表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/267

7 胸騒ぎがする

--------



 妖にとっても雨はおっくう

 身体が濡れる

 気は滅入る

 妖力は薄れる

 雨に打たれてまどろみもできやせぬ


 教室に入っておってもよいが、中には、ワレを厳しい目で見る女子おなごが何人もいる


 ミリッサという男の見張り

 このお役目の意味が、少しだがわかってきた

 ワレラと同類になるときを見逃すな、というわけだ

 そして異常な行動をせぬかどうか、見ておれというわけだ



--------



 三限、四限と、いつも通り進む。

 雨のため、裏山行きは中止。

 誰からもブーイングはない。

 唯一、ミャー・ランががっかりした顔を見せただけ。


 メイメイと目が合うと、つい一昨日、あの神社で聞かされた話が蘇ってくる。

 だが今、メイメイは何食わぬ顔でデザイン演習に取り組んでいる。

 彼女は彼女なりの取り組み方で、頭をひねりペンを動かす。ただそれだけ。

 あくまでいつも通り。

 一緒に下校する約束のあるミャー・ランも同じ。


 ただ、今日のミャー・ランとの下校。

 単に、一緒に帰ろうね、というシンプルなプチ・アトラクションではないだろう。

 きっと、とんでもない話を仕掛けてくるに違いない。

 なにしろ、いつもと趣が違う。

 黒装束。まるでくのいち。

 いつも黒っぽい服を好んで着る学生だが、今日、それは徹底されている。

 首元から足首まで、しかも靴まで黒ずくめ。

 フェアリーカラーの髪に似合っているのかどうか。

 胸騒ぎがする。


 だが、今は授業中。

 集中しよう。



 いずれも、論という名が授業名についているが、デザイン演習要素を含んでいる。

 学生たちがプチ演習に取り組んでいる机の間を歩き回り、その場でアドバイスを与えていく。

 時には、自ら学生たちの演習用紙に書き込んでいく。

 例えば、こういう形状はどうだい、こういう構成の方がよくないかい、ほら、こうやって描くとテクスチャーが、というわけだ。

 前から横から後ろから、年頃の娘さんに接近するわけだから、身体に触れないよう、いらぬ方向に目がいかぬよう、気をつかう。

 胸元を押さえる学生もいるが、概して無頓着だ。



 四限終了のチャイムが鳴った。


 デザイン演習のプリントを回収し、教室を出ていく学生たちに挨拶を返し、少しずつ後片付けを始めながら、教室に居残る学生たちを眺めた。


 演習は決められた時間内に終わること。

 これがモットーであるし、それが実社会に出た時にも役に立つ。

 しかし、あと少しだけやらせて、もう少しで完成するから、と言う学生からプリントを奪い取るわけにもいかない。

 テストであれば別だが、日々の訓練なのである。



 メイメイとランはさっさと出ていってしまい、残るは一人。

 彼女が一緒に下校を、と思っているなら、ランとバッティングする。気まずいことにならねばいいが。

 が、そこそこのところで満足したのか、ものの十分もしないうちに提出して出て行った。


 後は、一人で教室の整理整頓。

 窓の外は雨。

 しかも土砂降り。

 誰かに見られているような気がして、ブラインドも閉めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ