第4話:依頼達成と、少しだけ近い距離
ギルドへ戻る頃には、空はすっかり夕焼けに染まっていた。
カウンターの前に立つと、受付嬢がちらりと俺たちを見て、少し驚いた顔をする。
「あれ……もう戻られたんですか?
薬草採取と周辺魔物の討伐、でしたよね?」
「はい。問題なく終わりました」
セリスがそう答え、採取袋を差し出す。
中身を確認した受付嬢は、目を見開いた。
「量も質も、かなり良いですね……?
しかも、魔物討伐まで……」
「無理はしてません。安全に」
その一言に、なぜか受付嬢は俺を見る。
「……なるほど」
何を納得したのかは分からないが、
手際よく処理を済ませ、報酬を渡してきた。
「今回の評価、少し上げておきますね。
次から、もう一段階上の依頼も受けられますよ」
「ありがとうございます」
セリスが頭を下げると、
ミレイナも慌ててぺこりと続いた。
――追放されたばかりなのに。
ここでは、ちゃんと“結果”として扱われている。
それが、少し不思議だった。
⸻
ギルドを出たあと、セリスが足を止めた。
「……今日は、このまま解散?」
「えっ」
ミレイナが、少し残念そうな声を出す。
「い、いえ……その……
もしよければ、軽く食事でも……」
言い終わる前に、顔が赤くなる。
「……私も、そう思ってた」
セリスが、ぼそっと言った。
……断る理由は、なかった。
⸻
選んだのは、ギルド近くの小さな食堂だった。
騒がしすぎず、落ち着いた雰囲気の店。
「今日は、私が奢る」
セリスがそう言って、席に座る。
「え、でも……」
「初依頼成功祝い。
それに……」
一瞬、言葉を探すようにしてから、
「あなたが来てくれた日でもある」
その言い方が、妙に胸に響いた。
料理が運ばれてくると、
ミレイナは目を輝かせる。
「おいしそう……!
あ、カイゼルさん、これ、少し分けますね」
自然な動作で、俺の皿に料理を分けてくる。
「ありがとう」
「い、いえ……!」
その様子を見ていたセリスが、
なぜか少しだけ視線を逸らした。
「……」
「どうかした?」
「……別に」
でも、フォークを持つ手が、ほんの少しだけ強張っている。
――ああ、これが。
なんとなく、分かってしまった。
食事が進むにつれ、会話も増えていく。
「カイゼルは、前のパーティでは……」
セリスが、言いかけて止める。
「……無理に話さなくていい」
「いや。もう、いいんだ」
そう答えると、二人は静かに耳を傾けてくれた。
追放の話。
役割の話。
自分でも、意外なほど落ち着いて話せた。
「……ひどいです」
ミレイナが、きゅっと拳を握る。
「そんな扱い、間違ってます」
セリスも、低く言った。
「あなたは……
ちゃんと、必要な人だ」
真っ直ぐな言葉だった。
「ここでは、そうでありたい」
そう返すと、
二人は同時に、はっきりと頷いた。
「ここでは、もう一人じゃない」
「はい……!」
胸の奥が、じんわりと温かくなる。
追放された夜には、想像もできなかった光景だ。
店を出る頃、外はすっかり暗くなっていた。
「明日も……一緒に、依頼受けますよね?」
ミレイナが、控えめに聞いてくる。
「もちろん」
「……よかった」
その小さな笑顔に、
思わず目を逸らした。
ゆっくりと、でも確実に。
このパーティは――
俺の居場所になりつつある。




