だ。

そして、俺とラウン先生はステージ上で背中合わせで立っている。

「先生」

後ろに立つラウン先生に声をかける。

「・・・」

先生からの返事はない

「先生!」

「・・・・・・・・・・なんだ」

再度呼び掛けるとやや間をおいて返事が返ってきた。

「なんだ、じゃないですよ。この状況はどういうことですか!」


先生が闘技場に現れた際に多くの学生を引き連れていたから、なんとなく嫌な予感はしていたのだ。

案の定俺の予感は正しく、俺たち二人を中心に、学生達が取り囲んでいる。もちろん全員武器を持って、だ。

学生の中からは怒声が聞こえてきたりもしている。


「お前は一週間の謹慎期間中だったから、知らないだろうが、この一週間はずっとこんな感じだ。寝るときも、トイレに行くときも。四六時中付きまとってきやがる。全く困ったもんだ」

先生は疲れているのか、いつもよりもテンションが低そうだ。

そういえば、入学式でもラウン先生に喧嘩を吹っ掛ける学生たちが多くいたっけ。今回もそれの延長みたいなものか。

というより、あんなことを一週間も続けていたのか。


「我々の邪魔をするな!」

「ちょっと静かにして」

記憶を振り返っていると、一人の学生が包囲網から飛び出して、俺に向かって飛びかかってくきたので、反射的に相手の顔面を殴り、気絶させておく。

先に攻撃してしまったけど相手はナイフを振りかざしていたから問題ないはずだ。

そもそも俺だってラウン先生に話しかけているんだから、邪魔しないでほしい。

ラウン先生が巻き込まれた喧嘩ということは・・・うん、俺には関係ないな

「じゃあ、今回は俺には関係ないですね。お疲れ様です」

面倒毎はごめんなので、ステージを降りる。


ガシッ!


背後から右肩を掴まれた。

「アルベルト。ここに集まった学生の狙いは俺たちだ。だからここは一緒に切り抜けよう・・・な」

どこが俺たちが狙いだ。完全に狙いはあんただろ。

後ろを振り向けば、ニッコリと笑う先生の顔が近くにあった。言葉的には優しそうに聞こえるが実際はそうではない。


ミシッミシミシ


痛い痛い。

尋常では無いほどの握力で肩を握りつぶしてくる。

このままだと肩が潰れそうだ。なので俺はさり気なく魔力を右肩に集めて強度を上げることにした。

ふぅ、これで大丈夫だ。


「え?嫌ですよ」

こちらも負けずに笑顔で返答をしておく。

「そうかそうか。一緒に切り抜けてくれるか・・・・・あれ?普通今の流れだと助けてくれるものじゃないか」

今の流れで先生を助ける要素がどこにあるんだか。

俺に断られることを考えていなかったのか、先生はしばらく呆けていた。

もちろん、肩を掴んでいた手も緩んでいたので、この隙に逃げることにしよう。

もともとの原因は先生だし。


「では、そういうことで」

俺はステージから降り、取り囲んでいた学生の群れの中で一番気の弱そうな男子生徒の前に立つ。

「えっと、僕とあの人は関係ないので、このまま外に出たいんだけど・・・」

男子生徒は少し迷った末に、場所を開けてくれた

「ありがとう」

こうして俺は無事、外に出ることに成功した。


「よっしゃー。てめーら相手は一人だ、袋にするぞ!」

「「おぉーーー」」

後ろでは喧嘩が始まったようだ。

「ちくしょー」

団結した学生たちの中から先生の声が響き渡っていたが、気にしないで闘技場αを後にした。


先生、頑張れ。

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