魔法植物採取依頼?の物語3
新年あけましておめでとうございます!
今年初投稿です。
ユニコーンにリーラ達もメイドと同じくダークプラントに捕まったと聞かされたわけだが
「よく考えれば、なんでそんなことがわかるんだよ、見たのか?」
【ちゃうよ?気配というか匂いやな。ワイは女であれば枯れ果てた婆さんから生まれたての赤子まで半径1キロ以内なら補足できるんや。せやからメイドの姉ちゃんの近くに知らん女の気配があるとゆーことからもしかしてと思うたんや】
よくわからん能力だ。
役立つのか?
【フッ……愚問やな。女子のいるところを察知できるなんて漢の夢やがな。それにワイの能力なんておとんに比べたら対したことあらへん。なんたって女見ただけでスリーサイズわかるんやで?】
「思考を読むな。殺すぞ」
【ぬおっ……ごめんなさい、銃向けんといてください。なるべく読みません】
銃を引っ込める。
勝手に頭の中を覗かれることに嫌悪感を示さない輩などいないだろう。
例え相手が人でなくても。
とゆーか明確な知性を持ち、意志疎通ができているのだから感覚的には人と同じだ。
【そういえば兄さん変わった銃使ってますなー。加護持ちの銃なんて初めて見ましたわ】
「コレのことか?」
仕舞った銃を取り出す。
鉛色の無骨な装飾銃。そこに刻まれた紋章はもしかしたらとも思っていたがやはり加護の紋章だったか。
「加護持ちの銃って珍しいのか?」
【珍しいも何も武器に魔法によって加護を付けれるようになったのは近年のことや。それ以前、銃が主流に使われていた時代には彫金の技術は確率されておらんかった】
存外このユニコーンは物知りらしいな。
「どんな加護なのかわかるか?」
【それをワイに聞くんかい。そこまでワイも人間の技術に詳しいわけではないしな……おっ、茶髪のお嬢ちゃんはそこそこわかるみたいやで】
その言葉に視線をオルトに向ける。
オルトが発言した様子もないことから、またこの馬は人の思考を読んだのだろう。
「わかるのか」
オルトに向けて言う。
とりあえずユニコーンの思考を読んだ疑惑は横に置いておく。まあ、俺の思考を読んでさえいなければ見逃してやろう。
「…………少しなら」
オルトに紋章がよく見えるように銃を持ってみせる。
オルトはそれをじーーーーっと見つめる。ただひたすらに。
数十秒、いや、一、二分ほどの時が経ちオルトの視線が銃から俺に移る。
「わかったのか?」
「…………六割くらい」
「どうゆうことだ」
「…………すごく複雑。…………いくつもの紋章が複合されている」
「んで、どんな加護があったんだ?」
要はそれを聞きたい。
あとはまあ、記憶の手がかりになるようなものでもあれば僥倖だ。
「…………まずは不壊」
この加護を持つ武具は決して壊れないと言われる最高クラスの加護。
やべ……これだけで凄いんですけど。
まずはってことは他にもあるってことだ。
「…………あとは魔力吸収」
魔力吸収?
【要は魔法なんかの魔力による攻撃なんかを受けた時にそれを吸収するってことみたいやな】
また、思考読んだのか?いや、でもただ単に言葉の少ないオルトの補足をしただけかもしれん。
つーかそれって魔法は効かないってことか?
そういえば以前リーラによる魔法爆殺事件の時、何故か無傷だったという不可解なことが起こったことがある。
あれはこの加護のおかげだったのかもしれない。
「…………あとは幸運プラス」
……なんか他の二つに比べると格が落ちるな。
しかしまた幸運プラスって、俺は幸運だったことはないんだがな。
「…………わかたのはこれだけ」
「おう、ご苦労」
三つも加護加護があるってわかっただけですげえ役立つ情報だ。
それにしてもオルトは最初六割って言ってたよな?ってことは単純計算であと二つは加護があるってことか……
コレ売ったらいくらになんだろ?売らねえけど。
「……えっと、助けにいかんのか?」
それまで空気と化していたラキナの声に大事なことを思い出す。
ユニコーンの言を信じるならばリーラとシャルが捕まってんだった。
やべ、完全に忘れてたよ。
いつの時代も男というものは武器とかに弱いものだ。
「つーかなんでもっとはやく言わねえんだよ、ちび」
「なっ……だって入れる雰囲気ではなかったじゃろ」
「どこがだよ。オルトが紋章見てたくだりなんか声をかける格好のタイミングだったじゃねえか」
すげえ静かだったし。
つーか無駄に空気読むな。
「おい、ユニコーン。女共は死んでねえよな?」
【それが…………】
なっ……ま、まさか!
【生きとる】
「……いらねえ溜めを作んな」
【お約束やん】
知るかよ、そんなこと。
【そもそもまだ捕まってそない時間がたってへんからまだ大丈夫やと思うで?ダークプラントは捕まえた獲物は大体一日ほどかけてゆっくりと消化してくし】
「なんだ。それなら焦る必要もないな。休息にしよう」
【いや、はっきり言うとくけど今助けとかなアウトやで?】
「なぜだ?」
【ワイがゆうたんは消化完了までの時間や。人が死ぬんは取り込まれて大体二、三時間ほどや。加えて陽も落ちてきとる】
「暗くなると不便なことでもあるのか?」
【不便なことて……相手はダークプラントやぞ?ダークっちゅうからには闇の中での戦いはお手の物や。加えて兄さんら人間っちゅう存在は夜目が効かへん。暗くなったらまず勝てへんやろな】
なんてめんどくさい相手なんだ。
つーか失態組、捕まってんじゃねえよ。
罰ゲーム決定だ。
さて、何をやらせるか……
ついでにラキナにもなんかやらせるか。
「おいユニコーン。場所はわかってるんだな?」
【無論や。女子の居場所のことならワイにお任せや。案内したる】
「……そういえばなんで協力してくれるんだ?」
俺の問いにユニコーンは歯を剥き出しにして笑う。
【漢が女子のピンチのために尽力すんのは当たり前やろ】
その笑顔はとんでもない馬面でありながら世界中の誰よりも漢らしかった……ってなんだそりゃ。
すっげえいい笑顔で言ってるっぽいがユニコーンの発言は否定せざるを得ない。
まあ、少なくともこの馬が漢であるとは認めることなどできない。
漢ってのはこうどっしりと構えて小さなことにも動じない。
例えば師匠の親友のあの男のことを言う。
……あの男?
くっ、頭が痛い。
これは前にも経験したことがある。
このままじゃまた倒れる。
なんとかしないと……
でもどうやって?
くそっ、目が霞む。
……そうだ。
おい、ユニコーン野郎。聞いてるなら許してやるから俺をどつけ。
そう思考した瞬間腹部への強烈な一撃。
そしてその衝撃と共に俺は後ろへと飛ばされる。
目に映るのは俺へ後ろ足による蹴りをかましたユニコーンと、突然の出来事に大きく口を開けているラキナとしっかりと俺が吹っ飛ばされているのを目で追っているオルトの姿だった。
数瞬の空中浮遊が終わり、重力による落下が始まる。
俺はそのまま水面へと叩きつけられた。
「ほあーーっ!な、なにをしとるんじゃ!キシワ=ゴミクズ大丈夫か!!」
ラキナが奇声を挙げている。
なんて耳障りな。
泉からはい上がりながら自身の状態を確認する。
体はずぶ濡れ。ぶっちゃけ寒い。
怪我に関しては痛いが、それだけみたいだ。骨は折れていない。飛んだ先が泉だったのも幸いしたのだろう。
頭痛に関しては若干鈍く痛むが倒れるほどではない。
結論。
痛かった……
ユニコーンを睨む。
【そないな目で見られても……やれゆうたんは兄さんやし。それに、ちゃーんと手加減もしたやろ?】
確かに馬が本気で人を蹴ったなら骨の一本や二本は軽く持っていくだろう。いや、下手したら内臓破裂で死ぬ。
だからその点に関しては問題ないし、よくやったと言える。
でも俺が言いたいのはこうゆうことじゃない。
俺が言いたいのは
「俺の思考を読むなって言ったよな?」
【な、なんや。めっちゃ殺気立っとる。え、ええやんか。それで兄さん助かったんやろ?】
誰が言ったか知らないがいい言葉がある。
「それはそれ。これはこれ」
【うぎゃーーーーーー!】
一頭のユニコーンの叫びが森にこだました。
「…………思念だからこだましない」
お前も思考を読むのかよ。
そんなこんなでなぜかタテガミの一部が消失したユニコーンの背に跨がり俺達はマヌケにもダークプラントに捕まったリーラ達の救出に向かう。
本当なら足手まといになるラキナは置いてきたかったのだが森に一人にするわけにもいかず、仕方なく連れて来ている。
とは言ってもこいつはダークプラントに近づいたらユニコーンの背中にて待機する手筈になっている。
魔物に分類されるユニコーンに預けるのは若干不安ではあるが、ユニコーンはなぜか女には優しいらしく、心配するだけ余計なことらしい。
「あとどのくらいだ?」
【もうすぐや。そろそろ兄貴達でも知覚できるはずや】
そうユニコーンは返答する。
なぜか知らんが俺に対する呼称の親密度が上がったような気がするが気のせいか?
などと考えていると周りの空気が少し重くなった。
これがAランクの魔物の気配なのだろうか?
だとすればBランクのそれとは桁が違う。
ちなみにユニコーンもBランクらしい。
全くそうは見えん。
「つーかこんな濃密な気配にも気付かないのか、あの馬鹿共は」
呆れる他ない。
【そんなことあらへんよ。ダークプラントは本体から無限と言えるほどに伸びる触手によって獲物を捕獲するんや。そんで本体に近づかんと気配はわからへん。捕まるのも道理っちゅうこっちゃ】
「だとしても捕まった時点で駄目だ。もっとも、ダークプラントがいると知っててこの森に入ったこと自体が最悪の一手とも言えるが」
【厳しいなぁ】
「甘やかすよりマシだ。降ろせ、ここらでいい」
俺の声とともにユニコーンが立ち止まる。
その背から俺が降りると続くようにオルトも降りる。
本当はユニコーンの背にそのまま乗って迅速に駆け抜け、さっさと助けて町に帰りたいのだがリーラ達がダークプラントの腹の中に収まっていたことを考えると慎重にならざるを得ない。
敵との距離は約百メートルほど。
相手の大きさは目測およそ十メートルといったところか。
なんてでかいんだ。
つーかよくもまあ、あんなでかいのがここまで王都に近づいてこれたものだ。
監視とかしてないのか?
だとしたらなんて危機管理のなってない、平和ボケしている愚かな存在のトップにいる国なんだ。まあ、そのトップの娘が近くにいるわけだが、ガキに何言っても大体は理解されないし、今はダークプラントに気付かれないように行動中だ。余計な騒ぎの種を植えることはない。
さてさてマヌケはどこかな〜
目を凝らして見てみるとダークプラントの本体の近くにある大木にさながら蓑虫のようにぶら下がっている物体が三つ。
「ダークプラントの卵か?」
【そうやない。あれは餌や】
餌。
つまりはリーラ達である可能性が高い。
「どうだ?」
ユニコーンに問いかける。
聞いているのは勿論あれがリーラ達であるかどうかだ。
【うん。あれは全部人の女子やな。一つはメイドのお姉ちゃんや】
なるほど。間に合ったということか。
それにしても
「なんで喰われてないんだ?」
【ダークプラントが捕まえた獲物を保存しとる理由は一つだけや】
「なんだ?」
【食事中なんや。現在進行形で】
とするとあれか。
すでに口に食べ物が入っているので新しく口に含むことはできませんというわけか。
まあ、いい。
誰かは知らんが犠牲になってくれてありがとう。
おかげで楽にマヌケ三匹を助けだすことが出来そうだ。
「作戦変更だ。ラキナ、ユニコーンから降りろ。」
ラキナは俺の言葉に素直に従うとゆっくりとユニコーンの背から降りる。
それと入れ違いに俺がユニコーンの背に乗る。
【どないするんや?】
「難しいことは考えるな。ただあそこに向かって全力で走れ」
俺はそう言って蓑虫状態のソレを指差す。
【了解や。振り落とされるんやないで!】
そういうやいなやユニコーンは駆ける。
速い。
とにかく速い。
つーか
「速過ぎる。落ちるっ。スピードを緩めろ」
ユニコーンが走りだして僅か一秒後にそう言っていた。
よく考えたら俺、馬とか乗れねえじゃん。
鞍とか積んでればまた別だろうがな。
今のユニコーンのスピードは成人男性の全力疾走よりもちょっと速いくらいだ。
それでもなんとか落馬しない自分を褒めてやりたい。
しかし、俺はただ単に乗馬をしにユニコーンの背に跨がったのではない。
腰から銃を引き抜く。
狙いは蓑虫状態の三匹と大木とを結ぶ細い蔓のようなもの。
ユニコーンの背は走っている最中ということもありよく揺れる。
しかし意識を集中すれば俺の周りの時間は緩やかに流れる。
銃声は三発。
それはほぼ同時に発射された。
当たるのは撃った瞬間に確信できた。
そしてその確信通り銃弾は蓑虫と大木を結ぶ蔓を穿つ。
重力に従い落ちていく蓑虫。
そこであることに気づく。
落とすのはいいが落とした後のこと考えてなかった。
ただ回収して終わりと考えていた。
……どんまいどんまい。そんな高いところにあるわけでもないし死にゃしないだろ。
落ちた三つを一つはユニコーンが喰わえ、一つは背に、もう一つは俺が抱えてユニコーンはまた走り出す。
先程よりも鈍いのは増えた重量故か。
俺に保存食を奪われたダークプラントがやっと動きだす。
どうやら食事に夢中だったようだな。
ますますありがとう、食われてる人。
だからといって油断できない。
振り返って見てみると本体の動きはその巨体もあり鈍重極まるがその触手はえらく速い。
すぐ後ろに迫るソレをかわす術は荷物を抱える俺にはない。
と、俺らを追っていた触手に炎の球がぶつかり燃え上がる。
出所を見るべく視線を前に戻すとそこには前方に手を翳すオルトの姿がある。
その手に新たな炎の球が形成される。
オルトはそれを投擲する。
その炎の球は俺に近づいた触手に命中し、燃え上がる。
その後もいくつか投擲された炎の球は目に見えた触手の全てに命中し、消し炭に変える。
そして全ての触手を消したというのにオルトはその手にまた新たな炎の球を生み出す。しかし、その炎は段々と密度を増し、ついには霧散してしまう。
「…………燃えろ」
そのオルトの言葉とともにダークプラントが大きな火柱に包まれる。
これこそが現代の魔法、火の三階級。
凄まじい威力だ。
「やったのか?」
なんかとりあえずコレを言わなければいけないかと思ったのでとりあえず言ってみた。
「…………無理」
だろうな。こんなんでやられるならAランクなんて名乗れない。
【精々時間稼ぎ程度にしかならへんけど、十分や。ようやった】
これ以上ユニコーンの背に人は乗れないと判断したので餌共に巻き付くものを剥ぎ取ると、なかからリーラとシャル、メイドが出てきた。
三人は大した怪我もなく、眠っているみたいだ。
つーか何、人様に迷惑かけておいて呑気に寝てんだよ。
「オルト、こいつらに魔法で水、ぶっかけろ」
「…………ん」
オルトがリーラの顔に手を翳すとその手の平から水が生まれでてリーラの顔にドバドバかかる。
「んっ……ぶはっ!な、なんですの?」
「やっと起きたか、マヌケ1号」
とりあえず起きた順だ。
「あっ、あんっ。あぁっ……ここは〜?」
微妙になまめかしく起きたシャルロット改めマヌケ2号。
「おはようございます……もしかして今ので勃ちました?」
運よく水をぶっかけられる前に起きたマヌケ3号。
「とりあえず説明は後だ。素早くこの森から撤退する」
「えっ?」
「うん〜?」
「かしこまりました」
俺の言葉に不思議そうにしているリーラとシャル。
対して状況を理解しているからかそうでないのか素直に従うメイド。
とりあえず俺はダークプラントとは逆方向に走り出す。途中ラキナを捕まえるとユニコーンの背中に乗せる。
「……ってそれなんですか!?」
リーラがユニコーンを指差して驚きの声を上げる。
つーか説明は後って言ったろうが。
というわけで無視。
走る。
ダークプラントの射程外へと。
するとそこでメイドが俺の横に並ぶ。
「そういえば、変態シスコンハゲの姿が見えませんが?」
「は?」
何を言ってるんだコイツは?
変態シスコンハゲだと?
そんなのあいつしかいない。
来てるのか?ここに……
ちょっと待てよ。
「ユニコーン。一つ聞きたい」
【なんや?】
「ダークプラントは現在進行形で食事中と言ったな」
【そうや。女子達が食われてへんのがその証拠や】
「ああ、それでその今食事中なのは女なのか?」
【……気配も匂いもあらへん】
「つまり?」
【ダークプラントの腹の中にいるのはすでに死んでいるか、男や】
……………………
「…………兄!」
黙って俺らの会話を聞いていたオルトが踵を返す。
ほっときたいし、見捨てたいが……
オルトには治療で世話になった。
俺は立ち止まり振り向く。
見えるのはダークプラントに向かっていくオルトの姿。
「ユニコーン、メイド!ラキナを連れて森から出ろ!リーラ、シャル!手を貸せ。オルトに加勢する!」
言うだけいって走り出す。
答えなど聞かない。
当然だ。
俺の選択は正しいのだから反対する道理がない。
マヌケ4号もいたのは想定外だったが、問題ない。
今決めた。
ダークプラントを殺す。
これは魔法植物採取依頼?の物語の一幕
やっとゼロの持つ銃の力の一部が明かされました。
次回でこの魔法植物採取依頼?の物語も完結を迎える予定です。
でもノリ次第でもう一話増えるかも……