5 プロローグ 四 あそこで何をしていた
京都競馬場の事件から数か月後。
雨上がりの朝。
「ところであなた、あそこで何をしてたんです?」
刑事に何度聞かれようとも、答えることはできない。
それが己の身に極めて不利になることはわかっている。
それでも、事の経緯を説明することはできない。
なぜ白骨死体を発見するに至ったか、など言えるはずもない。
黙っていれば、刑事の頭に、犯人は犯行現場に戻ってくるというジンクスが浮かぶ。
しかし、信じてもらえないことをいくら声高に説明しても、状況は悪くなるばかり。
「話せないのです」
「なぜ、です?」
「わかりません」
などというやり取りを続ければ続けるほど、己が首を絞める。
「それでは、もう一度お聞きします。死体発見当時の状況を」
「もう何度も」
「ええ、なんども同じことをお聞かせ願うのは刑事の習性ですので」
不毛なやり取りが続く。
「あなたの話は辻褄が合いません。というより、隠されていること、抜けているところが多すぎて全貌が一向に掴めない」
「……」
「ここで何泊もするのは、気がすすまれないでしょう」
「当然だ」
「なら、すべて話されたらいかがです?」
「……」
「それにあなた、数カ月前、競馬場で起きた事故にも関係されているんでしょう。その時もまさに、あなた、現場におられた。そして死んだ人、その人も、先生、あなたの教え子」
「いい加減にしてくれ……」
そのころ、同じ警察署のロビーでは、ひと悶着が起きていた。
妖界七人衆の一人、化け猫とは私のことぞ!
刮目せい!
これが本当の私!
大きな目がますます見開かれ、体中に変化が現れた。
ググッと背が伸び、四足になり、衣服は消えて、巨大なまだら模様の虎の姿になった。
その瞳は明らかに怒り狂い、牙を剥き出し、爪を現し、背中の毛は逆立った。
窓ガラスが割れんばかりの咆哮を上げた。
取り囲んだ刑事から悲鳴が上がった。
拳銃を取り出す者もいる。受付の非常ベルを押しに走る刑事もいた。
それは一瞬の出来事だった。
主な登場人物
ミリッサ 女子大非常勤講師
ハルニナ 女子大生4年 競馬サークル部員 PH総帥
フウカ 女子大生4年 競馬サークル部長
スペーシア 女子大生4年 競馬サークル部員
ミャー・ラン 女子大生3年 競馬サークル部員
メイメイ 女子大生3年 競馬サークル部員 PH幹部
ジン 女子大生3年 競馬サークル部員
アイボリー 女子大生3年 ジンの親友 イベント会社アルバイト
ノーウェ 卒業生 競馬サークルOB 傾聴財団社員
ジーオ 卒業生 競馬サークルOB
アンジェリナ 卒業生 競馬サークルOB
ルリイア 卒業生 競馬サークルOB JRA職員
ヨウドウ 女子大本部部長 ミリッサの親友 アイボリーの父
ガリ 女子大授業準備室職員
ライトウェイ 女子大守衛
ローズロズ 競馬場清掃員
コールミー 競馬場警備員
ユーリー 芸人・ノーウェの夫
キオウミ 清掃会社課長 ノーウェの義父・ローズロズの上司
アサツリ JRA職員 ルリイアの上司
ツータック 傾聴財団社員 ノーウェの上司
主な登場妖怪
月隠の白君 日本妖怪棟梁(お館様)
オロチ、ショウジョウ、カワウソ、白龍 他




