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ディクス=カートラスという名前をもらって早5年。
成長とともに、自分がこれから生きていく世界がどういうものか、ゆっくりと判っていった。
この世界は基本的に地球に酷似した環境であり、そこの住む人間も見た目は地球人を殆ど変わらない。
容姿的には欧米・アジアンのハーフという風貌だった。
言語は聞いたことは無いものだったが、文法的には日本語に近くイントネーションも日本語寄りだった。
文字は存在していて、記憶媒体は主として木板・粘土板であった。また、高級品としてパピルス紙の様な物が使われていた。
文化水準的には中世の初期、古代ローマ時代よりは進んでいる程度だと推測できた。
住んでいる集落は20戸程であり、各家に3世代7~8人程の人間が住んでいた。
家屋は土台に石と土壁、その上に木造や藁の屋根を葺いており、どちらかと言うと古きアジアを思わせた。
家の周りには何かしらを育てている畑があり、規模としてはそれなりに大きさだった。
自分の家族は両親に父方の祖父母、兄が二人、姉が一人の八人家族。
またどうやら、この集落を取りまとめている村長の一族だった。
魔法と呼ばれる超常的な能力も存在しているらしい、ただ村内には使える人間が居らず詳しいことは全くわからなかった。
5歳になった時、ここが現実で自分が輪廻転生したのだと結論づけた。
仮想現実世界にしてはあまりに現実過ぎた、少なくともコレほど完璧な世界を作れる技術は存在してなかった。
そこで、気持ちを切り替えてこの世界で生きていく準備を始めた。
村長の家なので書斎が存在していたが、4歳になるまでに殆ど読み終えてしまった。
文字を読めるようになって1年しか経っていなかったが、蔵書の数が大したことなく…ほんと大したこと無くあっさり読み終えてしまった。
少々物足りなかった、村の歴史と動植物図鑑、神話と魔物の事位しか情報として手に入らなかった。
前世ではマスターの命令で、馬鹿みたいに情報を詰め込んでいた事を思いだした。
料理のレシピから量子力学まで、のべつ幕無しに情報を打ち込まれた。
今思い出すと暗殺稼業に何の関係があるんだって言うものもあった。
足がつかないように刃物を自給自足するために鍛冶を教えれたのはいいとして、ガラス工芸なんて教えられても使った記憶が無い。
出来る限りの情報収集をした結果、この世界には魔物と言われる動物とは違う存在が居ることが分かった。
核と呼ばれる結晶を持ち、人間に対して凶暴な魔力を帯びた生物の総称で稀に魔法を使うと言う厄介な存在だ。
そんな存在も居ることだし、昔のように身体を鍛えることにした。