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第八話「喜びも束の間」

 ダンジョンへと潜った俺達は、さっそく新しい部屋へと向かっていた。

 転移魔法陣で一気に地下二十五階へと転移。

 地下二十五階は、部屋が多いところだ。

 ほとんどが通路と扉で構成されている。そして、扉の向こうである部屋。そこのどこかにある次の階へと転移するためのスイッチを見つけ、転移魔法陣を起動させる。


 部屋によっては魔物がいたり、罠があったりと様々だ。

 その無数の部屋からひとつの二つのスイッチを見つけ出すのは至難の業。が、すでにこのダンジョンは地下三十階まで突破済みだそうで。

 攻略組みは、いったいどこまであるんだと嘆いているそうだ。


「それで、新しい部屋っていうのはどこなんだ?」

「君達でも、すぐにわかるよ」


 地下二十五階は、部屋の中にしか魔物がいない。クリア済みの今ではある意味休憩場というべき階層。

 こうしてただ喋りながら歩いていても敵に襲われる心配はまずない。

 ただの鉄の扉だが、部屋の中からは絶対出れないという制限があるため色々と攻略法はある。

 例えば、扉だけを開けて廊下から攻撃するとか。


「ほら、あれだよ」


 と、アルが指差す。


「なるほど。これはわかりやすい」


 他の鉄の扉と違って金色の扉だった。

 しかも、一回り大きいときた。


「ここが僕達が調べる部屋。さあ、まずはこの扉に張られている障壁の解除からだね。二人ともちょっと下がってて」


 アルの指示通り俺達は三歩ほど下がる。

 それを確認したところで、アルは腰に装備していた剣を抜き放つ。


「どんな障壁であれ……全てはこの剣によって切り裂かれる」


 天高く振りかざす。


「あれは……神力ですね」

「それって、俺達と同じ力のことか? まさか、アルも」


 光り輝く刃。それは、俺達と同じ神力を持っているという。あまり力を入れずにそれを金色の扉へと振り下ろした。

 すると、目に見えなかった障壁が粉々に消滅する。


「いえ。彼は普通の人間です」

「じゃあ、あの武器が特別ってことか」

「はい。あれは【神聖具】の一種でしょうね。ですが……神聖具を扱えるのは限られた存在。彼もまた神に選ばれた人間なのでしょう」


 剣を鞘に収めるアルを見詰め俺はなるほどね、と頷く。しかし、副団長でこれほどの人間ということはやっぱり団長はもっとすごいはずだ。

 この任務が終わったらアルに会えるように頼んでみようかな。


「これで入れるようになった。二人とも、準備はいい?」

「いつでも」

「問題ありません」

「なら、いくよ!」


 ぐっと力を入れ、金色の扉を開ける。

 ギギギギ……と軋む音を響かせ扉は動く。そして、部屋の中に入った瞬間、部屋中が一気に明るくなった。

 何かがくる? と身構える俺達。


「なにも来ないな」

「見たところ、何もない部屋のようですね」


 広さは十分にある。ただ、何もない。魔物はもちろんのこと、罠らしきものすらない。


「これまでも、何もないただの部屋はいくつかあった。でも、ここがそうだとは僕は思えない。どこかに、なにかあるはずだ。手分けして探してみよう」


 あれだけ派手な色をして、一際大きな扉だ。確かに、何もないって言うのはないよなさすがに。扉も開いてまま。閉じ込められるっていう罠ではなさそうだ。

 アルの話では、魔物は元々部屋にいたり。魔法陣から生み出されるとも言っていた。

 とりあえず、すぐ戦えるように……。


「よし。できた」


 俺達の国。日本が誇る武器。

 扱いやすいように刃は少し短めにしておいた。想像通りにできている。俺が想像したのは、忍者とかがかっこよく使っている小太刀。

 時代劇とかは全然観ないけど。アニメは漫画だったらたくさん観ているからな。ただ、俺の想像力はまだまだ未熟。

 どれだけ耐えてくれるか、だな。


「ファンタジー世界にあるまじき武器ですね」

「そういうなって。かっこいいだろ? 刀」

「否定はしません」


 アルは右側。俺とサーニャは左側から調べていく。壁を手で触れ、何か仕掛けがないか。気をつけながら探っていく。


「あ、ごめん。二人とも、少し待っててくれるかな?」

「どうしたんだ?」

「ちょっと、通信が入ったんだ」


 アルが懐から取り出したのは小さな箱だった。

 宝石のようなものが点滅している。ボタンを押すと、その点滅は消えた。その後、アルはその小さな箱を耳に当てる。

 あれって……。


「なんだか、携帯みたいだな」

「間違ってはいません。あれは通信用の魔導具。最近ルストリアで作られた最新のものです。とはいえ、まさか地下二十五階まで通じるとは。ルストリアの科学力も進歩しましたねぇ……」


 自分の世界が順調に発展していることが嬉しいようだ。

 魔法もあって科学も大分進歩している。

 魔法科学がある世界……なかなか面白いところじゃないか。誰から通信が来たのか気になる俺達は、会話をしているアルをしばらく眺めていた。


「うん。うん……なるほど。ご苦労様。君達は団長にそのことを伝えてくれ。……ん? まだ他にも報告があるのって? …………それは本当かい?」


 どうしたんだろう? 俺達のことを見ている。

 まさか!? 俺達を手招きしているアルの反応を見て俺は察した。おそらく、連絡相手は残党を倒しに行った騎士団で、その騎士団がさなえ達を……!


「やったよ、飛鳥! 今騎士団から連絡があって、君が探しているっていうクラスメイト達らしき人達を」


 通信を切ったアルも駆け寄ってくる。

 そして、同時に中央付近に踏み入った。


「なっ!?」

「おや?」

「これは……転移魔法陣!?」


 何もなかったはずなのに。突然足元から溢れ出る光の粒子。これは、クラスメイト達を転移させ、俺達がこの地下二十五階へと来た時にも使ったのと似ている。

 まさか、こんなところで別の場所に転移させられるってことなのか?


「そうはさせない!!」


 アルは素早く剣を抜き放つ。そうか、障壁は切れるように魔法陣も切れるってことなのか。


「これは……」

「サーニャ?」

「はああっ!!」


 気合いの掛け声で振り下ろす。

 ……だが、何も変わらない。


「これは、私達では無理ですね」

「どういうことだよ、サーニャ!!」

「これは、一位がやったものです。簡単には破れません。力が制限されていなければ、私が解除できたんですけどね。あ、いや……できないかもしれません、たぶん」


 だったら、俺の力で……! 俺は想像した。俺が今手に持っている刀をかっこよく振り下ろし、転移魔法陣を切り裂く姿を。


「おりゃあ!!」


 アルと同じように転移魔法陣目掛けて武器を振り下ろすも……だめだった。俺の力が逆に弾かれてしまった。

 刀は俺の手から消え、転移魔法陣は更に輝きを増す。


「な、なんで!?」

「だから言ったのです。これは一位が用意した魔法陣。簡単には破れないんです。はあ……転移の神である私よりも強力な転移魔法陣とか。ぶっちゃけ、チートですよチート」

「転移の神?」

「そうです。ちなみに、この飛鳥は別世界の神の子で」

「おい!! 今はそんなことを言っている場合じゃ―――って、うわあああ!?」


 何とかしようと思ったがもう遅かった。

 陣から出ようにもまるでそこに縛られているように動けない。結果、俺達は妙な空気のまま……どこかへと転移してしまった。

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