序章
のんびりまったり進めていきます。
1
---爆音が鳴り響いていた。
業火によって全てが燃えていた。
炎の中に一人の男が佇んでいた。
彼の居る場所は、彼が敵として認識した組織の研究所と言われる施設だった。
しかし、そこは既に業火にまみれ朽ち果てようとしていた。
たった一人の男によって、施設に居た組織の組員・所員100人以上がモノ言わぬ躯となっていた。
既に倒すべき敵は存在していなかったが、それでも彼はそこから動かなかった。
何かを待つかのように、崩壊する施設の中で、ただただ立ち尽くしていた。
炎に晒された手足は焦げ始め、爛れていく。それでも彼は表情も変えること無く動くことなかった。
ただ彼は視線を落とし、その手に持つ”何か”を…血塗れの”何か”をじっと見つめていた。
…それは彼の育ての親とも言える者の頭部だった。
程なくして建物が悲鳴をあげ始め、遂に研究所はその形を保つことが出来ずに崩れだした。
燃料庫にでも引火したのか、ひときわ大きな爆音が轟き響く。
炎の高温に耐え切れず、コンクリートの天井は巨大な塊となり降り注ぎ始めた。
そして、無慈悲に、容赦なく---彼を飲み込んだ。
「・・・」
最後の時まで彼には何の感情も存在していなかった。