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悪役令嬢ですが、断罪した側が先に壊れました  作者: あめとおと


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6/6

最終話 悪役令嬢は、舞台を降りた

 国外追放の馬車は、思ったよりも揺れなかった。


 窓の外に広がるのは、王都とは違う、静かな景色。

 整えられていない道。

 けれど、息が詰まらない空気。


「……やっと、終わりましたわね」


 誰に聞かせるでもなく、そう呟く。


 悪役令嬢。

 婚約者。

 嫌われ役。


 すべて、王都に置いてきた。


 ***


 追放先は、隣国との境に近い小さな街だった。


「こちらが、今後お住まいになる屋敷です」


 案内役の男性が、丁寧に頭を下げる。


 粗末ではない。

 むしろ、十分すぎるほどだ。


 ――当然だ。


 私は、何も考えずに追放されたわけではない。


 名義を変え、

 資金を分け、

 人脈を繋ぎ。


 断罪される“その後”の準備を、

 私はずっと前から終えていた。


「これで、自由ですわ」


 誰に遠慮することもなく、

 誰かの尻拭いをすることもなく。


 私は、私として生きられる。


 ***


 数か月後。


 この街の税収は安定し、

 物流は改善され、

 人々の暮らしは、少しずつ楽になっていた。


「アリアンナ様のおかげです」

「本当に、助かっています」


 そう言われるたび、私は微笑む。


 評価は、

 欲しがる場所で得られなくてもいい。


 理解してくれる人がいる場所で、

 正しく生きられれば、それで十分だ。


 ***


 ある日、王都から噂が届いた。


 王太子は政務に追われ、

 ヒロインは居場所を失い、

 かつての“物語”は、誰も語らなくなったと。


 私は、何も思わなかった。


 同情も、憎しみも、ない。


 ただ――

 もう、私の物語ではない。


 ***


 夕暮れの中、窓を開ける。


 風が、心地よく頬を撫でた。


 私はもう、舞台に立たない。


 拍手も、罵声も、必要ない。


 悪役令嬢の役目は、終わった。


 そして今、

 一人の女として、

 一人の人間として。


 私は、ここから人生を始める。


 ――静かで、確かで、

 誰にも奪われない物語を。


 完

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