碑文(プロローグ)
古の昔、世界には《黒の色》で溢れていた。
天も地もなくただ、厄災や死、《黒の色》に導かれた混沌だけが存在していた。
人々の苦しみ、おおよそ絶望だけがはびこっていた。
そこに、心を痛めた魔導師たちがいた。
魔導師たちは、人々から絶望を取り除くために、それぞれ《影》を生み出すことで《光》を得ようと考えた。《光》と《影》は裏表の存在。ならば《影》を作り出すことで、《光》も作り出せるはずだ、と。
しかし、それは困難を極めた。
生み出された《影》は、大規模な間伐、飢饉、雨不足、不作や疫病、人々に不信や憎しみを与えた。さらなる混沌を世界は与えられ、人々の苦しみは日々増していくだけであった。
やがて、六人の魔導師が《影》の討伐に乗り出した。
彼らは自身の命と引き換えに、どうにか《影》を収めることが出来た。
朽ちた彼らの身体は、六つの《色》となり、世界に新たな秩序をもたらした。
《光》が差し込んだのだ。
たった一条の光が。
人々はその光の下で幸福に暮らすことができるようになった。
六人の魔導師は、畏敬を込めてこう呼ばれることになる。
《六色の魔法使い》と――。