酒の席の物語
今回女性陣は出てきません。
王都に来てから一ヶ月が経った。
その間に王都に来てからの初依頼のときにシャルが言っていた魔法を使えるかどうか調べる場所へと行った。
ぶっちゃけていえば教会だ。
そこで調べてもらったところ、素養がないと言われた。
魔力はある。
というか魔力がない奴なんて存在しないらしい。
要は魔法を使えるだけの余裕があるかどうかだ。
俺に関していえば魔力は軽い魔法を放つくらいにはあるらしいが、魔法を扱うセンスがないということだった。
……センスがないってなんだよ。
思わずシスターのババアを殴りそうだった。
もう少し遠回しに言うとか、魔法を扱えるだけの魔力がないとか嘘つけよな。
もしかしたらという期待が生まれるだろうが。
まあ、魔法を使えないのならそれはそれで受け入れよう。
そして俺は商業区へと繰り出す。
目指すは風俗街。
ここんとこ王都にいる夜は必ずといっていいほど通っている。
とは言っても別に女とあれこれするためではない。
目的は適当に歩いていた時に見つけた酒場だ。
いや、厳密にはバーというべきか…
カウンターしかないこじんまりとした店だが静かに酒を飲むには最適な所なのだ。
そしてその店は風俗街の一角にある。
最初はしつこく風俗の客引きに声をかけられていたがあんまりしつこいんで人通りの少ない路地に連れ込んでボコボコにして以来俺に対して声をかけてくる馬鹿はいない。
……いや、一度だけ十人くらいの屈強な男たちに声をかけられて囲まれたが、全員の四肢を撃ち抜いて衆人環境の中で爪を剥いだりした。
………あれは楽しかった。また来ないかなぁ。
それに結構金を持っていたから儲かった。
当分金には困らないかもしれない。
あくまでかもしれない、だ。
そうこう考えているうちに目的の場所につく。
看板は読めないので店名はわからん。とゆーか必要に迫られない限り知るつもりもない。
「いらっしゃいませ。」
俺が店に入ると長い黒髪の髭を生やした40代くらいのおっさんが出迎える。
この店のマスターだ。
飲食店を経営する上でその姿はどうなんだ、と言ったことがあるがなんでも嫁ができるまでの願掛けらしい。はやく結婚できることを願うばかりだ。
「米酒、燗で」
席についてもはやお決まりとなった注文をする。
俺は酒では米酒が一番好きだ。
清らかで程よい甘味と辛味がある。
もともとこの店の雰囲気に合わないということで置いていなかったがお願いして置いてもらった。
ここのマスターは酒を見る目は確かでこれがまたうまい。
「あと、メキンの煮付けも。」
「…………お客さん、何度も言ってるけどここは小料理屋じゃなくて、お酒とちょっとしたおつまみを楽しむ大人の社交の場なんだよ?」
「で?」
「いや、だから米酒については百歩譲っていいとしても、メキンの煮付けとか本来ないんだよ。」
「あるだろ。」
「君が毎回頼むし、なによりなければ買いに行かされるからね………脅しながら。」
「なら問題ないだろ。お任せの野菜炒めとウレンホのお浸しも頼む。」
「……………………はい。」
いちいち駄々をこねるんだよな、こいつ。
最終的に頷くんだから無駄なことすんなよ。
「いやー、噂通りだな青年。」
俺が入る前から店の奥にいた男が声をかけてくる。
容姿は肩ほどまである赤い髪で、両目を覆うように眼帯をつけている。ゆとりのある服を着ていて体つきはよくわからない。
ただ一つわかるのはそこそこの年齢だということだ。
雰囲気もそうだが加齢臭がする。
「どっかの店でのプレイ中にでも抜け出してきたのかジジイ。」
「……おっさんまだ50代よ。だからジジイはやめてくれ。おっさんさらに老化しちゃうから……あと、おっさんにアブノーマルな趣味はないよ。これはあくまでおっさんなりの個性的なオシャレ。」
オシャレかどうかは別として
思ったより年いってんだな…
最高でも40くらいだと思ったんだが。
「噂ってのは?」
「いや、おっさん久しぶりに王都にきたんだけど、ここら界隈じゃ青年は有名みたいよ?衆人環境の中で大の男数人の爪を大爆笑しながら剥いだのはもはや伝説みたいじゃん。白髪頭の男に気軽に声をかけるんじゃねえって行く店ごとに言われたよ。」
「白髪なんてそこらにいるだろ。俺じゃねえよ。」
「いやいや、この店がその噂の男のいきつけらしいし、何よりマスターからやたら無理言ってくる噂の白髪男が店に来るって言質もとってたから、青年で間違いないでしょ。」
無理なんて言ったことあったか?
実現できている以上無理なことではないはずだが……
「そんで話を聞く限り、その男は悪党なのかな……とおっさんは思ってたわけさ。」
「それで、なんでまたその悪党に声をかけてくるんだよ?」
「興味があってね。」
「あっそ……」
「おおぅ……青年冷たいな〜。おっさんの話相手になってよ。」
「くだらない話をしたけりゃ、女が酌をしてくれる店に行け。」
「いや、おっさん結構含蓄ある話すんだよ?人生経験が豊富だからね。」
なんだこいつは…
馴れ馴れしい。
無視だ無視。
「はい、注文の品。」
酒とお浸しが目の前に並べられる。
煮付けと野菜炒めは調理中だ。
もう少しかかるだろう。
俺は酒を猪口に移して一気に呷る。
「おっ、いい飲みっぷりだね〜。んじゃおっさんが酌してやるよ。」
「いらね。」
初老の男に酌をされて喜ぶ趣味はない。
「いーからいーから〜、年長者の好意は余計だと感じつつも受けるもんだぞ。」
そういっておっさんは勝手に俺の猪口に酒を注ぐ。
はた迷惑な……
「そらぐいっと、ぐぐぐいっと!」
煽るのがまた、ウザい。
かといって注がれた酒に罪はない。そう思い猪口を空にする。
「いいね〜。それでこそ若いってもんだ。ほれ、もう一献。」
また注ぎやがった……
「俺はゆっくり飲みたいんだ。」
「お、悪りぃ悪りぃ……んじゃ詫びがわりに、今日はおっさん奢っちゃうよ。」
ほぅ……殊勝な心がけじゃないか。
ならば遠慮する必要はない。
「マスター、1番高い酒と料理を用意しろ。」
「青年よ、それでこそ男だぜ。」
「…………だから酒はともかく肴は軽いつまみ程度しかないって。」
「買ってこい。」
マスターに懇願する。
額に銃をつきつけているのはご愛嬌というやつだ。
「……わかりましたよ。買ってきます。その前に注文の品を作り上げるから待ってくれ……」
少し時間が経って
半泣き状態のマスターから煮付けと野菜炒めが出される。
「おっ、うまそ〜おっさんも注文していい?」
「もう、どうでもいいよ……ちょっと買い出し行ってくるんでそのあとに用意します。」
そう言ってマスターは外の世界に出ていった。
その背中には何故か哀愁が漂っていたというのはおっさんの談だ。
俺は見てない。メキンの煮付けに集中していたからな。
それからどれだけ時間が流れたのだろうか。
俺はすっかり出来上がっていた。いや、俺だけではない。
「だからレイラちゃんはおっさんには優しいのよ〜。ありゃもう女神だわ。」
「商売だからだろ。」
「女神というのなら俺様の妹こそが地上に舞い降りた天使だ。」
何故かもう一人若くしてハゲているブラウンの瞳の男が増えて男三人で酔っていた。
どっかで見たことあるんだよなこいつ……
あと、女神から天使にランクダウンしてるぞ。指摘してはやらんが。
この若ハゲはマスターが買い出しから帰ってきたころに店に入ってきた。
どうもマスターとは顔なじみらしい。
なんか、いきなり喧嘩を売ってきたが静かに飲みたいので丁重に断った。
そしたら横にいたおっさんによって一緒に飲むことになってしまった。
さらには
「聞いてんのか親友。」
何故か親友にいつのまにかランク付けされてしまっている。
気持ち悪い。
酒の席は仲良くなりやすいと言うがここまでくると嫌悪感が募る。
つーか何なんだこの状況。
いつもだったらすぐに出ていっていただろう。
だが最近俺はストレスが溜まり、疲れている。
なぜならみじかにいる同性愛者のために二人きりにしてやったりなんかしてそこそこ気を遣ってるからだ。
まったく……人に気を遣うっていうのも疲れる。
こっちが気を遣って欲しいものだ。
だからこの男しかいない空間というものが気持ち悪くても居心地は悪くないのかもな。
「なあ、同性愛ってどう思う?」
だからだろう。
ふとこんなことを聞いてしまったのは。
酔いのせいもあるな。
「………………………」
「………………………」
何で若干ヒいた顔してんだよ。
おいコラ、ハゲ。てめぇは何でケツ押さえてんだ。
「俺じゃねえよボケども。」
マスターまでヒいてんじゃねえよ、殺すぞ。
「よ、よかった〜。おっさんちょっとお尻の心配しちゃったよ……」
「俺様は親友を信じてたぜ!」
笑顔で親指立てんなハゲ。
つーかお前もケツの心配してただろうが!
調子いいこと言ってんじゃねえよ。
「話を戻すぞ。どうなんだ?」
俺の問いに二人は真剣に考えている。
酔ってるからこそだな。
素面なら無理だ。
「俺様はありだと思うぜ。俺様が標的でなければの話だがな。何より下賎な男に妹を取られるより女に取られた方がマシだ。」
「おっさんは反対〜。男女の営みがないなんて寂しすぎる。なによりおっさんは女が好きだから。」
なるほどな。
どっちも馬鹿だという結論しか出ねえな、これじゃ。
「そもそも青年はなんでこんなこと聞いてくるんだ?もしかして誰かに尻の穴狙われてたりすんの?」
「いや、パーティーを組んでる女の一人が同じくパーティーの女に惚れてるらしくてな。どうしたらいいかちょっと困ってる。」
「大変だな親友。しかし、案ずるな。この俺様が素晴らしい教訓を授けてやろう。」
「なんだ?」
「『なるようになる』だ。」
思いっきり殴ってやった。
なんの解決にもなってねえよ。
「このハゲっ!」
唾を吐きかける。
「青年は苛烈だねぇ。」
「まったくだ。この俺様に唾を吐きかけるなんて妹以外にはいなかったんだぞ。まあ、親友だから許してやるんだからな。」
妹に唾吐かれてんのかよ。
それって嫌われてるんじゃねえのか?
つーか簡単に立つな。
ダメージないのか?
「まったく……若者達よ、ここはおっさんに任せなさい。伊達に歳とってないみたいなダンディな部分見せるから。」
おっさんは酒を一口口に含み姿勢を正す。
「そこのハゲた
「剃ってますから。」
…………オホンっ、頭を剃っている青年の言ったことに似てるけどその女性を見守って余計なことはしないことだ。なんか青年が入ってくとこじれそうだ。」
ハゲの言ったこととなんか変わったのか?
俺への侮辱が加わった感じしかしないが。
「いや〜、おっさん良いこと言うわ〜。俺様少し感動したよ。」
「ダンディ?」
「よっ!ダンディ。」
「イエス、ダンディ!!」
何やってんだこいつら……
もういいや。
なんか酔い醒めてきたな。
「親父!強い酒寄越せ!」
「もはやマスターでもないんだ………」
こうして夜は更けていく。
なんか知らんがこいつらとはまた会いそうな気がする。
そういえば名前聞いてないな。
まあ、覚える気はそんなにねえけど
これはとある夜の酒の席の物語
作者は正月やお盆くらいしかお酒を飲まないので割と適当な描写です。雰囲気重視でお願いします。
途中から出てきたハゲは一回出てきてますのでわからない場合はまだ登場人物には追加してませんので本編を読み返してみて下さい。