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選択の連続

 異世界に転生してから、3か月が過ぎた。その中で、分かったことをまとめていこうと思う。

 まず俺の名前はルーク、ルーク・アルペンスというらしい。正直あまりなじめていない。

 次に俺の両親についてだ。どちらも銀髪で、どっちかと言えば嫁のほうが力が強い。

 母親の名前は、アンリ・アルペンス。ルビーのような赤い目をしていて、少し気の強い印象を受けた。髪は長く、さらさらとした銀の髪はとても魅力的だ。

 また父親はハルク・アルペンス。切れ目で整った顔をしているが気が少し弱く馬鹿な印象を受けた。前世のナイスガイの某映画にでてきた怪物とはえらい違いだ。髪はベリーショートで瞳は、エメナルドのような澄んだ深緑だ。

 どちらも美男美女なので、俺の顔にはとても期待ができる。もちろんこの世界のイケメン平均値が分からないので俺の推測でしかないが。

 そして俺の血統について。俺の血統は戦乙女族というらしい。生殖活動をしても必ず女しか生まれない族でまさにアマゾネスみたいだ。これで戦闘特化された一族なら、いろいろと被っている。また、この戦乙女族はルールがあり、男が生まれた場合、呪い子としてその赤ん坊は始末されるらしい。このルールがあることから以前に男が生まれたことが推測できるが、なぜ男の子なら始末されるのか、そこはまだよくわかっていない。

 そして俺の生活環境について、これは今も変わらずあの真っ白な部屋で暮らしている。どうやら俺は匿われているらしい。ここは両親に感謝しなければならない。妹と再会する以前に、人生フェードアウトするなんてまっぴらごめんだ。

 あれからアンリとハルクの二つの椅子がこの部屋に追加された。そしてアンリがぬいぐるみ、みたいなものを持ってきてくれた。みたいなものとは、ぬいぐるみとは形容しがたい不格好なものだったからだ。アンリの手作りらしいが、アンリにそっちの才能はないらしい。

 食事は、もちろんアンリの乳で、最初は抵抗があったが背に腹は代えられず、今ではおいしくいただいている。余談だが、アンリの乳はでかい。

 これが大体の状況だ。まだこの白い部屋からは一歩も出てないので、外がどうなっているのかは全く分からない。アンリとハルクはこの部屋に約一時間ごとに様子を見に来ていることから、一軒家っぽいが。

 そして、今一番困っているのが、暇で暇で仕方がないことだ。ろくに体も動かせないので、楽しみといえば、アンリとハルクが一緒に面倒を見てるときの世間話しかない。寝るのも飽きて、なんだか家畜の気持ちが分かったような気がする。




それは異世界に転生して、五カ月が過ぎた時に起こった。日付はよくわからないので、一カ月を三十日として考えている。俺は、首を持ちあがる程度には成長したが、まだハイハイには程遠い。そして今は、アンリとハルクが一緒に面倒を見てくれているがいつも以上に雰囲気が重い。ハルクが浮気でもしたのだろうか。

 いつもより真剣みのある声でハルクが言った。


「アンリ、族長と話してきたよ。率直に言う、俺たちはこの子を育てることができない」


 俺はその言葉を聞き、耳を疑った。育てることができない、イコール死だからだ。

 ベットからわかる範囲でだが、アンリが泣いているように見える。アンリとハルクは二つの椅子にお互いに座っている。 

 それにしても妙だ、なぜ俺のいるこの部屋で話すのか。それにさっきからハルクが持っている黒い箱と白い箱も変である。


「アンリ、心配することない。俺は族長を説得して、一つチャンスをもらった」

「何? どっちにしても私たちはこの子を育てられないんでしょ! チャンスも何もないじゃない!」

「落ち着いてくれ。族長はこの子に生きる可能性をくれたんだ」


 二人の声は震えている。アンリは涙し、ハルクも我慢しているようだ。

 それにしても、生きる可能性? どういうことだ?


「ハルク、どういうこと? あの族長が情けをかけたってこと? そんなのありえないわ。あの人は、族の繁栄にしか興味ない。薄情な人よ」

「それがどういう風の吹き回しか、この子にはチャンスが与えられたんだ。まぁ、これがチャンスというのかは分からないが」


 ハルクはそういうなり、俺のいるベットに近づき横に白い箱と黒い箱を置いた。大きさは、大人のこぶし一個分の小箱だ。


「アンリ、これから儀式を始めるよ。今から、この子に白い箱と黒い箱を選んでもらう。白い箱を選んだ場合、この子は貧困街に捨てられる。そして、この黒い箱を選ぶと、この子は今すぐ死ぬ」

「待ってハルク! こんな急にどうして? もう少し待ってもいいじゃない! どうして今なの? それにこの子にまだ自我が芽生えてないし、どっちの選択もこの子は死ぬじゃない! そんなのは選択とは言わないわ!」


 急展開過ぎて、ついていけない。何を言ってるんだこの二人は、儀式? 選択? まだ生後五か月だぞ、これを提案した族長ってやつは頭がいかれてる。


「落ち着けアンリ! この子は戦乙女族に生まれた男なのに、自我がなくとも選択のチャンス、また運が良ければ生きていける道が用意されたんだ。それだけでもありがたいと。思わなくちゃ....いけない」


 ハルクは我慢できなくなったのか、アンリと同じく泣き始めた。声を押し殺し、何もない白い天井を見上げている。

 俺はこんな状況だけど、少しだけ嬉しかった。だって、望まれて生まれていなくても愛されていたことは分かったから。短い五カ月だったが、それでも両親のぬくもりを感じるのには十分だった。それに、今すぐ死ぬわけじゃない。貧困街に捨てられるを選べば、今はまだ命を繋ぎ止められるんだ。まぁ、すぐに死ぬかもしれないが。そして、目の前の大の大人が大泣きしていることもあり、俺の頭は冷えていた。


「アンリ、今すぐ始めるぞ。一時間後に確認のため族の使者が来る。その前に終わらせなくちゃ、俺たちも死ぬぞ」

「納得できないわハルク! なんでこの子ばっかりがつらい目に合うの? そんなのあんまりじゃない! あなたと私なら族の使者でも太刀打ちができるわ。戦いましょう!」

「すまない、アンリ。このままじゃ埒が明かない。少しの間眠っていてくれ [眠れる子羊よ、この者にしばしの休息を] 」

「やめて、ハルク! 一緒に戦い....ま」


 俺は何が起こったのか、さっぱりわからなかった。ハルクが何かを口ずさんだとたんにアンリが眠り始めた。これじゃ、まるで。


「ルーク、すまない。こんな無力な父親で、こんな不甲斐ない父親で。でもこうするしかないだ。恨むなら、恨め。俺は一向にかまわない」


 ハルクの顔は苦汁をなめたような顔だった。涙と鼻水が合わさり、整った顔もこれじゃ台無しだ。

 さっきの超常現象みたいなものは置いておくとし、まずはこの儀式とやらだ。選ぶだけならいいんだが、いまいちこの儀式には要領を得ない。第一に俺が選んだというのは、一時間後の使者にどうやって確認させるんだ。


「では始めるぞ! [契約させし悪魔、アルゼ。ここに我の願いを聞き届けよ] 」


 ハルクがそう言った瞬間に俺の手元にある二つの箱が黒く光りだした。すると、二つの箱の上に魔法陣みたいな幾何学的な模様が浮き出てきた。


「選べルーク。白い箱は、貧困街に捨てられる選択。黒い箱は、今すぐ死ぬ選択だ。どちらかの魔方陣に手を置け。一時間は待って選ばなかったら、俺らも一緒に天国行きだ。まぁ、この話の一割も理解できていないか」


 理解してるぜハルク。それにしてもえらいところに生まれたな俺は。どんだけ運が悪いんだよ。もう魔法みたいな現象にも驚かなくなっている俺は、重症だな。

 決意はもう決まっている、神にも宣言した通り俺はあきらめないことにしたんだ。なら選択は、一つしかない。

 それにしても、ハルクはもうちょいましな顔はできないのか。さっきからずっと顔が崩れていて、父の威厳どころじゃない。でも、いい奴ってことには変わりはないんだろう。


 そして俺は、手を白い箱の上の魔法陣に乗せた。


「そうか、また会えることを願っているよルーク。愛しているよ」


 何言ってんだこいつは今すぐ俺が貧困街に行くようなこと言って。それになんだその笑顔は、ちょっとおれも泣けてくるじゃねーか。


 その時、俺の体が白く光り始めた。どんどん、俺の手が薄くなっている。


(ちょっとまてぇぇぇぇぇぇ! おい! まさか、ルー〇みたいに今すぐ移動ってことはねーだろうな!)


「初めて、泣いてるところ見たよルーク。もしかして言葉を理解してるのか? まさかな。まぁでも、俺の子だからなそんなことあってもおかしくないか」


 そして、俺の意識はその言葉を聞きだんだんと遠のいていった。

 

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