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第三話「ミィルド王国へ」

 魔王軍とミィルド王国との戦場から十分ほど走りぬけ、俺は武装を解除した。

 抱きかかえていたサーニャを下ろして一息つく。


「ふう。とりあえず、ここまでくればゆっくりできるな」

「衣服は、全焼しませんでしたが……これではメイド服には見えませんね」


 サーニャの言うとおり、俺の未熟な想像の炎により焼かれたメイド服は全焼はしなかった。焼けたのは、スカートと袖。

 ロングスカートだったのは、ミニスカートになり、袖がなくなったことで脇が露になりノースリーブとなった。こんな奇抜なメイド服は見たことがない。

 スカートや服の裾は、焦げておりこれまた……。


「あ、ですがこれはこれで神の子は嬉しいのではないしょうか? これで、女子の素肌を見放題ですよ」

「俺にそんな趣味はない!」

「本当にですか?」

「本当です」

「その割には、私の肌をチラチラと見ていますが?」

「……それはそうとサーニャ。いい加減俺のことは神の子じゃなくて名前で呼んでくる。俺は渡飛鳥だ」

「話を逸らしましたね」


 仕方のないことだ。

 男というのは、皆女子の肌を自然と見てしまう。興味がないものなどいるものか。サーニャの体つきは、程よい肉つきで、小さいながらもこれまた程よい胸の膨らみ。

 それが、ノースリーブになったことで横から見える。

 スカートも短くなり、下着が見えそうで見えないというエロさ。これで、見ない男がいないなんてことはない!


「まあいいです。では、飛鳥。今更ながら、重要なことを」

「ん?」

「私達の目的は、誤ってルストリアのどこかへ転移したクラスメイト達を見つけること」

「ああ」

「でしたら、ミィルド王国に助力を申請したほうがよかったと思います。ミィルド王国は、このルストリアでもとても大きな都市のひとつです」


 なるほど。情報を得られるかもしれないって事か。情報のないまま、闇雲に探していてもいつ見つかるかわからない。

 この世界の助力を得たほうが早く見つかる可能性が高い、ということか。

 うーん、自分に酔っていてそこまで頭が回らなかった。

 いやだが。


「そういうことは、先に言ってくれ」

「すみません。飛鳥が、自分のかっこよさに酔っていたので」

「ぐっ……! うーん、今から戻るって間に合うと思うか?」


 距離的に、十キロメートル以上は走ったかもしれない。


「おそらく、ミィルド王国は撤退しています。魔王軍のほとんどをあなたが倒しましたので」

「ミィルド王国は、ここから近いのか?」

「徒歩で一日半かかります」


 徒歩で一日半か……だったら、さっきの武装で身体能力を強化して走ればすぐだろう。


「よし。じゃあ、今からミィルド王国に行こう。そこで情報収集だ」

「了解です。では」


 サーニャは両手を広げた。

 この行動は、子供などがよくやるあれだろう。


「今度はちゃんと想像してくださいね」

「善処する」


 サーニャを抱きかかえ、俺は目を瞑る。

 想像するんだ。

 今は足だけでいい。

 俺は今から、風のように駆ける。

 そのための武装を。


「イマジネーション」


 風が俺の足に集まっていく。

 生成されたのは、車輪がついた翡翠色のレギンスだ。よし、うまく言ったな。後は力の加減だけど……そこは頑張ろう。


「んじゃ、いくぞ。しっかり掴まっていろ」

「はい」


 俺は想像した。

 今装備されている武装の車輪が回転し、走る光景を。すると、風が纏って車輪が回り、走り出した。


「うおっとと……やっぱり、力加減がまだまだだな」

「飛鳥」

「なんだ?」


 走り出してすぐサーニャが訴えかけてくる。その理由は……理解できた。


「短くなりすぎてスカートが捲れてしまい、下着が丸見えです」


 純白のパンツが丸見えである。

 サーニャは相変わらず、羞恥心などなくスカートを押さない。


「とりあえず、スカートを抑えようか。お前のことは俺がしっかり抱えておくから」

「了解です」




☆・・・・・




 全力で走って二十分後。

 ひとつの都市が見えた。

 周りを強固な防壁で囲っており、空にはなにか薄い膜のようなものが見える。


「なあ、サーニャ。あそこがミィルド王国で良いんだよな?」

「はい。そして、ミィルド王国はこのルストリアでは魔法騎士達の育成に力を入れているところです」

「魔法騎士……かっこいい響きだ。それで、あの薄い膜はバリア的なものか?」

「そうです。防壁と魔法障壁の二重の壁がミィルド王国を守っています」


 守りは万全ってことか。

 まあ、そうじゃなくちゃ大変そうだもんな。魔王軍とかもいるぐらいだし。物理的な防壁だけじゃ、俺だったら心もとないと思う。


「それじゃ、行くか。情報収集に」


 ここからは徒歩だ。

 もう視界に入るほどの近さまで来ている。ここで、力なんて使ったら怪しい者だって警戒されかねないからな。


「そういえばさ。お前の力っていつ戻るんだ?」

「ああ。神の力。つまり神力は、神域に戻るか同じ神力を持った者の近くにいれば大丈夫です」

「つまり……俺の近くにいれば」

「そういうことです」


 ぐっと親指を立てるサーニャ。

 これは、力が戻るまで俺の傍から離れないという意思表示か。まあ、サーニャは言動はともかく容姿は美少女なわけだし。

 男としては、拒否するという選択はないだろう。


 それからしばらく歩き巨大な門へと辿り着いた。当然のように門番が立っており、俺達以外の者達が取調べをされている。


「……はい。通っていいですよ。ようこそ、ミィルド王国へ」

「お疲れ様です」


 順番待ちをしている中、俺は厳重な門番達の仕事をじっと見詰めていた。

 そう易々と王国に足を踏み入れさせないってことだな。


「冒険者の方々ですね。ご苦労様です」

「門番さん達もご苦労様!」

「サーニャ。この世界でも、冒険者っていうのはいるんだな」

「もちろんです。ちなみに、誰でも登録料さえ払えばギルドで登録できますよ」


 薄いカードのようなものを門番達に見せた冒険者なる男女。

 冒険者カードがあれば、怪しまれず通ることが出来るってことか。でも、俺達は持っていないからな……旅人だと言えばなんとか誤魔化せるか?


 数分達、俺達の出番となった。

 門番の一人が、じっと俺達のことを観察するように見詰めている。年齢からして、二十代後半ぐらいの人だろう。

 もう一人は、顔つきがなんとも厳つい三十代後半ぐらいのおっさん。身長は明らかに百八十センチメートルは越えている。


「あなた方はどのような用件でミィルド王国へ?」


 どうしますか? という視線がサーニャから送られてきた。

 俺は、静かに首を縦に振り考えていたことを口に出す。


「実は、俺達は遠い山奥の村から冒険者になるためにこのミィルド王国に来たんです」

「ほう。冒険者になるために」

「は、はい」


 さ、さあどうなる? 


「それはわかりました」

「ほっ……」

「しかし」


 チラッと門番の一人がサーニャに視線を向けた。


「そちらのメイドさんはどうしたんですか? メイド服がその……変な焼け方をしているのですが」

「あーえっとこれは」


 やっぱり気になりますよねぇ……。


「それに先ほど山奥の村と言っていましたが。メイドを傍に置くほどとなるとそれなりの地位の持ち主、とお見受けしますが」

「あ、いや俺は」


 くそぉ……やっぱり色々と突っ込まれてしまうか。

 この先のことなんて考えていない。

 アドリブもあんまり得意じゃないしな。どうしたらいいんだ……こ、こうなったら。


「こ、こいつは俺の友達なんですよ」

「友達ですか」

「は、はい。それとこのメイド服なんですが。こいつ、昔からメイドさんに憧れていまして。自分の作ってしまうほどで。服が焼けているのは、野宿の時に誤って焚き火で……」

「……なるほど。そういうことでしたか」

「それはお気の毒に……」


 よし、このままこのまま……。冷や汗を流しながらも俺は続ける。


「ちゃんとメイド服は直そうと思っていたんです。ですが、材料が少なくて」

「わかりました。では、念のために何か危険物がないか確認をします。よろしいですか?」

「は、はい。どうぞどうぞ」


 その後、なんとか乗り切った俺達はミィルド王国へと入ることができた。なんで、街に入るだけでここまで疲れるんだ。

 異世界っていうのは思った以上に大変だな。


「飛鳥」

「なんだ?」


 一息ついているところに、サーニャが問う。


「私はいつから飛鳥の友になったんですか?」

「……いいだろ。そのほうが都合が良いんだ。今日から、俺達は友達だ。いいな?」

「……わかりました。では、友達の飛鳥」

「今度はなんだ」

「早く別の服を着たほうがいいでしょうか? 街の人達の視線が集まっています」


 ……気づけば、ちらほらとサーニャのことを、だけじゃない。俺のことを変態を見るような視線を向けている街の人達。


「あ、うん。そうだね。でも……こっちの金、俺持ってないんですけど」

「大丈夫です。私が持っています」


 そりゃ、助かった。それじゃ、さっそく最初の行き先は服屋、だな。

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