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ゼロの男の物語  作者:
10/32

ある日の物語

作者もヒロインも暴走しています


〜SIDE リーラ〜



朝の陽射しに自然と目を覚ます。

今日は天気も良好、ついでに言えば(わたくし)の体の調子も良好みたいですわ。

ベッドから起き上がり備え付けの洗面台で顔を洗い、鏡で細かくチェックする。

瞳は特に注意深く。

うん、特に問題もないようですわね。

次に髪を梳かした後にそれを結い上げます。

冒険者として生きると決めたとき以降人前に出るときはずっとこの髪型にしています。


「よしっ!」


鏡で自分の姿を見ながら気合いを入れます。

これはここ最近するようになった癖です。

あの自分勝手な方と共に行動するに当たって気合いを入れるにこしたことはありません。

いえ、別に悪いことではないんですけどね。

そうして部屋から出る。

向かうのは隣の部屋。

このなかにいるであろう人物は初仕事以来、時間があれば武器の扱いの練習をしているようです。

(わたくし)もそれを見ていることがほとんどです。

意外と文句は言って来ません。

真面目なんでしょうね。

今ではFランクの魔物であれば一対一で戦って勝てるようにはなってきました。

でもはっきり言ってその戦い方は素人に毛が生えた程度。

いえ、最初のあれから考えると目覚ましい進歩ですわ。

それにしても、普段偉そうにしている方の失態は思った以上に面白いものですわ。

つい、助けることを忘れてしまいましたもの。


隣の部屋をノックします。

これはもはや毎日の日課になりつつあります。

彼が起きていない場合はそのまま一人で下に行き、食事を摂ることになっています。

でも、あの人は寝起きはいいみたいなので、そんなことは一度もありませんけれども。

程なくして扉が開かれ見せた顔に朝一番に伝えるべき言葉を告げます。


「おはようございます。」


(わたくし)の言葉にゼロさんはああとだけ返します。

まったく、一度も一回でちゃんと返してくれませんわね。


「お、は、よ、う、ございます。」

「ああん?」

「お、は、よ、う、ご、ざ、い、ま、す。」

「ああ…おはよう。」


やっと返してくれましたわ。

これが(わたくし)たちの朝の風景。



〜SIDE ゼロ〜


朝の気配を感じて起き上がる。

本日もまた天気がいいことだ。

備え付けの洗面台に行き顔を洗う。

そして簡単に寝癖を直す。

髭も剃る。うん、顔色に異常なしだ。


「問題なし。」


あの初仕事から数日、暇を見つけては型をこなしたりなどダガーによる訓練をしている。

Fランクの魔物は一対一ならば倒すことも出来るようになった。

ウルフへのリベンジも果たせた。

あれから銃の弾を求めて町中の装備屋をまわったが生憎と見つけることはできなかった。

そんなに手に入らないものなのか?

それにしても、今日はどうするか。

仕事を受けるもよし、ダガーの訓練を集中的にやるのもいいな。

などと考えていると部屋のドアがノックされる。

多分リーラだろう。

毎朝こうやって俺の部屋までくることがいつのまにか当たり前になっている。


「おはようございます。」


開けて第一声がこれだった。

いつもとなんら変わりない笑顔でリーラが立っている。俺はそれにああとだけ返してやる。


「お、は、よ、うございます。」

「ああん?」


聞こえてる!何だと言うんだ。


「お、は、よ、う、ご、ざ、い、ま、す。」


そこでやっと理解した。

こいつ挨拶を返してほしいのか。


「…ああ、おはよう。」


少し迷ったが挨拶を返して何か不都合があるわけではない。


「それでは朝食を採りに行きましょ。」


俺が挨拶を返したことに満足したのかリーラは宿にある食堂に行く。

俺達は同じ宿にずっと泊まっている。

というのも長期滞在は割引されるからだ。

宿の店主の飯が思いの外うまかったことも理由の一つだ。


食後、そのまま食堂にて今日の予定を確認する。


「本日は個人で自由にということにしませんか。」


リーラから告げられる。


「別にかまわない。」


とは言ったものの、さてどうするべきか…

なんだかんだリーラとは毎日一緒に行動してるしな。

個人で自由といきなり言われても何をするべきか困る。


「それでは先に出ますわ。」


そう言ってリーラは席を立つと宿から出ていく。

その姿を見ながらコーヒーを啜る。

専門店に比べるべくもないが、許容できる範囲のそれをゆっくり胃に流し込みながら食後のひと時を過ごす。


「さて、俺も行くか。」


席を立って宿から出る。

背後からいってらっしゃいと店主から声がかかってきたので手を挙げてそれに応えてやる。

店主は毎日全員に言ってるみたいだ。当たり前かもしれないがご苦労なことだ。


宿を出た俺が向かうのはギルドの後ろにある訓練所だ。

ここはギルド登録者が武技を高めたり、パーティーの連携を高めたりするための場所だ。

ここに向かうのはもちろんダガーの訓練のためだ。

ウルフへのリベンジを果たしたとはいえ、リーラからはまだ一本も取れていない。

銃さえ使えれば絶対に負けないとはいえ、何となく悔しい。

訓練所に入った俺は黙々と型をこなす。


「よお、兄ちゃん。俺と一戦やらねえか。」


黒い髪を逆立てた男が話し掛けてくる。

重鎧に身を包んだその姿はいかにもな戦士体型だ。

俺が一人で型をやっていると大体こういう奴らが声をかけてくる。

そうして決まってこう言うのだ。


「ただやるのも面白くねえから賭けようぜ。」


どうやら俺の動きは連中にとっていいカモに映るのだろう。

いつもならそばにいるリーラが何のかんのと理由をつけて断るのだが今日はいない。

ならば実力を試す意味で戦ってみるのも面白いかもしれん。


「いいぞ。掛け金はお互いの持ち金全部だ。」

「おっ、豪気だねぇ〜。んじゃやりましょっか!」


男はいきなり切り掛かってきた。

男の獲物はバスターソードと言われる巨大な剣。

動きは遅いが一撃の破壊力は絶大だ。

最初の一撃は余裕でかわせた。

リーラの動きに比べれば大人が全力投球した石と子供の全力疾走くらい速さの違いがある。

それに相手は大きな誤りを犯した。

俺は二千Rしか持ってねえよ!

俺は相手の攻撃後の隙に切り込んだ。




〜SIDE リーラ〜


朝食を採りながらふと考える。

(わたくし)達お互いのことを全然知りませんわね。

立場上(わたくし)のことを知られるのは困りますが、ゼロさんのことは知っておくべきではないでしょうか。

とは言っても真正面から聞いてはまた忘れたとか言われてはぐらかされてしまうのは目に見えています。

と、そこで妙案が浮かびました。

それはずばりゼロさんをおひとりで行動させてみようということです。

そしてそれを陰からこっそりと拝見させてもらう。

毎日一緒にいては見えるものも見えなくなってしまいます。

ここは一つゼロさんおひとりで行動させることで今まで見えなかったゼロという人物の人となりを見せてもらいましょう。


「本日は個人で自由にということにしませんか。」

「別にかまわない。」


(わたくし)の提案にゼロさんは特に疑問もなく頷いてくれました。

計画スタートですわ。


「それでは先に出ますわ。」


そう言って先に宿から出ます。

さて、ゼロさんはどんな姿を見せてくれるのでしょうか。今から楽しみです。



失敗しましたわ…

宿を出て物陰に隠れること1時間半。

今だゼロさんは宿から出てきません。

そういえば食後はコーヒーかお茶をゆっくり飲むのがゼロさんのスタイルだということを失念してましたわ。

いつも(わたくし)がせかすので途中で切り上げてくれましたが…

ほっとくとこんなに長いんですのね。

これからも(わたくし)といるときは食後のコーヒータイムは早めに切り上げてもらいましょうと決意を固めました。

そんなことを考えているとやっとゼロさんが宿から出てきました。

そしてどこかに向かいます。

追跡開始ですわ。


とは思いましたがゼロさんの向かった先は別に面白いこともない場所でした。


「訓練所ですか。」


今のゼロさんがここでやることなんてダガーの訓練以外有り得ません。

真面目ですのね。

面白くはありませんでしたが、感心はしてしまいます。

おひとりで黙々と教えた型を繰り返すゼロさんを隠れながら観察する(わたくし)

我ながら怪し過ぎる気がしますわ…

もう少しやるでしょうし、飲み物でも買ってきましょうか。

そう考えていたときゼロさんに声をかけていく戦士系の方が目に入りました。

よくいるんですのよね。

素人相手に賭試合を挑んでくる愚か者が…

(わたくし)がそばにいるときはすべからくお断りしていましたが、嫌な予感がしますわ…


案の定ゼロさんは試合を了承したらしく、相手が切り掛かっていきます。

ゼロさんはわりと余裕をもってかわしたようにみえましたが、(わたくし)は気が気でありませんわ。

ゼロさんたらご自分の実力わかってますの?

幸い相手は大した実力ではないようですがはっきり言って勝つ要素は薄いと言わざるをえません。

大前提として、間合いが違いすぎます。

身長ほどもある大剣と刃渡り20センチ強のダガー。

ゼロさんが相手に攻撃するには懐に入る必要があります。

現にゼロさんはかわすばかりで攻勢に出れていません。

捕まるのも時間の問題ですわ。


と、そこで相手が転倒します。

ここからはゼロさんが足を引っ掛けたのが見えました。

ゼロさんはニヤニヤした顔で相手を見下ろしながら何か言っています。

その途端相手は起き上がり先程よりも猛然と攻撃を仕掛けます。

その間もゼロさんの口は動いています。

一体何を言ってるんでしょうね。

ここからでは全然聞こえません。でもきっと相手を挑発するようなことを言ってるんでしょうね。

ゼロさんが何か言うたびに相手の顔が怒りで赤く染まっていく様子がわかります。

でもそれと比例するように攻撃は単調になっていっています。

あ、また足を引っ掛けましたわ。

怒りで足元が見えていないようですわね。

それにしても…

ゼロさんは転んだ相手を指差して笑っています。いえ、もはや大爆笑ですわ。

こっちまで笑い声がハッキリと聞こえます。

ああ、訓練所内にいた者全員の視線を集めてますわ。

相手の方も恥ずかしいでしょうに…


しかしそれだけで終わりと言うわけではありませんでした。

ゼロさんはそれから二度ほど相手の足元がお留守になったのを狙って足を引っ掛けて相手を転ばせました。

そしてその後は決まって指を差し大爆笑。

この場にいた誰もが思ったことでしょう。

性格が悪すぎると…


場がヒくような戦いが動いたのはそんなときでした。

猛攻をかわされ続け、幾度も転倒させられた男の体力はかなり消耗されたらしく、動きはだいぶ鈍っていました。

そこへ放たれたのはゼロさんのダガーの投擲。

そう、投擲です。

ゼロさんはダガーを相手に投げつけました。

持っている唯一の武器を投げるなんて一か八かの賭もいいところです。

でも、ゼロさんの投げたそれは鎧の脚部の隙間に命中しました。

ダガーが刺さり、相手の動きが止まります。

それを好機とみたのかゼロさんは相手にタックルしていきました。

体格差はありましたが、相手を倒すことができ、馬乗りになりました。

俗に言うマウントポジション。

そこから殴る、殴る、殴る。

ってちょっと!

誰か止めた方がよろしいんではありませんの?

(わたくし)が行くべきでしょうか…

あっ、やっと止められましたわ。

ゼロさんは止めた方に何か告げると戦った相手の懐を漁ってからダガーを抜き取り、立ち上がりました。

そのまま訓練所の外に出ていきました。

賭金の回収でいいんですわよね?

まあ、相手から吹っかけた戦いですから自業自得と思うことにしましょう。

今はゼロさんを追うことが優先ですわ。


ギルドを出たゼロさんはあっちこっちをブラブラしていました。

ようやく腰を落ち着けたのはお昼を少し過ぎた頃、いきつけとなっている喫茶店で軽く昼食を採り今はお決まりである食後のコーヒーを飲んでいます。

(わたくし)も気づかれないように入店し、悟られないように近くの席に座っています。

というか飽きはじめています。

訓練所以来なんの動きもなく長いであろうコーヒータイム。

もう、ゼロさんをつけるのはやめてもっと有意義に過ごしましょうか…


ガタッ


あら?ゼロさんが立ち上がりました。おかしいですわね。コーヒータイムに放た入ってからまだ20分ほどしか経っていません。

ゼロさんが会計を済ませ外に出ていきます。

怪しませないように少し時間を置いてから(わたくし)も会計を済ませて外に出ました。


そこで見たものは


女性に声をかけているゼロさんの姿。

いわゆるあれですわ。

ナンパ

デートやいかがわしいことに誘う目的で通りすがりの異性に声をかける行為。

…最低ですわ。

何か一気に冷めました。

馬鹿みたいですわね(わたくし)

なぜか胸がムカムカとしてきます。

とりあえずゼロさんは死ぬべきですわね。

そのままゼロさんに背中を向け歩きだします。


さっき軽く食べたというのになんだかお腹が空きましたわね。




〜SIDE ゼロ〜


対峙して1分、こいつあんまり強くないな。

俺は男の攻撃をかわしながらそんなことを考えていた。

攻撃は見えている見えすぎてるくらいだ。

そもそもリーラの動きだって見切ってはいる。

ただ体が反応しきれないだけだ。

しかし、この男の攻撃は体がついてくる範囲内だ。

これなら体力が続く限りはかわし続けることが可能だろう。

そしてその可能性を高めるため挑発に次ぐ挑発行為を繰り返した。

とは言ってもあまりに面白かったので相手を何度もコカした。

そのせいか相手の攻撃は単調になりはした。

しかし自分自身の攻撃の決めてには欠けている。

どうしようかと思ったとき不覚にも汗でダガーが手から離れてしまった。

丁度振りあげたときだったため結構な勢いですっぽ抜けたダガーは吸い込まれるかのように相手の脚部の隙間へ刺さった。

こんな使い方もありだな。ともかくこいつは僥倖だ。

こんなチャンス逃せない。

そう思った俺は相手にタックルする。

体格差はあったがマウントポジションをとった。

とりあえずボコボコにしよう。

恨みはないがこれで決めなきゃ勝ち目はないしな。

とりあえず殴った。

なかなかいいなこれ。


「ま、まいった…や、やめ、やめてくれ…」


何か聞こえたけど別にいいか。

ちょっとワクワクしてきた。


「おい!そろそろやめてやれ!」


後ろから肩を掴まれる。

ん?少しやり過ぎたか?

ボコボコになった男の顔を見てちょっと反省した。


「んじゃ、俺の勝ちってことで賭金は没収だ。」

「容赦ないねキミ。」


制止にきた男を無視して倒れた相手の懐を漁る。

見つけた財布袋はまるごといただき、ダガーも回収して訓練所から出た。


財布袋には七万R弱入っていた。

思わぬ臨時収入をどうするべきか。

そうだな…世話になっているリーラに何かプレゼントするのも悪くない。

そう思って町をブラブラしたのだがめぼしい物はない。

昼食を採るために寄った喫茶店で過ごしていると窓の外に一人の女が通りかかる。しかし、目に入ったのは女自身ではなく彼女が身につけている腕輪だ。

ちらりとしか見えなかったが、なにか感じられた。


急いで会計をすませ、女のもとへ向かう。


「おい、そこの女止まれ。」


俺の声に女が立ち止まり、こちらに振り向く。


「えっと…私ですか?」

「そう、お前だ。」

「ナンパならお断りしたいんですけど…」

「お前ごときをナンパするほど飢えてはいない。」

「それはそれで失礼ですよ…それで、なんの用件なんですか?」

「お前の腕輪どこで買ったんだ?」

「これですか?可愛いでしょ!?」


俺の質問に腕輪がどんなふうに可愛いかと延々と説明し始める女。

別にそんなこと聞いてないんだが…

それよりなんか背中に寒気が走った気がしたが気のせいか?


「んで、結局どこで買ったんだ?」


女の話が途中であったが割って入る。

これ以上聞いてるのも苦痛だ。


「あっ、そういえば用件はそれでしたね。これは裏通りのバーバラというお店の店長さんの手作りなんですよ。」

「その店はどこにある。」

「えっと…だから裏通りにある、お菓子の家みたいなピンク色のお店ですよ。」

「…そこはユリって言うお姉系が店長やってたりするのか?」

「知ってるじゃないですか。」


あそこの店名バーバラっていうのか…


女から離れてバーバラへと向かう。


相変わらずテンションが下がる店構えだ。

中に入るとユリの姿がみえた。


「あら、ゼロちゃんじゃない。生憎と頼まれた服はまだ直ってないのよ。ごめんなさい。」

「いや、今日は別件だ。お前が作ったというアクセサリーを見たいんだが。」

「あらあら、自分のかしら。それとも〜プ・レ・ゼ・ン・ト?」


あ、ウザい。


「あら、そんなウザそうな顔しなくてもいいじゃない。あたし謹製のアクセサリーね。こっちよ。」


ユリに店の一角へと案内される。

そこにあるものは女が身につけていた腕輪類をはじめ、指輪や首輪など多岐にわたる。

そこで目に入ったのは一組の耳飾り。

緑の鉱石の取り付けられたソレはリーラによく似合うのではないかと思った。


「これをくれ。」

「あら、目の付け所がいいわね。そのイヤリングには知り合いの魔法彫金士に頼んで護りの加護が入っているのよ。身につけるだけで防御力があがる魔法具としては最小ね。」

「いくらだ。」

「う〜ん一点ものだけどゼロちゃんになら特別に十万Rで売っちゃうわ!」

「じゃあ、五万Rだ。」

「半額っ!?いきなり半額なの!?」


そう言われても手持ちは六万R強しかない。

しかし、どうしても欲しい。


「なら、五万Rを頭金にしてローンで買ってやる。」


俺がそう言うとユリは少し考えるそぶりを見せる。


「うちは一括ニコニコ現金払いがモットーなのよね。……だからいいわ。五万Rで売ってあげる。だからこれからもご贔屓にしてね。」


ユリは色の趣味は悪いがいい奴なんだよな。

だけど進んでこの店に来たいかと問われれば真っ向から否定してやる。



ユリの店で耳飾りを購入して宿に戻ってきた。

もう陽は沈んで晩飯の時間帯だ。

俺はリーラの部屋をノックする。

無論先程購入した耳飾りを渡すためだ。

特に意味のない贈り物だ。変に躊躇っても意味はない。


「誰ですの?」


部屋内からリーラの声がする。


「俺だ。」

「……何のようですの。」


なんか声に棘がないか?


「とりあえず開けろ。」

「……分かりましたわ。」


扉が開かれると明らかな不機嫌顔のリーラがいた。




〜SIDE リーラ〜


食べても食べてもムカムカはおさまりません。

とゆーかひどくなってます。

完全に胃もたれですわ……

少し食べ過ぎましたわね。

そう思った(わたくし)は宿へと戻ってきました。


ベッドに横になって思い出すのはゼロさんのナンパの現場。

男って最低な生き物ですわ…

そんなことを思っているうちに瞼が重くなりウトウトとし始めました。

そんなときに部屋の扉がノックされました。


「誰ですの?」


返ってきたのは今一番ムカついている男の声です。


「俺だ。」


俺だ。って何様のつもりなんですの?ちゃんと名前を名乗りなさいな。


「……何のようですの。」


不機嫌を隠さずに言ってやりました。


「とりあえず開けろ。」


傲慢。この一言に尽きる存在ですわ。


「……分かりましたわ。」


会って一言言ってやりましょう。そう思って扉を開けました。


「邪魔するぞ。」


ゼロさんはいきなりずかずかと人の部屋に入ってきました。

デリカシーってものがありませんわ。

それにしても、何のようですの…

まさか、ナンパに失敗して代わりに(わたくし)をどうこうするつもりじゃ…

汚らわしい。

早く出ていって下さらないかしら。

(わたくし)の視線に耐え兼ねたのかゼロさんが口を開きます。


「これお前にやるよ。」


そういって投げて寄越したのは小さな箱。

一体何が入っているんでしょうか。

気になって開けてみます。

中に入っていたのは緑色の宝石をあしらったイヤリング。


「これは?」

「ユリの店で買った。お前に似合うと思ってな。」


確かに店長さんのお店の一角にこんな感じのものがありましたわね。

てゆーかこれはあれですの?

いわゆるご機嫌とりのプレゼントってやつですの?

まったくなにかプレゼントすれば女が喜ぶと思って…

え?

プレゼント?

ゼロさんが?

(わたくし)に?

これはどうゆうことですの?


はっ!


も、もしやゼロさんは(わたくし)に気があるのでしょうか…

こ、困りましたわ。

そんな経験ありませんからどうしたらいいのか…

とりあえず返事はしとくべきですわね。


「ゼロさん!お気持ちは嬉しいですが、まずはお互いを知りませんと。」

「んあ?何言ってんの、おま…」

「あぁっ!ダメですわ。こんな時間に結婚前の若い男女が同じ部屋にいるなんて。」

「はあっ?こんな時間って…まだ7時ぐらいだぞ?」

「いけませんわ。ゼロさん出ていって下さい。」

「えっ?おい、ちょっ、押すな。」


無理矢理ゼロさんを部屋の外に出しました。

いつのまにか好意を抱かれていたなんて青天の霹靂ですわ。

嫌な気はしませんけど。


知らず知らずのうちに胸のムカムカは収まっています


替わりにドキドキと高鳴り始めています


その日の夜はゼロさんにもらったイヤリングを眺めながら過ごしました。


これはそんなある日の物語





「…………何がどうなったんだ。」

ただただフラグを立てたかったんです!


基本リーラはヤキモチ妬きっ娘にしたいんでこんな感じになっちゃいました。


ゼロが首輪と言ってるのはネックレスだと思って下さい。

ユリの店に存在はしてますがあそこで登場したのはネックレスなんです。

ソレ系の道具は存在はしてます(出ることは多分ありません)

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