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第六話「解き放たれし神力」

今回は、飛鳥とクラスメイト達の視点を交互に書きました。

 ミィルド王国へとやってきた俺達は、さっそくさなえ達の情報を得るためにギルドへとやってきたのだが……そこで、異世界ものによくあるイベントが発生。

 大男にやられそうになったところで白騎士アルフォードなる者に助けられ、現在はそのアルフォードに連れられ王国にある喫茶店へと訪れていた。


 雰囲気は、とても落ち着くものでなんていうか昭和な感じだ。ほとんどが木材で出来ており、店長も中々貫禄のある見た目だ。

 そんな中で一際目立つのは……やっぱり、アルフォードだろうな。

 店に入ってからずっと視線が釘付けだ。


「さあ、ここの紅茶やコーヒー。食べ物は、僕のお気に入りなんだ。遠慮せず、なんでも注文してほしい。大丈夫。支払いは全て僕が受け持つ」

「い、いやでも」

「これは、我が騎士団へと助力してくれた君達への感謝の気持ちなんだ。あの時は、僕が他の任務で不在だったために苦戦を強いられた報告を受けている。もし、君達が助けてくれなければどうなっていたことか……」


 あの時は、助力したっていうよりもただ単純に逃げただけなんだけどな。

 だが、そうか。

 あの時は、アルフォードはいなかったな。結果的に助けたことになっているだけで、俺にはそんな気は全然なかった。


「飛鳥。行為に甘えましょう。そして、できればそのまま助力を得たほうが言いと思います」

「ん? どういうことかな?」


 サーニャの言葉に、首を傾げるアルフォード。

 そうだな……アルフォードは話から察するに騎士団の団長。しかも、ミィルド王国が誇る魔法騎士のだ。だったら、その偉い人からの助力を得られれば捜索も楽になる。


「実は」


 まずは、行為に甘えることにした。

 俺はブレンドコーヒーとイチゴのショートケーキをひとつ注文し、サーニャはコーヒーとフルーツタルトを注文。

 そして、アルフォードは紅茶。

 一通り、注文の品が揃ったところでアルフォードはふむっと頷く。


「つまり、君達はこのルストリアのどこかに転移したお友達を探すためにこのミィルド王国へ来た、ということだね?」

「そうだ。一刻も早く探して、合流したい。だけど、闇雲に探すには範囲が広すぎて……」


 ちなみに、俺が別世界の神の子でサーニャがこの世界の神様だということは話していない。助力を得ようとしている身ではあるが、伏せておくべきだ。

 サーニャは凄く言いたそうにしているが。

 嘘が嫌いなこいつにとっては、歯がゆいものなんだろう。


「……そういうことなら、力になるよ」

「いいのか? 随分と決断が早いけど」

「もちろんだ。だけど、少し時間をもらえないかな?」

「何かあるんですか?」


 アルフォードは、真剣な表情で口を開く。


「実は、二人が立ち去った後に騎士団は残りの魔王軍を倒そうと奮闘した。でも、全てを倒すことは出来ず、何体か取り逃がしてしまったらしいんだ。追撃をしようにもそれまでの戦いでかなり消耗してしまってそれどころではない。そこで、一度王国へと帰還して体勢を整えてから」

「残党狩りをする、ということですか」


 確かに、あの時の騎士団はボロボロだった。

 あの後、魔王軍を倒しきったから戻ってきたのかと思ったが違ったみたいだな。こんなことなら、俺も逃げずにあのまま参加しておくべきだったのかな?


「うん。僕も、行きたいところなんだけど。まだ他の任務があって一緒には行けないんだ。あ、大丈夫だよ。騎士団には君達のお友達のことはちゃんと伝えておくから。だから、そのお友達に関して詳しいことを聞かせてくれないかな? 特徴とか、色々と」

「わかった。突然頼みごとをしてごめんな」

「別に構わないよ。助けられたのはこっちだからね」


 それからは、クラスメイト達の特徴などを詳しくアルフォードに教えた。

 これで、少しでも皆のことがわかればいいんだけど。

 本当は、俺の力でどうにかできれば……早くこの想像の力をものにしないと。


「ところで、ずっと気になっていたんだけど。二人はどういう関係なのかな?」

「主人と下僕です」

「ちょっ!?」

「あ、間違えました。友達です。ちなみにこの服は飛鳥の趣味です」

「へぇ。そうなんだ」




★・・・・・・




「ほら、あんた達! そんなにゆっくりじゃ、日が暮れちまうよ!!」

「れ、レインさん。あんな大荷物を抱えているのにどうして一番早いんだ?」

「見た目の割りに、かなり鍛えているってことなのかな?」

「普通、あんな細い体じゃリュックすら抱えられないもんね」


 鍛冶師であるレインさんに出会った私達は、現在近くの街へと向かっていた。この異世界で初めての人ということでとても頼りにしている。

 とはいえ、レインさんと出会ってからもう数十分は歩き通し。

 さすがに、皆の顔に疲労に色が見えてきていた。


「ほら、清。あんたも男ならしきっとしな!」

「お、俺はインドアなんですよー!」

「虫の採取によく外に出ているのに?」

「そ、そうだよ! 大体、いきなり異世界に飛ばされたうえに飛鳥の捜索。そこから数十分も歩き通しじゃ……誰でも疲れるっての!!」


 清くんの言うことは私もわかる。

 普通だったら、戸惑いや極度な恐怖で精神的に参ってからの歩き通し。これで、疲れないっていうのが普通じゃない。

 ……つまり、私は普通じゃない? 体力には自信があったけどさすがに少しは疲れていてもおかしくはないはずなのに。


 ううん、私だけじゃない。

 望ちゃんやソフィーちゃん、それに陽香ちゃんもあまり疲れているって感じじゃない。清くんも口ではああ言っているけど、まだまだ余裕そうだ。


「……」

「あ、あのどうしたんですか?」


 先を歩いていたはずのレインさんが突然私達のことをじろじろと観察し始めた。


「やっぱり気のせいじゃなさそうだね」

「どういうことでしょうか?」

「さ、さあ?」


 レインさんの言葉に私達女子組みは顔を見合わせる。


「唐突にこういうことを言うのは失礼だと思うんだけど……あんた達、本当に普通の人間かい?」

「え? つまり私達って人間に見えないって事ですか!?」

「おっと。そうじゃないんだ。実はね、あんた達に会ってからなんだけどね。あんた達の体から【神力】を感じるんだよ。それも、全員からね」


 と、クラスメイト達を見渡すレインさん。

 聞き覚えのない言葉を聞いて、皆は首を傾げる。言葉から察するに、神の力ってことなのかな? 


「お、俺達って特別な力があったのか?」

「ま、マジで? 魔法とか使えるのか?」

「そんでね。特に女子組みと清。あんた達は特に強い神力を感じるんだよ」

「私達から……」

「ど、どういうことなんでしょうか?」


 もしかして、転移させたのは神様だと思うから。何かしらの影響を受けたってことなのかな。異世界ものだと特別な力に目覚めるのは定番なんだけど。

 今のところ、私達の力は神力があるってだけ。

 よくあるステータスっていうのも念じても出てこない。


「その神力というのはどういうものなんですか?」


 と、寺島先生が問いかける。


「簡単に言えば、神の力。魔力とはまた別のエネルギーの呼称だ。ただ、神力は名前の通り、神々や神の特別な加護を受けている者にしかない。そして、その神力で使えるのが【神聖術】だ」

「神聖術?」

「ああ。この世界には魔法、精霊術、神聖術の三つに術が存在しているんだ。魔法は、魔力を。精霊術は精霊の力を。神聖術は神力を糧とするんだ魔力は全ての生命に必ず存在するエネルギーだけど。他の二つは特別なんだ。簡単に扱えるものじゃない。だから、あんた達が自分で普通の人間だって言うからずっと考えていたってわけさ」


 そうだったんだ……でもどういうことなんだろう本当に。

 考えられるのはこの世界に転移してくれた神様の加護だけど。レインさんの話を聞いて、私達は驚きもしたけど少し嬉しくなっている。

 誰でも特別な力が自分にあるってわかれば、嬉しくなるもの。

 それに、私達がそうだったとしたら……今ここにいない飛鳥くんも。


「レインさん。その神聖術っていうのは、覚えれば自由に使えるものなんですか?」


 自分に特別な力があるのなら、この先生きていくために絶対必要になる。

 だから、覚えれるなら覚えておきたい。

 その一心で、レインさんに私は問いかけた。私の問いに、レインさんは「そうだねぇ……」と考える素振りを見せ、リュックを地面に下ろした。

 そして、リュックのポケットから何かを取り出そうとするも、何かに気づいたのかすぐに顔を上げる。


「……こりゃ、厄介な奴らが来ちまったね」

「厄介な奴ら?」

「ほら、向こうを見な」


 そう言われ、レインさんの指差す方向を私達は一斉に見る。見えたのは、負傷し、表情がとても険しい異型の者達。

 もしかして、あれが魔物?


「おそらく、魔王軍の残党だろうね。この近くで、ミィルド王国の騎士団と戦っているって話を出てくる前に聞いたから間違いない」

「ど、どうするんですか?」

「このまま逃げる。戦う必要はない……って言いたいところだけど! 皆! 走るんだ!!」

「え?」


 レインさんの叫びに私達はハッと空を見上げる。

 炎の塊だ。

 複数の炎の塊が、雨のように私達目掛けて降ってくる。


「うわああ!?」

「い、いきなり攻撃してきたぞ!?」

「そりゃ、あんだけ殺気立っていればね!! ちっ、あたしは戦うのは得意じゃないんだけど……狙われちまったからにはそう簡単には逃げれない……さて、どうしようかねぇ」


 チラッとレインさんは私達女子組みへと視線を送ってくる。

 そして、小さく笑いベストのポケットから何かを取り出した。


「女子組み! この中から好きなものを選びな!!」

「え? え?」

「アクセサリー?」

「こんな時に、プレゼントですか!?」


 目の前にあるのは、剣や槍などの形をしたものが取り付けられている指輪だった。突然、何を言い出すのかと私達は困惑している。

 だけど、そうしている間にも魔王軍の残党は魔法を詠唱し始め、こちらに向かってきていた。

 迷っている暇は……なさそうだね。


「私はこれにします!」

「さなえ!?」


 私は、一番先に剣の指輪を手に取った。

 望ちゃんは驚くも、あー! と息を漏らし槍の指輪を手に取ってくれた。


「じゃ、じゃあ私はこれにします!」

「えー、残り物かー。まあ、残り物には福あるってね」


 続いてソフィーちゃんは杖。陽香ちゃんは残った槌の指輪を手に取った。これで、全員に指輪はいき渡ったけど。


「よし! それを指に取り付けてエンゲージって唱えるんだ!!」


 私達はもう迷うことなくレインさんの指示に素直に従っていく。

 皆が見ている中、私達は指輪を指にはめて一斉に唱えた。


『エンゲージ!!!』


 刹那。

 体の奥から膨大で、温かな力が湧きあがってきた。それは、はめた指輪へと注がれ……解き放たれる。

 そして気づいた時には。


「よし!」

「これって……武器?」

「はわわ!? ど、どこからこんなものが……!?」

「しかも、全然重くない?」

「うひゃー。こんな大きなハンマーを持てるほど私って力持ちだったんだね」


 いつの間にか私達は、神々しい輝きを放つ武器を手に持っていた。

おそらく次回も、今回と同じで交互に書くと思います。

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