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ゼロの男の物語  作者:
16/32

Dランク討伐依頼の物語 [出発編]


「朝一で依頼を受けてきましたわ。」


朝食の席で告げられた一言に衝撃を受けた。


「なんでまた?」


まだ王都について二日目だ。

全然観光とかしてないだろうが。

護衛依頼の報酬も入っているはずだし、金には余裕があるはずだ。


「なんでと言われても冒険者なんですから仕事をするのは当然ですわ。」

「それが今日である理由は?」

「……………装備を新しく買ってお金が…………」


さて、話が切実になってきたな。

俺の財布(一号)であるリーラに金がなくなるとは…


「何を買ったんだよ。」

「加護持ちのレイピアを…」


なるほど。確かに加護持ちの武器を買ったんなら金がなくなるのは頷ける。

加護持ちとは魔法彫金師によって魔法印を刻まれた装備品のことで、様々な効果がある。

また、同じ装備品でも加護のない物とは価格の桁が違う。

ちなみに前にリーラにあげた耳飾りはめちゃくちゃ安かったのだてあとで知った。


「どんなの買ったの〜?」

「はい、耐久上昇のものを…」


シャルの問いにリーラは新しく購入したであろうレイピアをテーブルの上に置く。

前のとそんなには変わっているようには見えないが、刀身には紋章が刻まれているのが明らかに違う。

耐久上昇とは装備品が壊れ難くなるというものだ。そこそこ値が張る。また、これ以上になると不壊というものになり、使用する上では絶対に壊れなくなる。しかし、こちらはさらに桁が違うらしい。


「とは、言ってもすっからかんなわけではなくて、これからのことを考えるとちょっと心許ないという感じなんです。」


なに勝手にそんな高い物買ってんだよ。

それにこいつの口ぶりからして受けた依頼とはパーティー依頼だろう。

なんで、この女の尻拭いの形で俺まで仕事をしなきゃならん。

やるなら個人依頼受けてこいよ。

………バックレるか。


「逃げるのはなしですわよ。」


読まれた…


「俺は関係ないだろ…」

「確かに勝手に依頼を受けたのは謝りますが、ゼロさんも無関係とはいえません。」

「どこが。」

「思い返せば今までの宿代や食事代などはあなたの分もなぜか(わたくし)が払ってます。」

「当然だ。」

「完全におかしいですわ。ご自分のことですから今後はご自分で支払ってください。」


財布一号が今更なことをごねだした。じゃあ、二号シャルに払わせよう。


「まあ、それは置いておきまして、今回の依頼なんですがゼロさんにとっても利がありますわ。」


利か…

とゆーか受ける依頼なんて基本的に俺にはポイントが入っているから須らく利があるといえばある。しかし、あえて言葉にしたということはそれ以外にも利があるということだ。

俺はリーラに続きを促す。


「今回の依頼はDランクのパーティー依頼で内容はDランクの魔物であるロックオーガを討伐して証明部位を5つ持ってくることですわ。」

「それのどこが…」

「ロックオーガは岩の魔人と別に呼ばれるんですが高い確率で鉄鉱石がそしてごく稀にですが火炎石を含んでいることがありますわ。言いたいこと分かりますわよね?」


つまりだ。今回の獲物は銃弾の材料を含んでいるから一石二鳥だと言いたいわけだ。

確かにそれなら利があると言えなくもない。


「仕方ない。やってやるよ。」

「やってやるではなく、やらなければならない、ですわよ。もう依頼は受けてしまっているんですから。」

「勝手にな。」

「うっ………謝ったじゃないですか。」


あれを謝ったっていうのか?

それにしても、魔物と戦うということは久々に銃を撃てるというわけだ。

最後はいつだったっけ……

ああ、そうだった。初めてギルドで依頼を受けた時にウルフっていう雑魚魔物に撃ったんだった。

とは、言っても未だに一対一で戦ってもヒヤッとすることもある。

ま、もう負けないとは思うが…


「つまり〜、お姉ちゃんも入れて初めてのお仕事ということね〜。」


シャルの言葉に確かにと思う。

ここまでくる護衛依頼から一緒だったので忘れてしまいそうだったが、シャルが俺たちとパーティーを組んだのは昨日のことだ。

よく考えたらシャルがどう戦うのかも知らない。


「そういうことですわね。Cランクの戦いをぜひ拝見したいですわ。」

「まかせて〜とは言ってもお姉ちゃん直接的な戦いはちょっと苦手だから、支援するのが主ね〜。」


そんなんでどうやってランクを上げるたんだ?

ランクを上げる一番の近道は同ランク以上の魔物を討伐することだ。まあ、そのせいでランクを上げるために無理に戦いを挑んで死ぬ輩は多い。

支援が主だというのなら前にも誰かとパーティーを組んでいたのだろうか?

まあ、必要があればそのうち聞いてみるのもいいだろう。

今のところ興味はない。


「ところでそのロックオーガとはどこにいるんだ?」

「それは王都から歩きで二日ほどのところにあるクセンタ洞窟というところですわ。」


歩きで二日。そりゃまた遠いな…

馬車を借りるのも一つの手だが、これが割とする。

たぶんほんとに歩いて行くんだろうな…


「そこなら、お姉ちゃんも知ってる〜。でも確かポイズンバットも出現しなかったかしら〜?」

「はい、ですからあらかじめ毒消しを買っておきました。」


そういってリーラは小瓶を12ほど取り出す。

その中には緑色の液体が入っていて、明らかにまずそうだ。


「とりあえず、全員に4つずつ配りますわ。」


そういって小瓶を4つ渡される。

どうでもいいが、これ買ったのリーラだよな。

金がねえんじゃなかったのか?

シャルにでも金を出させればいいのに律儀なことで…

それとも勝手に依頼を受けた罪悪感から用意したのだろうか。もしくはただ何も考えずに必要だからと買ったのかもな。どっちかというと後者の気がする。


「それじゃあ〜、いつ出発する〜?」

「すぐにでも、と言いたいところですが道中の食料などは準備してませんから、これから用意しましょう。それで、その…」


リーラが言いよどむ。

まあ、何が言いたいかは大体察しが付くがここで機先を制してやると面白くない。なぜなら、ここからに続く言葉は


(わたくし)の分をゼロさんだしてくださいませんか?」


予想とはちょっと違うな。

こうじゃない。俺が望んだのはこんなお願いみたいな言葉などではない。

仕方ねえな。


「お願いしますゼロ様。(わたくし)の分もお金を出してくださいませんか。」


リーラに向けて言ってやる。きっと俺の表情はかなり意地の悪いものになっていることだろう。その自覚がある。

俺の言葉を聞いて意図を察したのかリーラの顔は苦々しい。

ここでリーラはシャルに頼るという選択肢がある。

しかし、リーラが新入りであるシャルに頼るという選択肢を選ぶはずがない。

さあ、言え。苦渋に満ちたその顔で俺に懇願しろ。


「お姉ちゃんがリーちゃんのだそっか〜?」

「ええ、お願いしてもよろしいですか?」


シャルの空気読めない発言に天の助けとばかりに飛びつくリーラ。

まったく、これだから空気の読めない奴は……だがしかし、それを俺が読んでないとでも思うのか!


「やはり、俺には姉は存在しないというわけだな…」

「ゴメン、リーちゃん〜。やっぱりさっきのなし。」

「なっ………」


相変わらず扱いやすい奴だ。

それにしても、道を失ったリーラの顔はなかなかに面白い。


「さあ、どうする?」

「………自分で出します。」


は?


「いや、だってお前…」

「さっきも言ったように全くないわけじゃありませんもの。」


なんてことだ…

こいつ、屈するよりもさらに金をなくすことを選びやがった。

まあ、致し方ない。

違う方法でいじめるか…


「それならそれでいいさ。シャル俺の分の食料も一緒に買っておいてくれ。」

「なっ……」

「了解〜。」


ふふ、睨んでる睨んでる。

シャルがリーラの分を買うのを阻んでおいて、俺は利用する。

精神的にクるだろう?


「……性格悪すぎますわ。」


リーラがなにか呟いたがあいにくと俺の耳には届かなかった。


「じゃあお姉ちゃんはいろいろ買ってくるね〜」


シャルが席を立ちリーラの耳に何かを囁いた。

リーラの顔から驚いた様子が見て取れる。

何言ったかだいたいわかるぞ。

ポーカーフェイスの下手な奴だ。

大方、リーラの分も買っておくとか言ったんだろうな。

まあ、リーラの苦々しげな顔や悔しそうな顔も見たし結構満足してるから見逃してやろう。


「俺はもう一眠りしてくるから準備は頼んだぞ。あと、シャルはリーラが本当に自分の金で買うのか見張っておいてくれ。」


言外に一緒に買い物に行けと含ませて席を立つ。このあとどうするかは二人に任せよう。


……ほんとに寝ちまうかな。



〜SIDE シャルロット〜


「うふふ〜、まったくゼーちゃんたら意地悪ね〜」


彼の意図を察してついつい笑ってしまう。

どうやら私がリーちゃんにリーちゃんの分も余分に買ってくるって言ったこともばれているみたい。

それにしもまったく、ゼーちゃんは素直じゃないのね。


「意地悪というか、性格が悪いです。」


う〜ん、リーちゃんの言うことも否定できないことが多いかな〜。

でもゼーちゃんのそこが可愛いのよね。

……でも


「なんでリーちゃんはゼーちゃんと一緒にいるの〜?」

「え?」


う〜ん、これだと邪魔だって言っているように感じちゃうかな。


「え〜とね、性格悪い〜とか、自分勝手過ぎる〜とかいつもゼーちゃんのこと怒ってるのに一緒にいるのはなんでかな〜って。」


私の問いにリーちゃんは考え込んでいる。きっと心の中で自問自答しているんだろうな〜。


「なんででしょうね。最初はアーガイルで別れるつもりだったんですが、いつのまにかという感じですわね…それにあの人非常識ですから見張りが必要ですしね。」


いまいち要領を得ないけど多分リーちゃんはゼーちゃんのことが好きなんじゃないだろうか。

リーちゃんの言葉にラブを感じる。

でも、私も負けてないけどね。

ゼーちゃんを見たときのあの感情は忘れられない。

いわゆる一目惚れだ。

もちろん弟としても見ているけど男としても見ていることは否定のしようもない。

ちなみに近親相姦上等だ。

さらに血が繋がってないんだからもうどんと来いって感じ?

だから甘えられるとついつい甘やかしちゃう。

でもとりあえずは


「リーちゃん、お買い物行こっか〜」

「はい、そうしましょう。」


二人で一緒に街に出た。




〜SIDE ゼロ〜


陽が中天に差し掛かった頃。

俺達は再び集まった。

準備はしっかりと出来ているようだ。


「ではこれを持ってください。」


そう言って色々入った袋を渡される。

そこそこ重い。

まあ、三人分入っているみたいだし当然といえば当然か。

しかし、俺がもつのか…

女に持たせるのも何だから仕方ないとはいえ、めんどくさいな…

男の下僕が欲しいな……


「さあ、出発しましょうか。」


リーラが先頭で歩きだす。

向かうのは王都の入口である門だ。

アーガイルには東西南北の4つの町への入口があったが、王都には2つ。

とは言っても1つは船で入ってくる港の入口のため、陸路は入ってきた門1つだ。

そこから西に二日ほどが目指すクセンタ洞窟らしい。


久しぶりに銃を撃てるな。


鈍ってなきゃいいが


これはDランク討伐依頼の物語の一幕





兆候はすでにありましたが、主人公はSになってしまいました。

とゆーかヒモ?

まあ、そこそこなダメ人間です。


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