89 彼女も調査対象
次にフウカが提案したのは、結婚のいきさつやそれに関係した人々。
「まさか、先輩の新しい家族を疑ってる、なんてことはないけど、一応は押さえておくべきかなって」
「それって、ジーオ先輩が適任じゃない?」
ジンの意見はもっともだ。
しかし、フウカは首を横に振った。
「そうね。でも、ジーオ先輩には、もっとふさわしい協力をお願いしようと思ってるのよ。ノーウェ先輩の古くからの交友関係を洗うこと」
「でも、それって」
と、またジン。
顔に不満がある。
「どういう意味?」
と聞いておいて、フウカはジンを励ますように微笑んだ。
「もちろん、ジーオ先輩の情報だけを頼りにするわけじゃないわ」
ジーオも調査対象者のひとり、とまでは言わなかったが、意味は十分に伝わった。
ハルニナ、ジーオ、ノーウェの入学年度は同じ。
フウカがハルニナをチラリと見た。
フウカやジンの頭にジーオが浮かんでいるのだろう。
良くも悪くも。
フウカは、ノーウェの結婚のいきさつや昔の交友関係の調査を、ジーオだけに委ねるのはダメだと考えているのだろう。
かといって、サークルとしてジーオにはとても世話になっている。
フウカの迷いもよくわかる。
ジーオは、お姉さん格として慕われている。
周囲にはばからず大声で応援するし、自分の勝ち負けを晒すことにもためらいはない。ムードメーカーだし安心感もある。
それでいて、細やかな神経の持ち主。後輩たちを気遣ってくれる。
先輩面することなく、誰かに取り入ろうとするようなこともない。
大きくて自由で温かい。
そんな言葉がぴったりな女性。
だが、確かに、調査対象でもある。
結果、決めた担当はこのようになった。
警察からの情報収集。フウカ。
大学での聞き込み。フウカを中心に、全員で取り組む。
財団での聞き込み。ミリッサ。補佐ハルニナ。
競馬場での聞き込み。ジン。
ノーウェの新しい家族への聞き込み。ラン。補佐ハルニナ。
ノーウェの交友関係の調査。メイメイ。ハルニナとジーオが補佐。
「交友関係って、どうやって?」
と、メイメイ。
「そこから考えて。ハルニナやジーオ先輩と相談しながら」
それぞれ、進捗は随時、フウカに報告、ということになった。
「それから、今週の競馬場からスペーシアが復帰するわ。一応、報告」
サークルメンバーの四年生。
数か月のブランクがあったが今週から戻ると、連絡があったという。




