45 サークルメンバーを預かる顧問として
私は、ノーウェ先輩が亡くなったことを悲しく思ってる。とても。
事故死であれ、その事故に誰かが関係しているにしろ。
あるいは何らかの悪意があったにしろ。
死んでしまったノーウェ先輩が帰ってくるわけでもなし、私たちがとやかく言うことはないのかもしれない。本当は。
でも。
でもね。
ケイキマスコットの中で苦しんだ挙句に死んでしまった先輩。
先輩のことを思うと、あれは事故だったんだって、いつの間にか納得して、忘れてしまっていいのかっていう気もする。
あんな悲惨なこと。
さぞ先輩は……。
あんなことになった理由。
きっとあるんじゃないか。
警察が言うことは本当?
単に、付き添いを待たずに自分ひとりで階段を降りようとして転落した?
その衝撃で、たまたま緩みかけていた一本のワイヤーが外れた?
それがよりによって首に巻きついた?
G1レースが開かれる競馬場。
たくさんの人がいたのに、たまたま誰もその場に居合わせず、誰も助けに駆けよらなかった?
たまたま?
たまたまが、重なって?
いいえ。
もっとあるわ。
そもそも、ノーウェ先輩がケイキちゃんの中に入ったのは、たまたまあの日だけ。
私、正直に言うと、このこともその時は疑問に思ったけど、もう忘れてた。
意識の中から、消えてた。
思い出すことがあったとしても、過ぎたことって……。
でも、今日、警察が再捜査を始めたことを知った。
それなら、私たち、忘れたままで知らん顔してるのは先輩に失礼だと思った。
私たちにできること、何もないかもしれない。
ウロウロして、警察の邪魔をするだけかもしれない。
でも、でも。
でも、もしもよ。
誰かのせいであんなことになったのなら、ちゃんと、そのことをはっきりさせて……。
そうして、どうするかわからないけど、少なくとも真実を……。
先輩のこと、私、詳しく知らないけど。
サークルで一緒に競馬したこともないし。
どうすればいいのか、具体的なこと、まだ、何もないけど。
そう、思ってる。
よく言った。
ここにいる者が、今のフウカの話を聞いてそれぞれに結論を出すべきこと。自分の胸によく聞いて。
俺自身は……。
自分にできることを。
もしあるなら。
大切な教え子、ノーウェのために。
もしここで、誰も手を挙げない結末になったとしても、自分ひとりでも、フウカと。
いや、ノーウェのために、だけではない。
教え子を持つ講師として、あるいはサークルメンバーを預かる顧問として、と言った方がいいかもしれない。
妙なことに首を突っ込みつつあるこの子たち。
守るのは自分の役割でないか。
そんな気持ちが湧くのを感じた。




