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才能無のゴーレム使い  作者: クロ
一年春学期
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第10話 早朝

結局、図書館で閲覧できる資料には俺が知りうる情報以上の”アルフ村の悲劇”を見つけることが出来なかった。

じゃあ閲覧不可を調べると出てくるのでは!

と考え、図書館の受付の女性に話を伺ったが、閲覧不可の書籍を見るには学院順位を上げる必要があるらしい。

その中でも赤字で書かれた閲覧不可は学院順位1位の学生でかつ学院長からの許可が必要になるとのことだった。

学院1位もそうだが、学院長の許可を取るのも苦労する気がする。


「おーい、聞いてるか?」

目の前でクレス先輩が片手をブンブン振っている。

どうやら話の途中で意識が切り替わっていたみたいだ。


今は寮に戻っており、もうすぐ就寝の時間帯となっている。

そのため、椅子に座る俺の向かい、ベッドに腰掛けた先輩がいるという構図になっている。

「すみません、聞いてませんでした」

自分に落ち度があるため素直に謝る。

本当に何を話していたんだっけ?


「今日はまだ入学式しかしてないんだ。このぐらいで疲れを見せてたら明日からの授業で体が持たないぞ」

どうやら俺が入学式のクラス分け戦で体力を使い果たしたと勘違いしたようだ。

あの程度で疲れを感じることは無いんだけどな。

「だから!」

先輩はベッドから腰を浮かし、俺の肩を掴んでくる。

テンションが異様に高い。

「明日、体力作りも兼ねた早朝トレーニングに行かないか?」

唐突だな・・・

でも体力トレーニングか。学院入学前は毎日の習慣として早朝と夕方にトレーニングを行っていたし、学院でも実施しようと考えていたところだったため、この申し出はありがい。


「自分で良ければよろこんで」

特に断る理由が無かったため、承諾する。


「そうか。じゃあ、明日6時からトレーニングを始めようか」

俺の返事に満足した先輩がトレーニング開始時刻を告ると、ベッドに潜り込んでいった。

理由は分からないがかなり疲れていたようで、直ぐに寝てしまった。


「ふぁぁーー」

先輩の睡魔が移ったのか、急に眠気に襲われる。

今日は色々あったことだし、早く寝て明日に疲労が残らないようにしよう。


俺も二段ベッドの階段を昇り就寝することにした。



・・・・・

翌朝、窓から差し込む僅かな光によって目が覚める。

時間を確認すると5時半だった。

先輩の様子を確認すると、まだ眠っているらしく寝息が聞こえてきた。


早朝トレーニングまで30分。

丁度いい時間のため、朝の日課を終わらせよう。

俺はベッドの上であぐらをかく。

目を瞑り深く息を吸って、大きく息を吐く。

この行為を行う度に体の力が少しずつ抜けていく感覚に陥る。

数回同じ動作を繰り返していくと、無駄な力が抜け、今度は体の中で規則正しく流れる存在を把握することが出来た。

その存在は頭から足の指先までゆっくりと流れている。


師匠が言うには今感じられている体中を流れる存在は”魔力”と呼ばれるものであり、限られた人間にしか備わっていないものだそうだ。


魔力の流れを感じ取った後は流れの向きを少し変更して右手に集中させる。

昨日シルビアとの戦闘で魔力を使ってしまったから、不具合が起きていないか確かめる。

全体の魔力の20%が右手に集まってくると淡い光が発せられる。

うん、正常に働いているな。

同じように左手、足等体の至る所で確認する。

異常無くどの場所でも淡い光が発せられた。

最後に深呼吸を行い、朝の日課を終わらせる。

時間を確認すると、6時になっていた。


ふぅー。なんとか時間内に間に合ったようだ。

安心しつつ、先輩の様子を確認する。

先輩はというと・・・

「ガァァァァ」

まだ爆睡していた。

動きやすい服装(ジャージ)に着替え、先輩の眠るベッドに向かう。

さすがに先輩自身が言い出した早朝トレーニングのため、勝手に行うことができない。

仕方なく先輩を起こすことにした。


「先輩、時間ですよ。早く起きて下さい」


ユサユサ


「先輩ー」


ユサユサユサユサ


・・・・・

5分後。

だめだ。起きる気配が一切感じられない・・・

あの後、揺らしたり布団をはぎ取る等行ったんだけど、目を覚ます様子がなかった。

さすがに腹が立ってきたため、何か仕返し出来ないか考えることにした。


「最終手段は鳩尾への殴打にするとして、他に何が出来るのか。・・・そうだ!服をひん剥いて、寮前に放り出せばいいか」

名案だ。

こうすれば、朝の貴重な5分間台無しにされた仕返しができる!


早速服を脱がそうとベッドに近づくと、先輩がものすごい勢いでベッドから飛び出してきた。


「何を考えてるんだ!」

必死の形相をした先輩が立っていた。どうやら服を脱がした状態で寮前に放り出されるのが不服らしい。

それよりも、だ。


「先輩、起きているのなら、もっと早く行動して下さいよ」

分かっていたことだが、結構最初の段階で先輩は目を覚ましていたのだ。

つまり、単なる狸寝入りを決め込んでいただけ。

だからこうして起こし方について言葉を発していたのだ。


「それに関しては謝るがいくら何でもそれは嫌がらせにもほどがあるだあろ・・・もしかして(わざ)と?」

先輩も気付いたようで呆気に捕らわれていた。


「ほら、早く着替えて下さい。トレーニングに行きますよ」

朝練に向かうべく先輩を促すことになった。


・・・・・・・・

早朝トレーニングは軽めに5kmのランニングを行うのみだった。

ランニング中に学院生が数名走っている様子が見て取れた。

「凄いですね先輩、この学院では普段からランニングを行う生徒が多いんですか?」

実家にいた際は、街の周回道路が設けられた公園で走っていたのだけど、自分と同じように走っている人を見かけなかった。

そのため、今見ている光景は何というか新鮮だった。


俺の隣を走っている先輩に対する質問だったのだが、返事が返ってこない。

バテてきたのかな?

「先輩?」

やや速度を上げて、先輩の前に出て、顔を確認する。


鼻の下を伸ばす先輩の顔がそこにはあった。遠くには三人で走る女生徒達がいる。

「もしかして、早朝トレーニングは嘘で、朝から走る女性の姿を見るために俺を呼んだんですか?」

少し鎌を掛けてみると、

「えっ!そんな訳ないじゃないか。朝から走ることは健康にもいいからな」

まじめな返答が返ってきた。

ただし、視線は女生徒を常にロックオンしている。

なによりも、鼻の下が伸びる伸びる。もう|上唇溝≪じょうしんこう≫が切れそうな勢いだ。

視線に気付いた女生徒達は顔をひきつらせながら全力疾走で逃げていった。


まぁ、先輩の顔が余りにも気持ち悪いから仕方ない。


逃げていった女生徒の方を見ながらあ~あと残念そうにする先輩。

明らかにやる気がなくなったように走るペースが遅くなった。


本気で女生徒を見るためだけに走っているだけだったようだ。

それでも投げ出さず最後まで走ろうとするのはさすがだけど。


「時に、アルよ。」

さっきまで元気が無かった先輩がいつも通りのテンションに戻り、話しかけてきた。

「今日の放課後からあれが始まるがどうするんだ?」


”あれ”というものに心当たりがなかったため、聞き返すと驚かれてしまった。


「何ってお前・・・クラブ活動の勧誘だよ」

先輩は満面の笑みで告げたのだった。



・・・・え、何それ?そんな話聞いてないんだけど。


今日もよく分からないことが起きそうだ。走りながらそんなことを考えてしまった。

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