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Bitter sweet coffee  作者: Rui
2/3


(来た)


パタパタと扉に駆け寄り鍵を開ければ


『よぅ』


相変わらずそっけない挨拶をして

するりと部屋の中に入ってきた。


「おかえりなさい」


この言葉の使い方は正しいのだろうか。

ここは彼の家ではないし、毎日来るわけでもない。


でも、なんと声をかければいいかわからないから、

いつもこう言ってしまう。


鍵を閉め、

先に行ってしまった葉を追いかければ

我が物顔でソファーに身を預けている葉。


狭いソファーに大の字で座っているから

私の座るスペースなんてない。


まぁ、隣同士で座るなんてまっぴらごめんですが。


「徹夜したの?」


目をつぶったまま、うごかない葉に声をかければ


『や、4時くらいに寝た。今日午後だったから』


……。不健康すぎる。


葉は、ゲーマーであり、パソコン大好き人間である。

いまはデザイン系の大学に通っている。まぁ詳しくは知らないが。


昔から2時や3時に寝るのは

当たり前の男であったから、

今日特別心配するわけではないが、

不健康であることには変わりはない。


『腹へったー』

そう言って私の方を見てくる葉。

「言葉が足りません」

『お腹が空きました。

恵んでください。女神様。』


なぜ彼がこの家に定期的に来るのか。

その理由はただ一つ。

飯を恵んでもらうため。

それ以上も以下もない。

カップラーメンやら

コンビニ弁当やらで生きている、

彼の偏った栄養を補うべく、

私の家にやってきては

食事を摂るのだ。


「よかろう。しばし待たれよ」

『うす。』


つくづく会話の少なさを実感する。


用意をしてる間、

葉はソファーでくつろぎながら

テレビを見ているらしい。


スープを温め、バケットを焼く。

キッチンを、包む美味しい香り。


我が家には

ダイニングテーブルなんてものはないので、

ソファーの前に置いてある

ローテーブルに運ぶ。


「できたよー」

『……』


返事がない。


「寝とるんかい。」

リラックスしてくださってるのは

大変ありがたいですが!

君のために食事を用意したのだけれど!


とはおもいつつ、

かわいいなぁと思ってしまう。


「おら、起きろ」

思いっきり蹴り飛ばしてやった。


『いっつぇ!!!』


ざまぁ。


『うぉーいい匂いーーーー』

「本日のメニューは、秋鮭のクリームシチューです。召し上がれ」

『いただきます』


目の前で自分の料理をたべてくれると

すごくうれしい。

美味しい美味しいって言ってくれると特に。


『ごちそうさまでした』

あっという間に平らげた葉。

少なかったかなと不安になったが

『満ち足りたわー。腹一杯。』

というお言葉をいただき、とりあえず安心。

私はとりあえず食べることに専念する。

「お粗末様でした」

『お前食べんの遅いのな』

「食い盛りの男と一緒にするな」

『……。』

返答がないのでふと皿から顔をあげれば

『っははははは!!』

「何!?!?」

『ついてるよ。口のよこ』

「え!?」

『とれてない。待てって』

葉の手のびて取ってくれた。

「あ、りがとう」

『どういたしまして』


葉がやたら見てくる。


あ、やばい。これ、ダメなやつだ。

そらさなきゃいけないのにそらせない。


『ねぇ。シようよ』



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