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54/412

54 歳の差なんて関係ないんだから

 フウカはいつものように予想紙は持たず、レーシングプログラムとパドックの馬とを見比べている。

 フェンスに頬杖をついていたジンが、フウカを振り返った。

「フウカ、アイボリーの実家、どうだった?」



 この週末、金曜土曜と、ミニ合宿だった。

 サークルの秋シーズンの始まりに先立つ懇親のための旅行。

 北陸の温泉宿に一泊二日。

 今朝早く、用があるというフウカとホテルの前で別れ、始発列車で帰京し、競馬場に直行してきたのだ。


 しかし、フウカはパドックから目を離さない。

「実家じゃない。住んだことないんだって。昨日、言ったじゃない」

 どことなくつれない返事。


「ねえ、用はなんだった?」

「興味ある?」

「ない」

「でしょ。それよりジン、パドックはもういいの? もう決めた?」


 ジンが突き出したプログラムには、◎○▲などと乱暴に書いては消し、されてあった。


「買い目は?」

「これ」

 ページの下に、大きな文字で3-5Wなどと書かれてあった。



「ね、フウカ、でなにか、発見は?」

「また? だから、興味ある?」

「ない」



 フウカは四回生。

 ひとつ下の学年のアイボリーと仲が良い。

 前もって約束してあったようで、彼女の用事に付き合ってやったらしい。

 アイボリーの祖母が住んでいた古い家に向かうと聞いていた。



「アイボリーはもうとっくに競馬場に来てるし。フウカ先輩、何してたんです? 着替えて遅くなったとか?」

 ジンはしつこい。

「先輩って呼ばないで。競馬じゃ、歳の差、関係ないんだから。私は私で、ちょっと寄り道。いい? パドックに集中させて」



 フウカが言うように、先輩後輩の関係をサークルに持ち込むことを禁じている。

 三回生と四回生のみのこんな小さな所帯。

 いかなる形でも上下関係が生まれることは好ましくない。

 しかも、競馬。誰が勝者となるか、その日の運次第。

 フラットな関係でいるに越したことはない。


 ジンもそれはよく理解している。

 フウカはサークルの部長。率い、まとめる立場だ。貫禄もある。

 つい「先輩」と呼んでしまうのも、しかたのないこと。



 と、渋い声がした。

「警察が来ている」

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