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ゼロの男の物語  作者:
24/32

お姫様のお願いの物語

「ここに白の悪魔がいるそうじゃな!」


そう言って入ってきたのは赤毛のショートボブで翡翠色の瞳をもつ10歳くらいの子供。

無駄に筋肉のついた暑苦しい男との二人きりの空間が華やぐ。……のは俺がロリコンだった場合だ。あいにく俺はロリコンではない。

まあ、俺の感想としては


「なんだ?あのガキ」


である。


「貴様!姫様に向かってなんて口を聞くんだ!」


筋肉が少し声を怒らせて俺に告げる。

ふむ、お姫様か……


「んで、そのお姫様がなんのようだ?」

「白の悪魔と呼ばれるお主に会ってみたくての」


それはまた好奇心旺盛なことで。

つーかそもそも


「白の悪魔ってなんだよ?」


黒い鎧の奴も言っていたが、なにそのダサい悪役っぽい感じ。

白はわかるよ?

だって髪の毛は白いし、普段着(目覚めた時に着用していた服を修繕した物)も白。仕事着の軽鎧も白黒のものだから白がつくのは当然だな。

問題は悪魔。

どこが? と声を大にして聞きたい。


「お主についた通り名みたいなものじゃ」


そんなのわかってるっつーの!

察しが悪いな……

お姫様といえども所詮はガキか。

俺が聞きたいのは


「俺のどこが悪魔だよ?」


普段の俺は慈愛に満ちあふれた好青年だ。


「……いや、だってお主、衆人環境のなかで笑いながら爪を剥いだり、他いろいろ考えられない行為をしとるじゃろ」


そんなこともあったような……

でも、それのどこが悪魔に繋がるんだ?

俺は降り懸かる火の粉を払っただけだ。


「そんなこと言ったらせっかくの食事を邪魔するだけでなく、テーブルごとひっくり返した騎士のゴミ共のほうがよっぽど悪魔だ」


あれはないだろ。

本当は撃ち殺してやろうかと思ったが右腕をシャルとリーラの二人がかりで押さえられてできなかった。


「……そんな理由で説教したのか」


筋肉が呟いている。

そんな理由とはなんだ。食べ物を粗末にするのは重罪だぞ。


「ふむ、まあよい」

「偉そうにすんなガキ」


なにがまあよいだ。何様だよ。


「偉そうというか、わらわはこの国の姫じゃぞ?」

「その通りだ。貴様、先程から無礼がすぎるぞ」

「そ、それはすいませんでした!お姫様どうかお許しを……これでいいか?」


言っててちょっと気持ち悪い。

世界の中心である俺が高々一国の姫ごときにへりくだるなんてオルトに擦り寄るハゲ以上に気持ち悪い。


「貴様……」

「ミンジャスやめよ!」


俺を殴るためなのか胸倉を掴みあげた筋肉をガキが止める。

苦しい。

俺は持ち上げられたため呼吸が詰まる。

つーか見た目通りの怪力だな。


「しかし、姫様。こいつは姫様に度重なる無礼を……」

「わらわがよいと言うておる」

「……了解しました」


筋肉が俺を降ろす。

いやー苦しかった。

……ぶっ殺す。


「はうっ!」


股間を蹴り上げてやる。

内股で股間を押さえる筋肉。

さながら土下座のようにうずくまった。

……ちょっとスカッとした。


「ミ、ミンジャス!な、何をするんじゃ!」

「正当防衛」

「……どういう意味じゃ?」

「やられたらやり返してもいいと言う免罪符」

「めんざいふ?まあ、つまりはミンジャスがお主の胸倉を掴んだからやり返したということじゃな?」

「ああ」

「ならばよし。許すのじゃ!」


なにこのガキ。

扱いやすい。

いい玩具みっけ。


「ひ、姫様……だまされております……」

「お姫様を騙す?そんな無礼な輩がいるわけないだろう?」

「その通りじゃ!」

「こ、こんな時だけ……卑怯な。」


聞こえない、聞こえない。

さて、どう遊ぶか。


「まずはお前の名前を教えろ」


姫って単語自体が敬っているようで気に食わん。


「人にものを尋ねる時はまず自分から名乗るものじゃ」


こういう風に返されるとムカつくな。


「キシワ=ゴミクズだ。フルネームで呼んでくれ。」

「変わった名前じゃのぅ。わらわはグレイセス王国、第三王女ラキナ=グレイセス=グランネイドルじゃ。」


なっげぇ名前……

ラキナでいっか。

つーかはじめて国名知ったんですけど。

それにしても第三王女ねぇ〜……


「ラキナね。それにしてもあれだよな。第三王女って言ったら他国とかいいとこの貴族に嫁がせて政略結婚の道具としての利用価値しかない存在だよな。」


王族とか貴族ってのはそんなもんだよな?


「き、貴様!」

「身も蓋も無いこと言うのう。まあ、間違いではない。現にわらわも二月後には輿入れとして隣国のシュナイゼル皇国に行かねばならん。」


筋肉はうずくまりながらも怒りをあらわにするが、ラキナは俺の言葉を肯定する。

とゆーか


「はやくね?」


どう見ても10歳前後にしか見えないんだが。


「わらわの姉はもっと早かった」

「ふーん、そういうもんか。ところで結婚相手っていくつ?」


10歳前後のガキと夫婦になろうとするロリコン……いやいやまだ決まったわけじゃない。同じくらいの歳かもしれないからロリコンと決めつけるのは早い。でも願わくば


「確か四捨五入で50じゃったな。」


ロリコンきました。

超ウケるんですけど!

なんでショタコンよりもロリコンのほうが面白いんだろうな?

俺が男だからか?


「なんじゃその目は?」


ヤバい。目は口ほどにものを言う。きっと俺の目は大爆笑していることだろう。


「良縁だと思ってな。祝福の眼差しを送ってたんだ」

「なんか違うような気もするが、まあよいか」


こいつ、細かいこと気にしないんだな。


「ところでキシワ=ゴミクズ。お主に頼みがあるのじゃ!」

「なんだそのキシワ=ゴミクズって?」

「お主の名前じゃろ?」


……ああ、そんな風に言ったな。つーか信じてんの?扱いやすいから素直バカにランクアップだ。


「ああ、キシワ=ゴミクズは俺の名だ。んで頼みってのは?」


社交辞令って奴だ。

頼みなんか聞く気はない。


「実はわらわは民の暮らしを体験してみたいのじゃ」

「で?」

「案内役としてお主にそばについてもらいたいのじゃ」

「いつ?」

「今から、そうじゃのぅ……一月半ほどじゃ」

「うん、嫌です」


なんでお姫様の道楽に俺が。つーか期間なげえって!

むしろいきなりすぎ!今日初めて会った相手に頼むことじゃない。


「もちろんただでとは言わん」

「ただだったら誰もやらねーよ」

「報酬はくれてやるし、なんならギルドに掛け合ってお主のランクを上げてもよい」

「嫌だって言ってんだろ」

「貴様〜!姫様の頼みが聞けないというのか!」


筋肉はまだうずくまっている。いい加減復活しろ。

とゆーかお前は反対する立場にいなきゃだめだろ。


「そうか……どうしても嫌なんじゃな?」

「ああ」

「ならばわらわも最終手段にでるのじゃ。ミンジャス!こやつを王家の侮辱罪で牢にいれろ。明後日に処刑じゃ」

「はっ!」


筋肉復活。

そして瞬く間に拘束される俺。

つーか何?この展開。

横暴通りこして頭イカレてるんですけど。


「うはははは!どーじゃ?妾の頼みを聞けないというのならこのままお主は死ぬだけじゃぞ」

「姫様。今すぐ殺しましょう」


……すっげえ置いてかれてる。


「なんで俺なんだよ?」

「それはお主が自由だからじゃ!」

「はあ?」

「妾はお主の話を聞いて思ったのじゃ、お主は恐ろしいと。でも同時にとても自由だと思ったのじゃ。そして今日お主に会って確信した。お主と共にいれば素晴らしいものが見れると」


なんかの電波でも受信してるのか?

すごくイタい娘なんだな。

つーか


「一国の姫様を一月半も連れ回せるわけねえだろ、バカあほマヌケちびガキ」

「……明日処刑じゃ」

「今すぐ殺しましょう!」


なんか火に油を注いだみたいだな。

仕方ねえ妥協するか。


「あほは取り消す」

「……いいじゃろう」


自分で言っておいてなんだがあほ以外はいいのか?

……考えてねえだけか。


「して、わらわが一月半もいなくて大丈夫かという話じゃが、問題はない。輿入れまでは自由にしてよいことになっておる」

「だからって子守は嫌だ」

「わらわは結婚を控えた大人じゃ。子供などではない!」

「おい、筋肉。このガキ止めろ」

「姫様の決定は絶対だ」


んなわけねーだろ。

お前の元締めは国王とかだろ。

ガキの我が儘に付き合うほど騎士ってのは暇なのか?


「すでに父様の了承は得ておる。ゆくぞキシワ=ゴミクズ!」

「いや、いかないから」

「……こういう時はノリで行くものじゃろ」


ラキナの頬が風船のように膨らむ。

かわいこぶりやがって……

そもそも拘束解かれてねえんだよ!


「どうすればわらわの頼みを聞いてくれるのじゃ?」


真剣に考えてみる。

ガキの面倒をみるのは嫌だし、そもそもいきなりすぎる。

俺に決まった理由も不明瞭だしぶっちゃけ厄介だ。

でも、受けるに当たってなにか条件をと言われれば……おっ!閃いた。


「いいぜ?条件を全て飲むのならな。」


俺の出した条件が無事受理されて施行されるのは少しばかり後の話だ。




ところは変わって俺は宿に帰ってきた。

とっくの昔に陽は沈んでいる。

なんでこんなに遅くなったのか。それはとある生物が準備を終えるのを待っていたためだ。

俺は赤い髪のガキとメイドを一人連れている。


「メイドだ」「メイドさんだ」「彼氏の趣味か?」「ご奉仕されたい」「どちらかと言うと俺はあっちの子供のほうが……」


外野がうるさいな。

赤い髪のガキとはラキナのことで、メイドはラキナの護衛兼世話係とのことだ。

名前は確かエレナって言ったな。

性別は女。銀髪をサイドポニーにしていて、瞳は琥珀色。ミニスカートのメイド服を着用していて、よく見ると太ももに投擲用のナイフがみえる。


「……遅いから一晩泊まってくるかと思って心配していましたが、ほんとに犯罪を犯してくるなんて!」

「…………幼女誘拐」

「メイドさんもいるよ〜」


女共が冷たい視線を向けてくる。


「事情があって一月半ほど一緒にいることになったラキナとメイドだ」

「よろしく頼むのじゃ!」

「メイドのエレナと申します。よろしくお願いいたします……全員死ねばいいのに」

「こ、これはどういうことですの?」


あ、メイドの毒はスルーか。

つーか俺に聞いてんの?


「どうもこうも決まったことだ」

「どうして勝手に!理由を説明してくださいませ!」

「いっつも勝手に決めるのはお前だろ?今回は俺が勝手に決めた。安心しろ報酬は出る」

「そ、そういうことではなくて……」


じゃあなにが不満なんだよ!?


「…………オルトは別にいい」

「お姉ちゃんもゼーちゃんが決めたのなら従うわ〜」


オルトとシャルは最初から反対しないだろうと読んでいた。

オルトは無関心だろうし、シャルが俺の意見を反対するはずがない。

問題はリーラか……


「せめてどういう経緯でそちらのお二人と一緒にいることになったのかの説明をしてください」


うーむ……どうしよう?

ラキナからは自分が姫だとは内緒にしろと言われているしな。

まあ、そもそもばらして欲しくないならメイドを連れてくるなという話だが、護衛を付けるのは絶対条件らしいからな。

つーかそもそもそこまでの配慮が必要なのか?

なんか面倒くさくなってきた……


「こいつ、国のお姫様。俺、こいつの我が儘聞かなきゃ殺される、以上。」

「はあ?」

「ちょっー、内緒にするはずじゃろ?」

「面倒になった。つーわけで説明よろしく。俺は眠いから寝る」


部屋へと続く階段を登る。


いやー疲れた。


それにしても護衛が筋肉でなくてよかった。


部屋のベッドに顔を埋める。


階下からリーラの驚きの声が微かに聞こえる。


いい子守唄になって俺は眠りについた。


これはお姫様のお願いの物語



結構強引にお姫様と行動をともにさせました。

騎士たちの名前は覚えても役に立たないので忘れてくれても全然いいです。


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