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プロローグ

新作です。

よくあるクラスごと……とは少し違うように書きました。たぶん……。


変更点

クラスの人数を十人から九人に変更しました。

 平凡。

 世の中には平凡を好む人達が一杯いるだろう。平凡に毎日を過ごして、恋をして、結婚して、子供を生んで、老いて死んでいく。


 それはとても落ち着いて、幸せな人生なのだろう。

 なのだろうが……俺だったらやっぱり刺激を求める! 

 毎日が平凡なんて退屈すぎる。

 だけど、そう簡単に非日常なことが起こるはずがない。漫画やアニメ、小説などでは当たり前なことなのに……やっぱり、リアルっていうのは。


「よう。まーた空を見て現実から逃げているのか? 飛鳥あすか

「そーだよ。毎日毎日……変わらない毎日なんて退屈だって」


 先生が来る三分前。

 教室の中には、九人の生徒達が騒いでいた。俺が暮らすところははっきり言って田舎だ。来年には、高校生になる俺達だが……ほとんどの生徒が都会の高校を受験すると言っている。

 例年、若い者達が減っていく世の中。

 俺、わたり飛鳥が通っている朝森中学は全校生徒五十人もいかない。最近の噂じゃ、違う中学校と合併するとかなんとか。

 まあ、生徒数も少なくなってきているし、仕方がないって言えば仕方がないのかもなぁ。


 未だに自然が豊かで田んぼが広がっているのどかなところさ。

 まあでも、俺は嫌いじゃない。

 別に大きな店があるところだって自転車で二十分ぐらいでいけるし。飲食店や、レンタルショップ、カラオケ店などなど一通りある。


 それに、ないものはネットで頼めば手に入るし……。

 でもやっぱり、刺激を求めるには都会に行ったほうがいいのかな。

 あ、ちなみに俺に話しかけてきたのは、虫が大好きなメガネ。

 名前を松下まつしたせい

 小さい頃から一緒にいる所謂幼馴染である。田舎だから、やっぱり森とかを駆け回ってよく虫取りをしていたんものだ。

 清の将来の夢は虫専門の博士、だそうで。日夜勉強中である。


「じゃあさ、俺と一緒に都会に行こうぜ? 都会だったら、絶対刺激的なことが一杯だって!」

「それも……そうだなぁ」


 俺は正直、これからのことをあまり考えていない。

 なんていうか、考えられない、と言ったほうがいいんだろうか。非日常な生活をしてみたい、という考えがそうしているのか……。

 こいつと一緒に都会か……などと考えていると清は声を潜め顔を近づけてくる。


「なあなあ」

「なんだ?」

「そろそろ夏休みだろ?」

「うん」

「夏休みって言ったら、何だと思う?」

「……スイカ?」

「いやいや! やっぱ夏って言ったら水着だろ!」


 そこは虫好きだから虫取りとか言ったほうがいいんじゃないか? と思ったが、虫取りって夏以外にもできるからまあいいか。


「それで?」

「俺さ、そろそろ告白しようって思っているんだ」

「……誰に?」

「決まってるだろ。さなえだよ、天宮あまみやさなえ!」

「あぁ……なるほど」


 同時に斜め迎えの席で他の女子と楽しそうに会話をしている茶髪の少女を見る。

 天宮さなえ。

 小学校二年の時に都会から引っ越してきた少女。子供が少なく、都会のことが知りたかった俺達は積極的にさなえへと話しかけ、すぐに友達になった。

 

 見た目はおっとりとしたお嬢様系、なのだが実を言うとアニメや特撮などが大好きで、熱いバトルものやヒーローの話をすることが多い。

 だから、男達に混ざって昔はヒーローごっこをよくしていたものだ。

 中学三年生にもなれば、やはり体も大人に近づいていく。

 胸は制服の上からでもわかるほど大きく張りがあり、肩まで届くさらさらな髪の毛はそよ風で靡き美しい。

 当然教室の男子や、他の男子からも大人気。

 というか、俺が……いや他から見てもこのクラスの女子はレベルが高いと思う。なので、他のクラスの連中もよく気にしている。

 俺のクラスは男子が五人、女子が四人という構成だ。

 

「さなえに告白ねぇ……」

「あ、ふられるって思ってるだろ?」

「うん」


 さなえは、恋よりも友情派らしい。

 女の子として恋をしたいという意識はあるらしい。でも、びびっとくる相手が見つからないから今は友情に生きる。

 お隣さんな俺に、よく話していたことだ。


「くそう……! 見てろよ! これからの夏休み中に俺はさなえに告白し、恋人同士になる! そして、一緒に夏祭りに行って、花火を見て、海に行って水着がぽろりなハプニングを目撃! そんな日々を送り、ゆくゆくは……」

「おーい、松下ぁ。さっさと席につけー」


 変な妄想に浸っていると、先生が到着。

 さてはて、今日も変わらない毎日が始まるのか……。


「あーあ。なにか、起こらないかなぁ……」


 と、呟いた刹那。


「な、なんだ!?」

「なにこれ!?」

「う、うわああぁ!?」


 一瞬の内に、教室中の床に何かが広がる。

 まるで、蛍が大量にいるかのように光の粒子は待っている。俺は、思わず立ち上がる。そして、床に出現しているそれを見詰めた。


(こ、これって……ファンタジーでよくある……魔法陣!?)


 謎の現象に、生徒達は動揺を隠せないでいた。

 俺の前にいた清も頭を抱えておろおろしている。

 だが、俺は期待に胸を躍らせていた。

 いや、俺だけじゃなかった。

 ちらっと斜め迎えを見ると、もう一人。


「これってもしかして!!」


 さなえだった。

 さなえも、俺と同じく期待に胸を躍らせていた。


「ねえ! 飛鳥くん! こういうのって異世界に転移するっていう展開なんだよね?! ね?!」


 まったく、このお嬢さんは……。

 皆が混乱している中で……でも、俺はさなえの気持ちがわかる。こんな展開、普通はない。だからこそ、わくわくが止まらないんだ!


「ああ。もしかするとクラスごと転移して、そのまま俺達はスキルを取得! なんて展開が待っているかもしれない!!」

「わぁ! どんな能力なのかなぁ。楽しみだなぁ」


 互いに手を握り合い、にっと笑う。

 

「なんでだ! 教室から出られないぞ!!」

「窓も開かない! どうして!?」


 そして、光は最高潮へと。

 これから転移が始まる。

 俺達は異世界に!!


「―――――あれ?」


 異世界に……ん? あれ? 俺は、唖然としていた。

 それはなぜか? 

 先ほどまで、生徒達の悲鳴が響いていた教室。

 魔法陣が広がっていた教室。

 今ではしーんっと静まり返っている。ただ、変わったところといえば……俺以外、生徒達がいなくなったというところだ。


「これって……つまり」


 俺は誰もいない教室で一人理解した。


「俺だけ転移できなかったってこと?」


 冷静だった。

 俺は冷静に、言葉を発した。

 だが……それも一瞬。

 俺は体を震わせ、思いっきり叫ぶ。心の底から……。


「なんでだあああああああっ!!!」


 バン!!


「うお!?」


 先生……ではない。

 まったく初見な人物が教室に入ってきた。でかい音にびっくりした俺は、教壇の前に立つ男を見詰める。

 いや男? かもしれない。

 だって、どう見てもあれ全身黒タイツだし。素顔すら見えないから男と判断するのは難しい。股間の辺りがもっこりしているわけでもないし……。


「な、何者だ?」

「私は、先ほど魔法陣を展開させた者です」

「……それが本当だったら、あんたに聞きたいことがある」

「なぜ、あなただけが転移できなかった、ですか?」


 まるでマネキンのように微動だにもしない全身黒タイツに俺は、警戒心を高めながらも首を縦に振る。

 そうだ。

 どうして俺だけが転移できなかったのか。

 それを今はどうしても知りたい。まあ、他にもどうして転移させたのかっていうことも聞きたいところだが……。


「それは簡単なことです。あなたの力が私の力を撥ね退けたからです」

「俺の、力?」

「はい。あなた自身、お気づきになられてはいないと思いますが、あなたは神の子なのです」


 俺が、神の子、だって?

 

「冗談、じゃないよな?」

「私は、冗談が嫌いです。ですので、真実のみを告げています。あなたは神から生み出された子です」


 マジで……俺って……神の子!? 

 やべぇ、体が震えてきた。

 

「じゃあ、俺の親は」

「いえ。あなたの親はただの人間。神ではありません」

「でも、神の子ってことは」

「神の子と言っても実際、人間などと同じように親から産み落とされるとは限らないのです」


 じゃあ、俺ってどうやって生まれてきたんだ? 今、暮らしている親はいったい?


「あなたは、想像の集合体。所謂、非現実な想像が集まり出来上がった存在。それがあなた」

「非現実な想像……」

「例えば、魔法や剣の世界に行きたいやロボットに搭乗して戦いたいなどの想像。平凡な生活を送っている中で、誰も一度は想ってしまう非現実。それだけあって、あなたの力はとても強く必要だった。だから転移させようと思ったのですが」


 俺を転移させようとした? 待て待て。こいつの話から察するになに? 本当は俺だけを転移させようとしていたってことなのか?

 それが、失敗して俺以外の生徒達が転移してしまった。

 

「じゃあ、皆は巻き込まれただけってことなのか!?」

「はい」

「いや待て、そもそも、俺に何も説明せずに転移させようっておかしくないか? 普通なら、ちゃんと俺に話をしてだな」

「他の者達もやっていたことなので、私もやってみたかったのです」


 そんな理由で……まあ、クラスごと転移とかの展開って突然起こったり、神様に無理やり転移させられたりとかが定番だもんな。

 しかし、俺の力が強かったために皆は巻き込まれてしまった。

 今頃、皆は魔物達がうじゃうじゃいる異世界で大混乱を起しているに違いない。この全身タイツにまだまだ言いたいことは山ほどあるけど、今は皆の救出が先決だ。


「おい、全身タイツ! 俺は、自分で異世界にいけたりするのか!?」

「可能だと思います。あなたは想像の集合体。創造神により創造された神の子。次元を超えることは、容易だと思われます」


 俺って本当にすげぇんだな。

 皆の想像が集まって出来上がったのが、俺か……。創造神様とやらも、味な真似をしてくれる。だが、そのおかげでこの平凡な日常から抜け出せる!

 ありがとうございます、創造神様! そして、皆!


「じゃあ、教えてくれ。皆が転移した世界は? そして、どうやったら次元を超えられるんだ?」

「転移先は、異世界ルストリア。君は、想像するだけで次元を超えられると思われます。今、あなたにルストリアの情報を与えます」


 きょきっと右腕が伸び、手に平から地図が出現。


「そこがルストリア。さあ、想像してください。そうすれば道は開かれるでしょう」

「想像……想像……」


 このルストリアに行きたい。

 次元を超えたいって想像すればいいのか? いや、これが願望か。じゃあ、ここからどんな風にルストリアへと行くか……。

 そうだなぁ……例えば、鉄の門から堂々と異世界ルストリアへと行く、とか?


 そう想像した刹那。

 目の前に出現する鉄の扉。

 ドラゴンなどの画が刻まれており、なんだが雰囲気はばっちりだ。だが、こんな想像結構日常的にしていた気がするんだが……。


「どうして、今まで力が使えなかったんだ?」

「人間から産み落とされ、人間界での生活に慣れすぎた、からでしょうか。力が使えるようになったのは同じ神の力と干渉したからでしょう」

「え? お前って神様なの?」

「今、ここにいる私は本物ではないのです。ルストリアから力の半分を切り離し動かしているだけに過ぎません」


 てことは、本物は全身タイツではない可能性があるか。

 さすがに、こんな全身黒タイツな神様はいないよなー、はっはっはっは。


「そっか。じゃあ、俺の友達を巻き込んだ責任としてルストリアに到着したら力を貸してくれよ。いや、とは言わせないぜ?」


 鉄の扉を開けながら俺はにやっと笑う。


「わかりました。では、ルストリアでお待ちしております。神の子よ」

「ああ!」


 一時はどうなるかと思ったが……ようやく異世界に行ける。

 しかも、俺が神の子ってことはめちゃくちゃ強いんじゃないか? 簡単に世界だって救うことができるんじゃないか? 

 そうしたら、女の子にもモテモテでハーレムなんかも作っちゃったり?

 だがまあ……まずは、皆を見つけて救出するのが先だ。

 

「待っていろよ、皆!!」


 わくわくと、皆を助けるという使命を背負い俺は鉄の扉を潜って異世界ルストリアへと旅立った。

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