第13話 謹慎生活①
バセルを殴った日から2日。
俺は寮の部屋に籠もっていた。
「暇だ~」
手に持っている本を放り出し、態とらしくベッドから下を見下ろす。
「はぁ、全く。謹慎処分で収まっただけでもありがたく思うべきだろ」
「そうですけど・・・。暇なんですよ」
勉強机に座るクレス先輩が、こちらに振り返り会話に参加する。
顔を見ると若干迷惑そうだ。
勉強の邪魔をするな。
とか思ってそう。
俺はバセルを殴った行為で一週間の謹慎処分を受けてしまったのだ。
ただ、寮内に籠もっているのも勉学の遅れを招くとかで図書館には出入りを許されている状態だ。
で、今は図書館に置いてある本を読んでいる。
正直、かなり暇である。俺は体を動かしたい!
日課である、ランニング等の外で行うトレーニングは許可されなかったので、自室で行えるメニューを中心に体を動かすしかないのだ。
今は放課後になり、先輩が部屋に帰っているため、無理矢理話し相手になってもらっている状態だ。
「先輩はさっきから何してるんですか?」
勉強机に座って何かを書いているのだ。
普段は勉強机など使ってなさそうなのに、どういう風の吹き回しだ?
「これか?夏学期に行われる授業参観の案内を書いているんだ」
机に置かれた紙を掴み、こちらに見せてくる。
何々・・・
”授業参観のご案内”と書かれた書類には文字がびっしりと書き込まれていた。
先輩曰く、保護者の中で自分の子供が学院で安全に暮らせているのか気になる人が多いそうだ。ただ、この学院では学生と教員以外の入場が規則によって禁止されているらしい。
じゃあ、普段から自由に行き来出来るように規則を変えればいいのでは?
と考えるが、それはダメらしい。理由は分からないらしいが・・・
そんな理由で保護者の入場を禁止していると、多くの保護者から反発を受け、一時の学院入学者が今の全校生徒の一割を切ったらしい。
こんな事件が保護者側から何度も行われ、さすがに当時の学院長が折れたそうだ。
まぁ、学院に生徒が減ると学院としても運営などが厳しかったのだろう。
で、学院側と保護者の間で丁度良い落としどころが今回行う授業参観なのだそうだ。
授業参観は毎年一度行われ、夏学期の授業で授業参観を行うことになっているそうだ。学院に入ることが出来る人は、各生徒3名までということになっているんだそうだ。
「へぇ~。それは分かったのですが、何で先輩が授業参観の紙を作成しているんですか?」
「何故っていわれても、俺が学院順位5位の学生だから、偶にこういった仕事が入ってくるんだよ。面倒だけどな」
へぇ~、先輩は学院順位5位なのか・・・5位!
ちょっと待って。これが5位?
ただの、日柄一日中女性を遠目から眺めて鼻の下を伸ばしているこれがか。
なんだろう、全く納得できない。
「何だ?もしかして疑っているのか」
「はい、疑ってます」
はっ!つい本音が出てしまった。
先輩のこめかみがピクピクしていらっしゃる。
ここはお世辞でも先輩を立てるべきだったか。
先輩の質問が突然すぎて思わず、心の声が外に出てしまった。
「はぁ~。まぁいい。俺のことよりも、だ」
何故か先輩にこいつはこんな奴だ、みたいな顔をされた。
心外だな。まぁ、確かに表情が顔に出やすいタイプではあるけれども・・・
結果的に許してもらえたので、別にいいか。
「俺のこととはどういうことでしょうか?」
先輩の言葉に全く分からないわけではないがとりあえず尋ねてみる。
「どういうことって、お前の謹慎についてだよ」
うん、分かっていることではあった。
謹慎中の生活もそうだが、謹慎明け。学院に登校してからどうするかってことだよな。
考えていない訳じゃないんだけど、どうにも解決方法が思いつかないんだよな。
だってそうだろ?学院の一限目。座学の時間はゴーレムに関する授業をメインに行うことになっているのだ。本来なら、初日でゴーレムに使う依り代の適正を見て、それから学院側が材料を用意する。そして同週中に召喚を行う流れになっていたのだが・・・
俺は初日授業でゴーレムに関する才能が無いと言われたようなものだからな。
正直、授業を受ける意味がないことになるのだ。それどころか、ここはゴーレム使いを育成する学院だ。俺が在籍していられるのか、そこが問題になりそうだ。
「そう難しく考えるなよ。まだ学院長から通達があった訳じゃないんだ」
「そうですね、ありがとうございます」
「でもアルは凄いな」
「凄いってなにがですか?」
「だってそうだろ?一昨日にゴーレムの才能が無いと言われたのに、既に吹っ切れた感じを出しているじゃないか」
吹っ切れたか。確かにある程度は割り切っているけど、かなりショックなのは代わらない。実際、才能が無いと分かったときは周りが見えなくなっていたことだし。
そういえば、バセルはどうなったのかな?
あいつには嫌みを言われたけど、それとは関係なくほぼ八つ当たりみたいな状態で殴りかかったからな。
怪我位はしているかもしれない。
まぁ、あいつが怪我をしていようがどうでもいいのだが。
向こうから喧嘩をふっかけてきたところもあることだし。
一昨日の件はある程度割り切っている状態だ。気にしたところで才能の有無が代わるわけでもないことだし。
「そうですね。一昨日のことを完全に吹っ切った訳ではありませんが、ある程度は割り切ってます。どちらかというとこれからのことの方が心配ですね」
「だな。俺も連絡が来ている訳じゃないから何とも言えないが。今は出来ることからやっていけばいいさ」
先輩は笑顔で俺に話しかけてくれる。
そうだよな、今出来ることを精一杯行っていくしかないよな。
少し、心が軽くなった気がする。
もしかしたら、俺自身意識していなかったけど、内心ではかなり不安が貯まっていたのかもしれないな。
話し相手になってくれた先輩には感謝だな。
時間を確認すると就寝時間を過ぎていた。
先輩も時間には気付いているため、強引に話を切って就寝してしまった。
話し相手がいなくなったため、俺も就寝する事にする。
明日も一日頑張るぞ。




