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悪役令嬢ですが、断罪した側が先に壊れました  作者: あめとおと


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3/6

第3話 私は、何も知らなかった

――王太子視点――


 正直に言えば、面倒だった。


 政務も、貴族の思惑も、国の財政も。

 どれも難しくて、重たくて、正解が分からない。


 だから私は、アリアンナに任せていた。


「殿下、こちらは来月分の支出計画です」

「うん、君に任せるよ」


 それが当然だと思っていた。


 彼女は有能で、冷静で、感情に流されない。

 ――少し、冷たすぎるくらいだが。


 ***


 リュシアと出会ってから、空気が変わった。


「殿下、困っている人がいるんです」

「そうか……君は優しいね」


 彼女の言葉は、簡単で、分かりやすくて、心地いい。


 正義。

 善意。

 救済。


 それは、考えなくていい答えだった。


 気づけば私は、

 “難しいこと”をすべてアリアンナに押し付け、

 “気持ちのいい言葉”をリュシアと共有していた。


「最近、アリアンナは冷たいですね」

「……そうだね」


 その一言に、深く考えず頷いた。

 考えなかった。

 考えたくなかった。


 ***


 断罪の日が近づく。


「本当に、やるのですか?」


 重臣の問いに、私は曖昧に答えた。


「国民の支持もありますし……」

「それに、リュシアも傷ついています」


 ――それが、免罪符だと思っていた。


 アリアンナが何をしてきたのか。

 彼女がどれだけ裏で調整していたのか。


 私は、

 知らなかったのではない。


 知ろうとしなかった。


 ***


 そして、断罪の前日。


 執務室で、書類の山を前に立ち尽くす。


「……これは?」


 補佐官が、青ざめた顔で告げる。


「アリアンナ様が担当されていた業務一覧です」


 財政調整。

 貴族間の利害整理。

 支援金の穴埋め。

 感情論で動いた政策の後始末。


 ――私が、目を背けていたすべて。


「殿下……明日以降、これを誰が?」


 答えられなかった。


 胸の奥に、初めて、嫌な汗が滲む。


 ***


 翌日。


 断罪の場に、アリアンナは立っていた。


 泣きもせず、弁明もせず、

 まっすぐ前を見て。


 その姿を見たとき。


 私は、初めて理解した。


 ――彼女は、私の代わりに、

 ずっと“王太子”をやっていたのだと。


 遅すぎた。


 彼女を失ってから、

 私は、すべてを背負うことになる。


 そして知る。


 優しさは、責任を取って初めて、意味を持つのだと。


 だが。


 もう、彼女はいない。


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