389 犯人のことなんですけど……、え、と、私
部屋に戻るなり、フウカがミーティングの終了を告げた。
「来週はマイルチャンピオンシップ。京都競馬場、秋のG1最終レース。わかってる?」
「おう!」
「ジン。意味、違うんじゃない? 競馬もそうだけど、ケイキちゃん事件のけりをつける日ってこと」
「わかってるって」
「最初に決めたよね。来週、みんなで調べたことを持ち寄って、話し合って、結果が出ればそれでよし。出なくても、私たちの限界と割り切って、きっぱり終了する。いい?」
「おう!」
「だから、それぞれ忙しいと思うけど、頑張って。それから、自分なりの結論を持ってきて。ぶつけ合いたいから」
では、解散。
ルリイア先輩、いつもありがとうございます。
真っ先にランが部屋を出ていった。
慌てて後を追った。
が、いないはずはないのに、もう廊下にも階段にも、エントランスホールにも淀駅に向かう道にもランの姿はなかった。
三人の男ともども。
「先生……」
フウカがすぐ後ろにいた。
「帰り際、早いですね」
「だな」
不安な顔をしている。
「どうした?」
「犯人のことなんですけど……、え、と、私」
「ん?」
「ルリイアせんぱ」
「それはないだろ」
「……ええ」
後ろを振り返ったが、誰もついてきていない。
フウカは、まだ何か言いたそうだったが、結局、それ以上は話さなかったし、なぜかとも聞いてこなかった。
問われても答えようがないし、実際、理由はない。
つい、口から出ただけのこと。
フウカは二人きりになると、途端に口数が少なくなる。いつものこと。
「来週が楽しみだな」
不謹慎だが、そう言って、来週の推理合戦でのフウカの裁き方を期待していると伝えたつもりだった。
しかしフウカは、さあ、どうかな、と小首を傾げただけで、迎えの車に乗り込んだ。
そして、疲れているのだろう、車に乗り込むと、こちらを見ることもなく、両手で目を覆った。




