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ゼロの男の物語  作者:
6/32

ギルドでの物語

う〜ん、難しいもんですな…


アーガルドに着いたのは出発してから二日経った夕方のことだ。

予定よりも早く到着した。

また魔物に襲われてはならないとペースを速めたことが要因らしい。


商隊の連中とは先程別れた。

なぜかCは無性にいらつく。

今となってCの頭を吹っ飛ばせなかったことに若干の後悔を感じている。

銃弾の金はしっかりと女が払っていた。

なんとも律儀な奴だ。


「では、ギルドに行きましょうか。」


女が話しかけてくる。


「それより、飯だ。案内しろ。」


そして金を払え。

昼にパンをひとつ食べた(いちいち商隊からリーラが買っていた)きり、何も口にしていない。

ギルドなんていつでも行けるだろうから、まずは腹ごしらえが先決だ。


「同意したいところですが無理ですわ。」


女からの否定の意見に眉根を寄せるが、仕方ない…話だけは聞いてやろう。


「なぜだ?」


俺の問いに女は袋を持ち逆さまにする。

あれは、たしか女の財布の袋か…

そこから女の手に落ちたのは銅板2枚に銅貨が3枚。

全部で230Rしかないではないか。


「この通り、な・ぜ・か、弾丸を一発も所持していなかったあなたのために所持金の大半がなくなりましたの。ですから先にギルドへ行かなければ食事代すらありませんわ。」


なぜかの部分を強調して女が言うが、銃の弾が無くなるなんて有り触れたことではないか。


「仕方ないな。では先にギルドで用事をすませよう。」


俺の財布である女に金がないとは由々しき事態だ。

まあ、いつでも行けるということはいつ行っても変わらないというわけだ。

俺達は早速ギルドへ向かう。



アーガルドという都市は周りを壁に囲まれており、東西南北それぞれに入口である門がある。

ちなみに俺らが入ったのは東門からだ。

そしてその門を抜けた先にあったのは先日の町、確かヤムゥとかいったな。それとは比べるまでもなく多い建物の姿たちだ。

それを立ち並ぶ街灯が夕暮れで薄暗くなりはじめた町を淡く照らしている。

時間のせいもあるだろうが人通りもそれなりにある。

俺は町を眺めながら女のあとに続いて歩く。

残念ながら今のところ俺の記憶にはなんの刺激もない。



「ここがギルドですわ。」


女がひとつの建物の前でこちらに振り向く。

見ればその建物は周りの建物に比べれば幾分か大きい。

建物には看板が掲げられているがやはり文字は読むことができない。だがドラゴンであろう生物の顔と剣の絵が描かれているのは問題なくわかる。ギルドは世界中にあるしいがこの絵は共通なのだろうか。それなら別の町に行った時も解りやすいのだがな。

女はその建物の中に入っていく。俺もそれに続いて中に入った。

ギルド内はそこそこ広く、受付のカウンターであろうものが5つ並んでいる。しかし、左から2つめと3つめのカウンターの間に仕切りのようなものがある。おそらくだが扱っていることが違うのだろう。


「あなたはそちらですわ。」


女が左側の2つのカウンターの方を指差す。

右側の3つはわりと混んでいるがこちらはそうでもない。というかこちら側は全く並んでいない。

言われた通りに左側のカウンターに向かう。

女は右側のカウンターのうちのひとつの列の後ろに並んだ。


「いらっしゃいませ。新規ですか?再発行ですか?」


受付カウンター内にいた女が話しかけてくる。


「新規だ。」


以前に登録しているかもしれないが、あいにくと覚えていないのだから仕方ない。


「かしこまりました。ではこちらの用紙に記入をお願いします。」


そう言って用紙とペンを差し出す。

ちっ、面倒だな。


「お前が書け。」


そっくりそのまま突き返す。


「えっと…ギルドに登録してもらうには書いてもらわなきゃダメなんですけど…」


女が困ったように言う。

なんだこいつは…

一から十まで言わなきゃわからんバカか。


「だから代筆しろと言っている。」


それでようやく理解したのか女は自分の方に用紙を向けてペンをとる。


「察しが悪くてすいませんでした。いやあ、私のこと書くの?って焦っちゃいましたよ〜。もう、代筆なら代筆って言って下さいよ。あっ、もしかして恥ずかしかったんですか?大丈夫ですよ〜。時々いるんですよ。字が書けない人。」


やはり来たか、無教養扱い。まあ、こいつごときに訂正するのは面倒だし放置だ。


「ではまずお名前をお願いします。」

「ゼロ」

「ゼ、ロ、っと!では次にどなたかの推薦などはありますか?」

「推薦?」


女の質問に問い返す。


「はい、本来なら新規の登録者は全員最下級のGランクからなのですがEランク以上の方の推薦があれば初期の段階で1ランク上のFランクから始められるんです。」


なるほどな。どう違うのかはよくわからないがそちらのほうが得なのだろう。

それならば


「ちょっと待ってろ。」


受付の女にそう告げるとリーラという女の元へ向かう。


「ちょっと来い。」


俺はリーラの腕を掴むと問答無用で引っ張る。


「ちょっと!何ですの!」


リーラは声を荒げ抗議の声をあげるがそんなことはどうでもいい。


「こいつが推薦者だ。」


そういって受付の女の前にリーラを突き出す。

そういうことですの…とリーラが言うが、そういうことだ。


「では、推薦者様のギルドカードの提示、それから登録名とランクをおっしゃって下さい。」


それを聞いたリーラは受付に白いカードを渡す。


「リーラ=フラウン、ランクはDですわ。」


リーラが名前を告げると受付の女は手元で何か操作をする。


「はい、結構です。推薦の正当を確認しました。」


受付の女はリーラにカードを返す。

どうやらリーラの出番は終わりらしい。


「戻っていいぞ。」

「まったく…順番次でしたのに。」


ぶつぶつ文句を言いながら戻るリーラ。当然列の最後尾だ。


「では、こちらに手を置いて下さい」


そういって受付の女は俺の前に握りこぶしより一回りほど大きい黒い球を置く。


「なんだこれは?」

「あなたの指紋と魔力波長を記録するんです。」


つまりは個人情報の登録というわけか。


「それはいわゆる個人情報なのだろ?さっきのあの女の確認はしなくて良かったのか?偽物かもしれんぞ。」

「推薦くらい偽られてもどうということはありません。どうせ実力がなければ何にもなりませんし。それに依頼の受諾やお金の引き下ろしには認証は必ず必要ですから悪用はできません。」


俺の問いに受付の女は淀みなく答える。

いい加減なようでいて結構厳重らしいな。

俺は黒い球を握るように掴む。


「はい、よろしいですよ。」


十秒ほど握ると声がかかる。


「これで登録は完了です。では、次に簡単にギルドの説明をさせてもらいますがよろしいですか?」

「ああ、頼む。」


リーラに聞くのもひとつの手だが、職員に聞くほうが確かだろう。


「ではまずこれを…」


そういって受付の女は先程リーラが提示したカードと同じものを俺に渡す。


「これがギルド登録者の証、ギルドカードです。これは世界各国のギルドで使えます。また、身分証にも使えますし、ギルドに預けたお金の引き下ろしにも必要です。だからなくさないように注意してください。万が一なくしたらギルドで再発行できますのでその時は一万Rで承ります。あとこのギルドカードは違いますが、Bランク以上の方はランクごとにカードの色が違います。それぞれ受ける特典がありますからランクアップした時に詳しく聞いて下さい。以上でギルドカードについての説明は終わりです。質問はありますか?」

「金はどうやって預かってもらったり引き出したりするんだ?」

「はい、それでしたら隣の3つの受付のうちのどれかで申し込んでいただければ結構です。あっ、気をつけて頂きたいのはアーガルド支部は夜の11時で閉まっちゃうんですよ。そしたら朝の6時になって開くまではお金の引き下ろしとか依頼受けたり、報告は出来ないので注意してください。」

「わかった。次に進んでくれ。」

「では次は依頼の受け方ですが、後ろのボードに貼ってある依頼書のうち、自分のランクのひとつ上のランクの依頼まで受けることができます。そして受ける依頼の依頼書を隣側の受付に持って行けば係の者が勝手にやりますので。あとは実際に依頼を受けるときに聞いてください。次にランクについての説明をさせていただきます。ランクはポイントを300ポイントずつ貯めることで昇格していきます。そのポイントは依頼をこなすことで増やせます。同ランクの依頼ですと1ポイント、上のランクの依頼ですと2ポイントです。下のランクの依頼ですとポイントはありませんが報酬が1.5倍になります。」


報酬が1.5倍とは豪気だな。

いや、違うな。もしかしたら、もともとの報酬がそれなのではないのか。

それでポイントを餌に報酬額を三分のニにして残りは自分達の懐というわけか、これはなかなか…


「あくどいな。」


ぼろ儲けだろうな。


「お気づきになりましたか。でもそれがギルドの運営費になりますし、ひいては皆さんの為になります。……私のお給料にも(ボソッ)」


最後は聞かなかったことにしてやろう。指摘しても特に面白いことにはならない。


「では説明の続きをしたいと思います。依頼を失敗した場合ですが、失敗の条件は依頼によって違うのでその都度確認してもらうとして、ペナルティは一律10ポイントです。あとは報酬の一割程度の罰金です。ちなみに受けた依頼を途中でキャンセルする場合も同様です。あと説明しないといけないのは魔物の討伐に関してですね。魔物は倒したら証明部位を剥ぎ取って隣側のカウンターに持って来ていただければ換金します。あと、魔物にもランクがありまして、依頼の場合とポイントの関係はあまり変わりありません。ひとつ違うのは2ランク以上ランクが上の魔物を倒した場合ですね。でも簡単ですよ。ランクがひとつ上がるごとにポイントが倍になっていくだけですから。例えばですね、あなたのランクはFランクなわけですけど、Eランクの魔物を倒せば2ポイント。Dランクの魔物を倒せば4ポイント貰えるんです。そしてCランクの魔物なら8ポイント、となるわけです。ご理解頂けましたか?」


つまり、この前のミミズ共の証明部位とやらを持っていれば16×3で48ポイント手に入れてたわけだ。

ちっ、あいつらがまた襲われないうちにとそそくさと逃げてなければ…

いや、知らなかったし無理か…

リーラも何も言ってなかったしな。

まあ、今となってはどうでもいいことだ。

それよりも気になったことがある。


「討伐部位はどうやって調べるんだ。」

「大丈夫です。わかりますから。」


こいつは頭も言葉も足りないみたいだ。


「だからどうわかるんだ?」

「え?え〜と…魔物を倒したときに一部魔力が濃く残ってる部位があるのでそこを持ってきてください。倒せばわかりますよ。」


ずいぶんと抽象的だ。


「他になにかありますか?」


少し考えてから特にないと言う。わからなければリーラにでも聞けばいい。


「これらの他にパーティ登録という多人数で組んだ場合の説明もあるんですが、こちらはパーティを組んだ時に改めて説明するので、その時はこちら側の受付にパーティ構成予定のかた全員できてください。あっ、パーティー構成員の上限は5名までですから。」

「わかった。これでもう終わりか?」


受付の女に確認する。


「はい、本日の説明は以上です。」


ならばここに用はない。

振り返ると入口付近にてリーラがいた。

待っているとはご苦労なことだ。


「終わりましたの?」


リーラが俺の様子を見て話しかけてきた。


「ああ、お前も用事は済んだらしいな。では飯にしよう。ここにくる途中良さそうな店を見つけた。そこへ行くぞ。」

「どうせまた、(わたくし)が払うんですのね…」


リーラが何か言ってるが無視する。


というかお前が払うのは当然だろうに…


リーラを伴いギルドから出る。



俺のことに関しての情報収集はまた後日行おう。



まずは腹ごしらえからだ。



外ではすでに完全に陽が沈んでいる。



こうしてギルドへの登録はつつがなく終わった。



これは俺の初めてのギルドでの物語



結構二人の仲良し度は上がってます。まあ、三日一緒にいますし、問題ないくらいですよね?

やっと主人公の中で女→リーラへと移行しました。


次回はリーラ視点の予定です。

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