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ゼロの男の物語  作者:
12/32

王都への物語 [ブルーテ編]

予告通り新キャラ登場です


アーガイルを出立してから7日目(実際にはそのうち5日寝てた)


結果的にジオレンたちの手伝いは飽きたので次の日には何一つやっていない。

といっても売るのはプロであるジオレンたちのほうがいいだろうし、俺が買い付けをするわけにもいくまいという戦略的な事由から控えたといったほうが正しい。

リーラなどは「それでもお手伝いできることはありますわ。」とか言って何やらやっているらしいが俺には関係ない。


「花の冠できたからお兄ちゃんにプレゼントしてあげる。」


そう、何も手伝ってないから暇だという理由でジオレン夫妻の娘であるベリーの面倒を見ることになってしまったが、手伝いという名の邪魔をするくらいならまだマシといえる。


「わ〜!お兄ちゃんスッゴく似合う!」


ちなみにルアップは売り子の手伝いでいないため、俺とベリーの二人きりだ。

それにしても、花畑で幼女と戯れる俺……この光景が端から見てロリコンに見えないかが目下の心配ごとだ。


「もぉ〜お兄ちゃん!何か言ってよ!」

「…ん?ああ、悪い悪い…少し考えごとしてたんだ。」

「どんなこと?」

「ガキの相手はめんどくせえなあ〜って。」

「ふ〜ん、そうなんだ〜」


あれっ?流された…

ベリーはまたしても花で冠を作りはじめる。


「お兄ちゃん、ベリーといると退屈?」


流したと思っていたがちゃんと聞いていたらしい。

ベリーはこちらを見つめて首を傾げる。

はっきり答えてやるのが今後のためだな。


「退屈ってわけじゃない。ただ単に面倒なだけた。」

「じゃあベリーおとなしくここにいるから好きにしてきていいよ。」


それを聞いていい娘だと思いはしたがさすがにダメだろとも同時に思う。

得てしてそうやって安心して目を離したすきに何かをしでかすのが子供だ。

脳が警鐘を告げている。

ここでベリーから離れるのは正しくないと…


「そうしたいのは山々だが、外というのは驚愕と不思議に包まれているからお前から目を離すのは無理なことだ。」

「じやあベリーと遊んで!」


聞き分けのいい娘だな…

しかし、少女よ。

ホントはもう一押し欲しいという輩も存在するからあと一回は確認の意味で本当にいいの?とか聞いた方がいいぞ。

まあ、後々困るのは俺ではないから言ってやらんが

それに遊んでと言われたなら答えてやらねばなるまい。


「何をすればいい?」


面倒くさいが、相手してやろう。


「じゃあ、鬼ごっこ!」

「は〜い!」


鬼ごっこ…二人でか。

それは逃げる側と追う側がエンドレスで移り変わる地獄の遊び……

つーか今誰かいなかったか?


辺りを見回すと俺の背後に一人の女がいた。

赤みがかかったピンク色の髪を肩ほどまで伸ばした赤目のとろそうな顔の女だ。

最も特徴的なのは体の全面にある二つの大きな山。くだらないかもしれないが、脅威の胸囲と言わせて貰おう。

まあ、そんなことはどうでもいい。

俺はこいつが近づいてきた気配を感じなかった。もしかしてヤバい奴だったりすんのか?


「…お前は誰だ?」

「お姉ちゃんはお姉ちゃんです〜!」


…………何て言った?


「もう一回頼む。」

「だからぁ〜、お姉ちゃんはお姉ちゃんです〜!」


こいつは別の意味でヤバい奴だった…

いわゆる電波系なのか!?

ベリーの頭上にも?が浮かんでいる。


「もう少しかみ砕いて言ってくれ。」

「もぉ〜!お姉ちゃんはお姉ちゃんだってば〜!」

「誰の姉ちゃんだよ?」

「君の〜!」


ビシッと指を指される。

ってなに!?俺の姉だと!


「本当に俺の姉なのか……」

「そうよ〜。」


女は優しく頷く。

まさかこんなところで俺の姉に会うことになるとは人生わからないものだ。


「お姉ちゃんはお兄ちゃんのお姉さんなの?」

「お嬢ちゃん……お姉ちゃんの名前はシャルロットって言うの〜。だからシャルって呼んでね〜!」


ほぅ…俺の姉の名前はシャルロットと言うのか。


「うん、わかった!ベリーの名前はベリーって言うの。よろしくね、シャルお姉ちゃん!」


輝かんばかりの笑顔でベリーが自己紹介する。

対するシャルロットの顔はなぜか晴れない。


「えっと、ベリーちゃん?お姉ちゃんのことはシャルって呼んでね〜?シャルお姉ちゃんとか最後にお姉ちゃんって付けなくていいから〜。」

「ん〜。でもベリー、シャルお姉ちゃんって呼びたいな。」

「う〜ん…はっきり言わないとわかんないか〜。お姉ちゃんはベリーちゃんのお姉ちゃんじゃないから、お姉ちゃんって呼んで欲しくないの〜。とゆーかお姉ちゃんって呼ばれると不快〜。お姉ちゃんをお姉ちゃんって呼んでいいのはこの子だけ〜!」


シャルロットに抱きしめられた。

柔らかいものが腕に押し付けられる感覚がする。

まあ、それは置いておいて大人気ねえなこいつ。


「別にそれくらい許してやれよ。」

「だめよ!お姉ちゃんの弟は君だけ〜!他には妹も弟もいないの〜!」


そういってさらにぎゅっと抱きしめてくる。

少し変人ではあるが、そういってもらえて悪い気がしない。


「ベリー、すまないが言うとおりにしてやってくれ。」

「うん、わかった。じゃあ、シャルちゃんって呼ぶね。」

「そう、それでいいのよ〜。よろしくねベリーちゃん。ところで…」


シャルロットが俺を見つめる。


「弟君の名前は何て言うの?」


……こいつは何を言ってんだろう。

弟の名前を聞いてきやがるなんて。

…まさかとは思うが。


「お前も記憶がないのか?」


そんなことって……


「へ?なんのこと〜?」


こっちが何のことか聞きたい。


「いや、お前も記憶喪失で俺の名前がわからなくなってんだろ?」

「うん?お姉ちゃん別に記憶喪失なんかじゃないよ〜」


どういうことだ?

だったらなぜ俺の名前がわからないんだ?

さっきベリーに話してやった外での不思議ってやつに直面してしまった。


「記憶喪失でないならなぜ俺の名前がわからないんだ?」

「だって初めて会ったし…」


さらに謎が深まった。

考えろ、考えるんだ俺。

考えられる理由としては

俺が母親の腹にいるときに両親が別れてしまい、今まで会ったことがないため俺の名前を知らない。

いや、だったらなぜ俺が弟だと判断できた?

だとすればそもそも…


「俺たちに血縁関係はあるのか?」


そう、こいつが弟だというから無条件にそれを信じてしまったが、そもそも人違いの可能性がある。


「それは多分ないかな〜。だって昨日たまたま見つけたんだし〜。」

「見つけた?何をだ?」

「理想の弟!」


要約するとたまたま見た俺のことを理想の弟だと思ったということか……

なんだそれ!!

記憶を取り戻す新しい手掛かりだと思ったのにただの変人じゃねーか。

ちょっと運命の再会かもって思った気持ちはどうすんだよ!


「お前さあ…」

「お前じゃなくってお姉ちゃんって呼んで!」

「お前、ただのバカだろ?」

「あっ、だからお前じゃなくて

「うるさい、だまれ。」


相手してるのが馬鹿らしくなってきた。

シャルロットの抱擁から離れ、ベリーに近づく。


「ベリー、ここは危ないお姉さんがいるから違うところに行こう。」

「え?お姉さんだって…キャー!もうかわいーっ!!」


あれは無視しよう。


「え〜っ!ベリー、シャルちゃんと一緒に鬼ごっこする。」

「あっ、そういえばそうね〜。じゃあ最初の鬼はお姉ちゃんがなってあげる〜。じゃあ10数えるから逃げてね〜。むふふっ弟との青春の一ページ開幕ね〜。」


数を数えだすシャルロット。逃げるベリーと差し出した手をそのままに固まる俺の図式の完成だ。

昨日といい今日といいベリーには空気を読むという感覚が抜けているらしい。

いや、子供だからと許容するべきか?

いやいや、甘やかしてはダメだ。

世の中は厳しいんだ。


「弟君つ〜かまえた〜。」


…捕まった。じゃない!


「お前、どうゆうつもりだ?」

「なにが〜?」

「お前が、俺のことを理想の弟だと思った。まあ、これは百歩譲っていいとしよう。だけどあえて言ってやる。だからどうした?」

「どうしたもこうしたもせっかく出会った運命の姉弟ですもの〜。仲睦まじく生きていきましょ〜。」

「残念だが俺はここに王都へ行く途中で寄ったにすぎない。お前とはあと数日でお別れだ。」

「それなら問題なしよ〜。ちょうどお姉ちゃんもギルドの仕事で王都に行くところだったんだもの〜」

「お前もギルドの冒険者なのか?」

「そうよ〜。はいっこれ〜。」


シャルロットは懐からギルドカードを取り出し俺に見せてくる。

まあ、見せられても文字が読めないから意味はないが…

とりあえずE、Fランクではないみたいだ。


「ね?お姉ちゃんもギルドの冒険者でしょ〜。ん?お姉ちゃんもってことは弟君も冒険者なの〜?」

「ああ、このとおり。」


俺もシャルロットに倣ってギルドカードを見せる。

最近気づいたが冒険者が自己紹介するときギルドカードを見せるのは慣例として半ば義務付けられているらしい。


「ふーん、弟君のお名前はゼロって言うんだ〜。じゃあ、ゼーちゃんだね〜。」


しまったと思った時にはもう遅い。シャルロットに名前を知られてしまった。

とゆーかゼーちゃん?


「もう〜!二人ともなにしてるの〜?」


遠くでベリーが怒っている。

誰も追いかけてこず、様子を見てみたら立ち止まっている俺達を見て怒らせてしまったらしい。


「ベリーちゃんごめんね〜。さあ、ゼーちゃん。あなたが鬼よ〜。」


シャルロットが俺から離れていく。

さて、俺はどうするべきか。

馬鹿馬鹿しいと帰るのも一つの手だが、シャルロットとベリーを二人きりにすることはできない。つまりどっちにしろベリーを捕まえなきゃいけないらしい。

なら標的はベリーだ。

俺は駆け出した。




結果的に鬼ごっこはベリーが力尽きるまで続けられた。

というのも俺がわりとムキになってしまったことが理由だ。

どうして子供の遊びというのは大人が本気でやると楽しいんだろう。

それにしてもシャルロットは何物なんだ?

俺が鬼の時は全力で走っても追いつけないし、ちょっと目を離した隙に姿が見えなくなる。

結局一回もシャルロットを捕まえていない。

また、シャルロットが鬼の時はあっさりと俺を捕まえる。

そのくせベリーのことは追いかけず、ベリーが鬼になったときは手を抜いて捕まりやがる。

この関係はさながらジャンケンのようだ。……俺が勝てるのは幼女だけっていうのは若干情けないが

ともかく、ベリーは力尽きて寝てしまっているし、そろそろ陽も沈む。

帰るべきだろう。

俺は眠っているベリーをおぶる。


「じゃあな。シャルロット。」


そう言ってベリーを起こさないようにしながら立ち去る。

歩いていると後ろに気配を感じたので振り返るとそこにはシャルロットの姿があった。


「なんでいる?」

「なんでって、お姉ちゃんもゼーちゃんと同じ宿だし、それにずっと一緒だよ〜。」


同じ宿なのか…

とゆーかこいつの言動からして付き纏われるのだろうな。


さて、どうするべきか。


考えるのは面倒くさい。


それに変人のようだがあまり嫌いではないしな。


まあ、こいつをどうするかの判断はリーラに任せよう。


リーラならなんとかしてくれるはずだ。


これはそんな王都への物語の一幕



変態姉キャラのシャルロット登場です。

変態というよりはむしろブラコンです。考えてたよりまともな部分がなかったです。

まあ、彼女については後々のお話で見守って下さい。


次回はリーラ視点でこの話の続きからです。

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