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ゼロの男の物語  作者:
22/32

とある朝食時の物語


ハゲとの戦いから三日が経った。

未だに俺の治療は終了していないため、左腕は首から吊っている状態だ。

肋骨に関しては完治した。


今は朝食を摂るため宿に併設されている食堂に来ているのだが……


「…………あーん。」


この状態は何なのだろうか。

オルトがスプーンで食事を俺の口に運ぼうとしている。


「あ〜!お姉ちゃんもする〜。」

「ど、どうしてもと言うのなら(わたくし)もやってあげてもいいですわ。」


そして追従するように俺の口に食事を摘んで近づけてくるシャルとリーラ。


「鬱陶しいからやめろ。何度も言ってるが俺が怪我してんのは左腕で利き手は何の問題もない。」


そう、何度も言っているのだが、毎食のようにこうなる。

赤子じゃねえんだから一人で食えるっつーの。

だからといって抜け出して一人で食おうにも絶対一人はついて来るのでダメだった。

ウザったい……

俺は抗議の目を三人に向ける。


「そうだぞ。親友が困ってるじゃねえか!あ、オルトには怒ってないからね。そ、それより妹よ。そのスプーンをお兄ちゃんの口にインしてみないか?」

「…………断固拒否。」


オルトはそのまま自分の口にスプーンを運ぶ。

とゆーか実はオルトの兄ことライル=シリア、通称ハゲもこの場にいる。

というのも病院に置き去りにしたあと、目を覚ましたハゲは妹分が足りないと脱走してきたのだ。

まだ、弾を摘出して穴を塞いだくらいしか治療してないためはいずりながらここまでやってきたハゲは妹が俺の治療のため俺らと共に行動しているからとここに居着いてしまった。

当然問答無用で病院に強制連行されるかと思いきやオルト自身が治療するからここにいてもいいと言ったため、普通に存在している。

でも、俺の治療を優先しているためまったくといってよくなっていない。とゆーかその状態でもオルトについて回るので悪くなってるらしい。

見かねたリーラなど回復魔法の使える者達が治療を申し出るのだが、妹が治療してくれるからと割ときつく断っている。

まあ、所々宿を血で汚すので宿の女店主に怒られて渋々傷口を塞ぐくらいの治療は受けている。


「ああ……、その氷の女神のような冷たい態度にお兄ちゃんゾクゾクきたよ。」


ハゲがすっごい恍惚とした表情をする。

キモい……

でも俺はなんか慣れた。

しかし、リーラとシャルは鳥肌を立ててなんか汚いものを見るような目をハゲに向けている。

オルトは相変わらずの無表情で兄をガン無視している。

この領域にくるまでどれだけ掛かったんだろうか……

でもこいつなら最初からこんな反応してそうだな。


「…………兄。」


オルトがハゲに話かける。


「なんだいマイエンジェル?」

「…………部屋に櫛を忘れた。」

「忘れ物かい?お兄ちゃんに任せなさい!すぐに取ってくるから!」


そう言うやいなやハゲははいずってオルトの泊まる部屋に行く。

つーか


「今必要じゃねえだろ。」

「…………イエス。」

「なら別に行かせる必要ねえだろ。」

「…………目障りだから排除。」

「お前性格悪いな〜。」

「…………ゼロほどじゃない。」


………………


…………


……


「俺、性格悪いのか?」

「悪いですわ。」

「いいとは言えないかな〜。」


俺の問いにリーラは肯定、シャルは消極的な肯定をする。

あれ?

俺……性格悪いの?

いやいや、そんなことない。

俺は世界の中心として正しい行動しかしてないし、内面もそれと同じく世界の中心として申し分ないものだ。

つまりは問題なしだ。

とゆーかよく考えたら、こいつら結構な変人どもだったな。

そもそもの聞く人選を間違えている。

まあ、変人の視点から見た場合の参考程度にはなるか……


「今帰ってきたよ!我がヴィーナス。」


また、うっせぇハゲが帰ってきた。

人の思考を邪魔すんじゃねえよ。


「…………予想より早い。」


確かに……

はいずったにしては早過ぎる。


「はい、お兄ちゃんからのプレゼントだよ、花の妖精さん♪」


あ、鳥肌立った。

慣れたと思ったのにな……

つーか音符が見えた気がする。

キモいキモい。

あと、わかりにくいから妹の呼称を一つか二つに決めろ。


「花の妖精って………プフッ」

「センス最悪〜。」


女性陣には受けが悪いらしい。

俺にもだが。


「あん?うるせえな醜女共。受け取り手がいいのなら別に問題ないだろ。つーかもしかしてオルトの可憐さに嫉妬してんのか?ひとつ言っておくが畑違いの嫉妬はみっともないぜ?そんなんじゃモテねえぞ。」


なんか新鮮だ。

リーラとシャルが醜女って言われてるよ……

いつもいい女だのヤリてぇだのばっかりだったからな…

さて、どんな反応を返すんだ?


「別にあなたにどう思われようと、構いませんわ。そ、それに(わたくし)のことを好きだと言ってくれる殿方もいます。」

「お姉ちゃんもひとり以外はどうでもいい〜。」


あんま動じないのか。

面白くない。

ん?でもシャルのひとりって奴は俺の可能性が高いとして、リーラを好きって奴は誰だ?

殿方って言ってるから男だよな……

なんか面白そうな気配がする。

要調査の必要ありだな。

なんて考えているうちにリーラとハゲの言い争いがヒートアップしていってる。

シャルは時折リーラに加勢しているがオルトは我関せずで食事を続行している。

俺が止めるべきか?

いや、食事が冷めてはもったいないから食べてからにしよう。


「…………兄うるさい。」

「ごめんな〜麗しの君。おい金髪、てめぇも黙れ。」

「なっ……」


リーラが絶句している。

それにしても変わり身はやい奴……

でも俺が止める必要なかったのは重畳だ。


「…………お知らせがある。」


またしてもオルトが発言する。


「なんだ?」

「お兄ちゃんが大好きとか?」


男二人で聞き返すが、女共は別に気にした様子もない。

内容を知っているということか?


「…………昨日ゼロのパーティーに加入した。」

「なにっ!?」

「なんだと!!」


右ストレートかと思ったら右フックをくらった気分だ。

要は殴られた感じ?

ってそんなことはどうでもいい。


「聞いてねえぞ……」


リーラとシャルをジト目で見る。


「言ってませんもの。」


また勝手に決めやがった。

やば、ちょっといらついてる。

クールダウン、クールダウン……

やっぱ無理!!


「なんでそうゆうこと言わねえんだよ!アバズレ!!」

「あ、あばずれ……?それ、(わたくし)のことですの?」

「黙れ!依頼を勝手に決めるのは一億万歩譲って許容できるが、これは勝手に決めていい問題じゃない。いくらなんでも俺に話を通すべきだ。」

「うっ……そんなに怒らなくてもいいじゃないですか。」


俺の剣幕にリーラがたじろぐ。


「そんなことはない!親友の意見ももっともだ!お兄ちゃんはそんなこと許してないよ!」

「…………兄は黙る。」

「これくらいにしといてやる。」


なんだこの兄妹。コントがしたいなら他の所でやれ。


「お前らうっせぇよ!大体こいつ戦えんのかよ。」


俺は指をオルトに指す。ギルドの仕事は戦うことがほとんどだ。足手まといはいらない。


「あ、それなら問題ない。我が美麗なる天女はかの有名なフィズス王国の魔導学園において天才の名を欲しいままにした魔導の鬼才!」

「うるせえって言っただろ。」


ハゲに銃を突き付ける。

お前に聞いてないんだから話の腰を折るな。


「ひ、ひいっ!ご、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい………」


あっ………

やっちゃった。


「…………トラウマ発動。」


そう、あの戦い以来ハゲは俺が銃を向けると極端に怯えだすようになってしまった。

めんどくさいから気をつけてたのに怒りで忘れてた……


「……ま、ほっとけば直るからいいか。んで今の話はほんとか?」

「…………魔法全種おけ」


親指を立てて任せろみたいなことやられてもな。


「別にオルトのパーティー加入はどうでもいいんだよ。要はなんで俺に確認しないのか。俺が一番聞きたいのはそこだ。」


リーラを睨む。

どうせこいつがゼロさん意見を聞く必要はありませんわ。とか言ったんだろ。


「えっと、ゼロさんも嫌ってないし、魔導師がパーティーにいて困ることはないと思いましたので……」

「ので?」

「ゼロさんには事後承諾でも大丈夫だろうと……なんかサプライズ的な感じになればいいななんて思って……」


さて、どうしたもんか……

ハゲのせいで怒りは霧散しちまったし、かといってすぐに許す気にもならない。


「この件に関しましては完全に(わたくし)が悪かったですわ。だからお詫びに何でもしますわ。」

「お姉ちゃんも罰を受ける〜。」


罰って……

そこまでのことじゃねえよな……

でもどうせだから何かさせるか?

犬のように四つん這いで一日過ごさせるとか喋る時に語尾にわんとかだっちゃを付けるとか。

ヤバいなんか楽しくなりそうな予感がする。

なんだったらハゲみたいに頭剃らせるとか?大爆笑ものじゃねえか!


「…………エロいことさせるの?」

「なんでだよ。」


オルトの突拍子もない発言に思わずツッコミを入れてしまった。

つーかなに言ってんのこいつ。

そんな気持ちは毛ほどもない。


「お姉ちゃんならいいよ〜?」

「ゼロさん、破廉恥ですわ!」


二人が顔を赤くしている。

なに考えてるんだか……


「別にそんなことしねえよ。オルトもいい加減なこと言うな。」

「…………冗談。…………フフフ。」


オルトの無表情な顔が一瞬にやりとした。

こいつ、俺らをからかって愉しんでやがる。

すっげえ厄介なんですけど……


「はぁ…、めんどくさいからダガーに変わる装備の金を全額お前らで負担しろ。」

「えっ……」

「わかった〜。」


困った時は金銭で解決するのが一番だ。

俺も納得、相手も納得。

後腐れもない。

惜しむらくは丸坊主か……是非見たかった。


「……あまり高いのはダメですわよ?」


絶対高いの買ってやる。


「そういえばオルトのギルドランクはどこなんだ?」

「…………D」


Dか。俺の一個上だな。

つまりはランク負けてる。

少し悔しいが実力は俺が上だ。


「…………ちなみに兄はB」

「Bっ!」

「うそ〜」

「ほぉ〜。」


上から順にオルト、リーラ、シャル、俺の言葉だ。

Bランクは超一流の冒険者の証。

ギルド全体でも二百人程度しかいないらしい。

話によるとギルド加入者は億にのぼるらしいからその希少性が伺える。

確かにハゲは強かった。

ん?そのハゲに勝った俺はやはり実質的にはBランクなんだな。

まあ、Bランクの魔物を倒してるから当然ではある。

飛び級とかねえのか?


「あの方そんなに凄いんですの?」

「ん〜、でもゼーちゃんの射撃を見切ってたし〜、お姉ちゃんと同等以上とは思ってたよ〜。」

「た、確かに……」


おいおいおいお前らはいつももっと強く、凄い存在と一緒にいるだろうが。

なにを深刻な顔をしている。


「そんなことより飯を食うぞ。今日は装備屋に行くんだから。」

「は、はい……」

「うん〜。」


また、食事に手を付け始める。

料理はすっかり冷めてしまったがうまい。


と、そこで宿の扉が乱暴に開かれ、お揃いの白い全身鎧を着込んだ奴らがゾロゾロとなだれ込んでくる。


「なんだありゃ?」

「……騎士がなんで」


騎士?

ああ、お国のための兵隊か……

一体なんのようでこんなとこに……

と、一人だけ黒い鎧を着た奴がこっちに近づいてくる。

そして俺の目の前に立った。


「白の悪魔とお見受けする。」


悪魔?なんのことだ。


「人違いだ。」

「貴様を殺人未遂および器物損壊の罪で連行する。」


話聞いてねえよこいつ……


つーか連行?


身に覚えがない。


俺と黒い鎧は違いに見合ったままだ。


これはとある朝食時の物語。


オルトのパーティー加入&問題発生です。

オルトの兄は名前出てきましたが、ゼロの中では基本ハゲで行きます。

ちなみに初っ端のオルトのあーんはゼロ及び女二人をからかっているだけです。


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