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ゼロの男の物語  作者:
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出会いの物語

ヒロイン登場(出番少なめ)

草木の生い茂る道なき道を進むこと3時間ほど、陽は中天に輝いている。

気温はさほど暑いわけでもなく過ごしやすいといえる。

草木の様子から考えて今の季節は春なのだろうか。

などと考えているとようやくまともな道に出ることが出来た。

まともといっても石が転がっていたりするわけだが、紛れもなく人の通る道である。

この森を抜けるために先人が開拓した道なのだろう。

あとはこの道をたどればいずれ人の住む場所に着くだろう。

問題は


「右に進むべきか、左に進むべきか……」


これに尽きる。

どちらがより少ない時間で人の住む土地につくのか皆目検討もつかない。

周りの木々が邪魔で遠くを見通すこともできない。

しかし悩んだのもほんの一瞬だ。

なぜなら俺の進む道こそが正道。正しいのだ。

そして今の気分は


「右だな」


そして向かって右へと足を進める。道は見るからに果てしなく続いている。


「今日中には人のいるところに着きたいものだな」


つい口から出た言葉は、何も寂しから人の温もりが欲しいといった理由では断じてない。

今、俺は猛烈に腹が減っている。そしてそれ以上に喉が渇いているのだ。

川とか湖的なものがあれば有り難くいただくのだが、そのようなものが現れる気配はない。

周りの森で調達すればいいと思うかもしれないが、俺は素人だ。下手なものを食してしまう恐れもある。そのため餓死する寸前まで森で食料を調達する気は毛頭ない。

まあ、何より俺が進むその先に遠からず人里があるはずだから無理をする必要がないと言う理由が九割だ。



俺の足取りは決して軽くはなかったが、ようやく森の中の道から出ることが出来た。

どれくらい歩いたのか定かではないが陽はほとんど沈みかかっており空を茜色に染め上げている。

さらには赤と青二つの月が空に姿を現していた。

ん?月って二つだったっけか。まあ、いいか。特になにか問題があるわけではない。

今、考えるべきは視界の先にうっすら見えるのは町ではなかろうかというものだ。

若干暗くなっており、なおかつまだ20キロほど離れているので俺の願望の見せる幻覚の可能性も少なからずあるが、町が見えたのは僥倖だ。

俄然気力が湧く。

だが決して走ることはない。

そのような力の無駄遣いはアホのすることにほかならない。

人の体力は無限ではないのだ。



歩けば歩くほど目に入る町の姿は大きくなる。

陽はすでに完全に沈み暗い夜空を照らすのは淡い月の光と星たちの輝きのみだ。

町に向かって進むこと体内感覚で4時間ほど。

やっと町の入口に着いた。

喉は渇いているし、腹も減っている。

さっさとどこか飯が食えるところに行きたいわけだが如何せん持ち合わせがないことに今さらながら気づく。

となればやることはひとつしかない。

俺はあたりを見回しながら町の中を練り歩く。

と、そこに大声で笑いながら歩いているはた迷惑な鎧姿の3人組が目に入る。


「ふむ、あいつらでいいか」


俺はその男達に近づいていく。



「おい、そこの3人止まれ」


俺の制止の声に3人が振り向く。

そして俺の姿を見て、さらに自分達の周りを見回してようやく声がかけられたのが自分達であることに気付いたようだ。


「俺達に何か用かな」


一番体格のいい男が俺に話しかける。

こいつがリーダーなのだろう。雰囲気がそんな感じだ。

顔は醜悪だが。

それよりも俺は内心ひそかに安心していた。

最悪言葉が通じないことも考えていたからだ。

しかし、言葉が通じることから考えれば俺の記憶喪失は軽いものなのだろう。むしろ喪失ではなく欠落といったほうが正しいのかもしれない。


「おい、なに無視してやがる」


先程よりも強い口調で俺に向かって男が話しかけてくる。他の二人も怪訝そうにこちらを見ている。

どうやら思考にふけって彼らを蔑ろにしていたらしい。


「黙れ。臭いから口を開くな」

「んだと!」


俺の言葉に男は怒りをあらわにする。他の二人も俺に対して怪訝な視線から敵意の視線に変わりつつある。

まあ、そんなことはどうでもいいことだ。


「黙れと言った。俺の用件は一つだ。金を置いて失せろ。さもなくば殺す」


馬鹿でもわかるような懇切丁寧な発言だ。さすが俺と内心感心したほどに。

しかし男達から返ってきたのは大音量の笑い声だった。


「馬鹿かテメエは。俺らは冒険者だぞ? その俺達に向かって金を置いていけってマヌケ過ぎるだろ。しかも殺すときたか。馬鹿の極みだな。ん? よく見りゃ、ボロボロな格好してやがる。食うにも困って強盗のまね事か。相手見て喧嘩売れよ、ぼくちゃん」


男の挑発的な言葉。

判決、死刑。

死ねと小さく呟きながら腰にある銃を引き抜き、男の額に照準を合わせると同時に引き金を引く。

そして男は額に風穴を開けて倒れ………なかった。

というか弾丸が発射された形跡も感触もない。

そこで俺はある重要な事実を認識する。

それはすなわち残弾の確認をしていないことだ。

手持ちは銃以外に持ち物はなかったから銃に入っていなければ弾はない。

俺の持つ装飾銃はリボルバー式ではあるみたいだが、残弾の確認はできない様に作られている。

しかし高確率で弾は入っていないだろう。

思い返せば引き金引いた時、カチッとか音したような気もする。

壊れたという可能性もあるがどちらにせよ銃という役目はこなせない。


「あん? なんだこりゃ。おもちゃか?」


男が突き付けられた銃を見ながら言う。何故か汗が凄い。不快だ。

しかし、どうしたものか。

一般的に見れば弾なしや、壊れた銃など荷物でしかなく、いらない子発言されて然るべき存在だ。

だがこの銃は俺という存在の手がかりである。まあ、それ以前に手放すつもりなど今だ微塵も浮かんでいない。

結論からいえば鈍器としてこの銃を使用し、こいつらを殺そう。

そう思っていたところ。



「そこで何をしているんですの!」



横から声がかかる。女の、それも若いであろう声に視線だけを向ける。銃は相変わらずリーダー格の男の額に狙いを定めている。別段特に意味はないが……

声の主はやっぱり女だった。

しかし驚いたのはその容姿。

薄暗い中で光でも放ちそうな淡い金色の髪をポニーテールにして、体は赤い軽鎧に身を包んでいる。

目は釣り目がちで彼女が強気な性格であればこの上なく似合うだろう。鼻や口のバランスを考えれば10人が10人とも美人だと言うだろう。

しかし彼女の容姿で特筆すべきはなんと言っても左右で色の違う瞳の色だろう。

右目は炎の様に朱く、左目は海のように蒼い。

吸い込まれそうとはこのことを言うのだろう。

まあ、だからどうした。ではあるが…


「なんだ姉ちゃん。ナンパなら後にしてくれ。いまからこのふざけた小僧に教育的指導しなきゃならんからな。そのあとだったら朝までじっくりねっとり相手してやるからよ」


下品に笑いながらリーダー格の男が女に言う。

他の二人はずるい。や、俺も混ぜてください。などと言っている。正直気持ち悪い。


「あら、せっかく助けに入って差し上げたのに随分な言い草ですわね」


女は男達の言葉をあっさりと受け流す。言われ慣れてんだろうな。


「はははっ。嬢ちゃんよ、正義の味方ごっこは結構だが喧嘩を売ってきたのはこの小僧だ。だからこの小僧に助ける価値なんかねえよ」


リーダー格の男が女に言う。その男の反応に女は少し驚いた表情を浮かべたがすぐに微笑むと俺に視線を向ける。


「何を勘違いしているか知りませんが、(わたくし)が助けに来たのはあなたたちですわよ?」


その言葉に男達はまた笑い声を上げる。

正直耳障りで不快だがここで俺が発言するのは空気が読めてない行為だろう。

だから流れに身をまかせることにした。


「俺達を助ける? 馬鹿がもう一人出やがったか。顔はいいのに勿体ねえなぁ。物事ってのはちゃんと状況を見てから言えよ」

「状況を見るのはあなた方ですわ。理解していないだろうから教えて差し上げますけど、そちらの方があなたに向けているのは古代兵器たる銃ですわよ。その方の指が後一ミリでも動けばそこのあなた! 死にますわよ」


ビシッとリーダー格の男を指さして女が言う。俺は古代兵器のあたりでひっかかったがそういうもんなのか、と空気を読んで口をつぐんだ。

対する他の反応は

リーダー格の男。汗がさらに吹き出す。不快。

リーダー格の男の左側の男。理解してないらしくあきらかに?が浮かんでいる。キモい。

リーダー格の男の右側の男。異常に震え出す。ウザい。


「あ、あにぃ……銃っていやぁ使い手なら例えガキでもドラゴンを単独で殺せるっていう代物じゃあ……」


右側の男が呟くように言った言葉で明らかに顔が青くなったリーダー格の男をはじめ、左側の男もようやく理解したらしく顔を青ざめている。

なんか話の方向に不安を感じる。

そしてその予感は正しかったといえる。


「うわあぁぁあぁぁあ!」


右側の男が叫びながら町の入口に向かって走り出す。それが呼び水となって他の二人も逃げてしまう。叫びに気をとられたせいで簡単に逃がしてしまった。

結局男達からは一銭も奪うことはできなかった。

あとに残ったのは今だ虚空に向け銃を構えている俺と、見事なまでの逃走劇にビックリした表情の女だけだ。


「見事な逃げっぷりですわね。あなたもいい加減そんな物騒な物仕舞いなさいな。今回に限りあなたの蛮行には目をつぶりますわ」


そう言うと女は俺に背を向けて歩きだそうとする。しかし


「おい」


俺の声かけで女の視線は俺に戻る。せっかくの獲物を逃がしてくれたんだ。ただで帰すわけにはいかない。

とは言っても銃はもはや銃としての役割を成さないことが判明したし、何より腹が減っては戦ができない。無論俺はいま腹が減っているわけで。

飯を食うには金がいる。

そんな俺の金づるをこいつは奪ったわけで。



なら責任をとらせよう。



金づるを奪ったこいつこそが新たな金づるだ。



容姿はなかなかいいから殺すのは勘弁してやるか。



では手始めに



「これから飯を食う。責任をとって金はお前が出せ」



これが俺とこの女、リーラとの出会いの物語



俺様というか凄く自己中な男。

今だ名前すら出てません。

ものすごいポカをやらかしましたが結構強い設定です。その要素も微かに入れたけど気付きました?


ヒロイン登場しましたがお嬢様口調で容姿端麗。ポニテは完全な趣味です。髪を結ってれば女性が5割り増しで可愛く見える髪型フェチの自分。

最後にヒロインの名前も出ました。

次回はヒロイン視点で物語が進む予定です。

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